プライベートクラウド構築にベストマッチなサーバアーキテクチャか?――eX5の特徴に迫る究極目標はコスト削減

クラウドコンピューティングの普及によって、サーバハードウェアのビジネスも変わりつつある。日本IBMの東根作氏は、「ITサービスの提供事業者にニーズがシフトしていく可能性は高い」と話す。クラウドコンピューティング環境の効率を高めるために、従来型のサーバだけでなく、高集積化と可用性向上に着目したサーバが必要なのだという。

» 2011年02月21日 10時00分 公開
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 「サーバ統合のメリットは?」という問いに対して、具体的なイメージが湧かないという読者は少ないだろう。ここ数年の仮想化やクラウドコンピューティングというムーブメントによって、複数にわたるワークロードの集約や、迅速なシステム構築が実現し、その先にはITリソースの利用率向上および、コスト削減といった効果が期待できるとされている。

 だが日本IBM システムx事業部で事業開発部長を務める東根作成英氏は「これだけ仮想化のメリットが喧伝されていても、ユーザー企業の中でサーバ集約率が改善しているとは、必ずしも言えないようだ」と指摘する。

メモリボトルネックによりサーバ集約が進まない現状

日本IBM システムx事業部 事業開発部 東根作成英部長

 その原因は、サーバハードウェア自体にありそうだ。考えてみて欲しい。例えばプロセッサの処理速度は、シングルコアからデュアルコア、クアッドを経て現在はシックスコアへと、飛躍的に処理性能を増している。

 だがメモリ搭載量はどうだろうか?

 もちろん絶対値としては増加しているわけだが、プロセッサの性能向上に比べて、そのスピードは遅いと言わざるを得ない。加えてアプリケーションのメモリ使用量が増加しており、プロセッサ性能を使い切る前に、メモリが枯渇しかねないのが実態だ。

 「われわれの調査では、プロセッサの性能は年々向上しているものの、メモリ容量の増加が伴っていない。よって、プロセッサの性能向上とともに利用効率も上がっているとは言い難い状況だ。プロセッサの能力が使いきれないまま、メモリだけがフル活用される形となり、結果的にメモリがボトルネックになっている。これが、仮想環境におけるx86サーバの傾向だ」(東根作氏)。同氏は、「このような現状がユーザー企業を含めた業界全体に浸透しておらず、ユーザー企業のRFPはこれまでと同様ハイスペックなプロセッサをサーバに求め、メモリ容量とのアンバランスの解消にはほど遠い状況だ。ユーザーにとってより良いソリューションを提供していくため、この点について業界内でコンセンサスを作りたい」と指摘する。

ユーザー企業の非仮想化環境で、代表的なワークロードを処理する2410台のサーバをIBMが実測調査した結果(IBM資料より)。「プロセッサの利用率は、性能向上により下降傾向にある。対してメモリは、搭載絶対量は増えているが、それに追従して利用率が上がり、ボトルネックになってしまっている」(東根作氏)

 もちろん、物理コアや物理NICの数が物を言うコンピューティング環境――例えばHadoop――は、シンプルなサーバによる大量スケールアウト構成で間に合うだろう。だがサーバ統合を目的として仮想化環境を構築するのに、リソース利用率を改善する手段としてスケールアウト構成を前提とする、というのは本末転倒だ。東根作氏は「スケールアウト・オンリーの考え方では維持運用の負荷とコストもかさんでしまう。ユーザー企業は、TCOという観点から許容できないだろう」と話す。

 このような課題に対する1つの回答として、IBMが「他社にはない特徴的なアーキテクチャ」として2010年春に発表した「第5世代 Enterprise X-Architecture(以下、eX5)」が存在する。現在2U型(System x3690 X5)、4U型(System x3850 X5/x3950 X5)、そしてブレード型(BladeCenter HX5)の3タイプで展開されるeX5サーバの特徴とは、どのようなものだろうか?

