メタボ対策にも有効、それがCOBITフレームワーク今日から学ぶCOBIT(1/3 ページ)

COBITはITガバナンスのための、最も上流行程の考え方である。最近よく聞かれるようになった「戦略と戦術」でいうところの「戦略」に当たる。今回は「戦略」と「戦術」の違いを明確にしたい。

» 2007年12月14日 08時00分 公開
[谷誠之,ITmedia]

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COBITフレームワークはITガバナンスのための戦略である

 COBITはITガバナンスのための、最も上流行程の考え方である。最近よく聞かれるようになった「戦略と戦術」でいうところの「戦略」に当たる

 ここで「戦略」と「戦術」の違いを筆者なりに明確にしたい。

 「戦略」とは、何らかの目的をもった一連の活動において、その活動の根本的な目標・方針などを方向付けるものである。

 戦略は基本的に固定的な、揺るがないものである(絶対に変更してはいけない、というものではないが、柔軟ではいけない)。外的要因の影響を受けることのない、内部から生み出される意志のようなものだ、と考えればいいだろう。

 一方「戦術」とは、その戦略を達成するための具体的な、細かい手段のことである。従って、戦略が明確でないと戦術を考えることはできない。戦術は外的要因に合わせ、臨機応変に考えなければならない。ただし、戦術の変更が戦略に影響を与えてはならない。

 例えば筆者は「もっとカッコ良くなりたい」という野望を抱いている。そのためにはどうすべきだろうか? 顔を変えることはできないし、身長をこれ以上伸ばすのも無理だろう。そこで「今年中に5Kgやせよう」という戦略を立てる(というか、今年の始めごろに実際に立てた)。これなら実現できそうだ。5Kgやせたら、少しはカッコ良く見えるようになるだろう。つまり「5Kgやせる」というのが、カッコ良くなるための根本的な目標・方針、というわけである。

 この5Kgやせる、という戦略は、そう簡単に変更してはならない。外的要因の影響を受けない、内側からわき出た揺るぎない意志である。そしてこの戦略を具現化する方策が戦術である。

 候補はいくらでも挙げられる。ダイエット食品、断食合宿、ジョギング、トレーニングジム、ビリーズブートキャンプ、etc…。さまざまな選択肢から、自分に最適と思われる手段を選び、実践していく。筋肉ムキムキになるのが目的ではないので、激しいスポーツやトレーニングは適当でない。また戦術を決めて実際の活動を始めたとしても、自分に合わなかったり、効果が期待できなかったりすれば、臨機応変に変更するのが望ましい。

 ここまでの話をまとめると、次のようになる。

  1. 目的:もっとカッコ良くなる
  2. 戦略:5Kgやせる
  3. 戦術:ダイエット食品、断食合宿、ジョギング、etc…

 もちろん戦術にも戦略にも、達成できたかどうかという客観的かつ具体的な指標が必要になる。指標を定めておかないと、達成したかどうか不安になる。そう考えると、前回示した「ビジネス達成目標」とそれに対する「IT達成目標」は、戦略と戦術の関係にあると考えられるだろう。

 話をCOBITに戻そう。COBITフレームワークそのものは、企業におけるITガバナンスを実現するための戦略にすぎない。言い換えれば、戦術の部分、具体的な活動の部分はほとんど記されていない。一応「Contorol Practice」という有償のドキュメントがあるのだが、ITインフラストラクチャの部分はITIL、情報セキュリティの部分はISO17799、ソフトウェア開発やプロジェクト管理などのプロセスマネジメントにはCMM(Capability Maturity Model)の方が優れている、という意見もある。

 つまり、COBITは戦略を記したものであり、具体的な手段か活動内容(戦術)が書かれたものではない。「導入したらすぐに効果が表れる」シロモノではないのである。だから、取っつきにくく感じるし、COBITがもたらす効果についても分かりにくい。しかし、戦略が立たないと戦術を立てることはできない。ITガバナンスを実現するための、基本中の基本である。

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