高集積化の究極目標であるTCO削減をeX5が果たす

 東根作氏はeX5がユーザーにもたらす最大のメリットとして「メモリボトルネックという問題からの開放」を紹介する。そもそもメモリボトルネックの原因としては、プロセッサがその内部にメモリコントローラーを持たなければならないことが挙げられる。eX5サーバではこの問題を解消するため、「MAX5」と呼ばれる、いわゆるメモリ拡張ユニット(もちろん独自にメモリコントローラーを備える)に対応する。

 MAX5が拡張ユニットであるということから、プロセッサと(MAX5に搭載した)メモリ間の通信レイテンシを気にする向きもあるだろうが、eX5サーバとMAX5はQPI(QuickPath Interconnect)で接続され、内蔵メモリと同等のパフォーマンスが得られるという。

メモリコントローラーをプロセッサ内部に持つことによる制限を、MAX5で打破する(IBM資料より)

 ここでMAX5により、ユーザー企業が得られるメリットを考えてみよう。例えばデータベースサーバ。一般的にデータベースサーバは“メモリ食い”であることから、プロセッサの利用率が低いにもかかわらず、メモリボトルネックによって、サーバのスケールアウトを余儀なくされたユーザー企業も多いのではないか。

 だがラック型のeX5サーバの場合、1台のMAX5当たり32本のメモリスロットを拡張できる。1台の物理サーバ上で稼働できる仮想マシン(VM)が増加するため、プロセッサとメモリをそれぞれ有効に活用でき、結果としてサーバをスケールアウトする必要はなくなる。「一般的なサーバの場合、1台当たり30VM程度が目安だったのではないか。これで十分であり、VM拡張の必要性がないなら、従来型のサーバにも存在意義がある。だがeX5サーバなら、それを70から100VMを超える規模まで集約できる。これだけのVMを必要とする環境なら、eX5サーバのコストパフォーマンスが際立つだろう」と東根作氏は話す。

 当然物理サーバの数が少なければ、運用管理や機材のメンテナンスによって生じるTCOを削減できる。また特筆すべきは、ライセンスコストの削減だ。エンタープライズ分野のデータベース製品はプロセッサライセンスやコアライセンスが適用されることが多く、物理プロセッサを増やせばその分、ライセンスコストも増加する。

 しかしMAX5はプロセッサを備えない。これならライセンスコストを維持したまま、仮想マシンを拡張できる。あるいはeX5サーバとMAX5に既存のデータベースサーバを統合してしまえば、これまで余分に支払っていたライセンスコストの削減にもつながるだろう。

高集積化と可用性向上でプライベートクラウドのニーズに応える

 「eX5サーバによって享受できるメリットは、集約率向上とそれによるコスト削減だけではない」と東根作氏は話す。「多数のVMを運用するに足る、可用性を得られる」(東根作氏)

 実際、多くのVMを稼働するためにメモリの枚数が増えれば、その分、メモリエラーの可能性も高まる。もともとeX5サーバも搭載しているIntel Xeon プロセッサ 7500番台は、1つのDRAMチップが故障しても稼働し続けるだけの、優れたメモリ・エラー訂正機能(SDDC+1)を備えるが、2つのDRAMチップが障害を起こした場合には、停止してしまう。

 だがeX5サーバの場合、Memory ProteXion機能により、MAX5に搭載されたメモリ上の2つのDRAMが完全に故障してしまっても稼働し続ける。同時にエラーも検出し続けるため、管理者はその間に対処すればよい。さらに、メモリのエラー訂正の範囲を超えてしまった場合でも、インテル Xeon プロセッサ 7500番台で搭載された「マシンチェックアーキテクチャー(MCA)リカバリー」によって、OSやハイパーバイザー全体がダウンするリスクを極小化できる。「インテルとIBMのテクノロジーが相乗効果を生むことで、eX5サーバは従来のx86サーバとは比較にならない信頼性を持つ」と東根作氏は話す。

集積率が上がれば、その分ユーザー企業は障害に対するリスクを負う。それを解決するため、インテル Xeon 7500 プロセッサとのシナジーで可用性を高めた(IBM資料より。画像クリックで拡大)

 eX5サーバは他にも、複数ノードで構成した(eX5)サーバを、負荷状況によって分割したり統合したりする「FlexNode(IBM System Directorで管理できる)」や、テラバイト級のフラッシュストレージ「eXFlash(ディスクI/Oに着目した場合の集積率が劇的に改善する)」を備える。どちらもIT基盤の柔軟性向上や、大型参照系データベースの性能改善につながると考えられ、「すべての業務アプリケーションやワークロードがパブリッククラウドでまかなえるようにはならない。プライベートクラウドとパブリッククラウドをシームレスに扱えるようにしていくことが重要だ。ユーザーがプライベートクラウドをx86サーバで構築する際のベストなソリューションとして、eX5というアーキテクチャを訴求していきたい」(東根作氏)

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