先週、SuiteWorld 2012でCommerce as a Service構想をぶち上げたNetSuiteのネルソンCEOに話を聞いた。同氏は1990年代半ば、OracleでNetwork Computerのマーケティングを統括していた。「NCのビジョンは素晴らしかった。ただ、15年早かっただけだ」と振り返る。
「フィリピンのフラワーショップであろうが、神戸牛の生産者であろうが、規模の大小を問わず、いずれすべての企業がクラウドを導入するようになる。ビジネスの成功はクラウドの活用がカギとなるからだ」── そう話すのはクラウドサービスの雄、NetSuiteのザック・ネルソンCEOだ。
カリフォルニア州サンフランシスコ郊外、サンマテオに本社を置く同社のクラウドサービスは、情報システムの専任者がいない中小企業でも手軽に導入できるのはもちろんだが、ERP/財務会計、販売管理、在庫管理、CRM、e-コマースなど、フロントからバックオフィスまで、業務全体をひとつのスイートでカバーできるのが大きな特徴だ。顧客レコードにひも付けてすべての情報を一元管理し、営業、サポート、財務会計、配送、請求書など、すべての業務を継ぎ目なく進めることができるほか、各種のKPI(主要業績評価指標)によって業務や経営の「見える化」も実現している。
同社は先週(5月15日)、サンフランシスコのダウンタウンで3000人規模の年次カンファレンス「SuiteWorld 2012」を開催、顧客を1万2000社に拡大した勢いにさらに弾みをつけるべく、新たな「Commerce as a Service」(CaaS)構想をぶち上げた。
NetSuiteでは初期のアーキテクチャーでもe-コマースをサポートしていたが、顧客企業のビジネスが拡大したり、比較的規模の大きな企業でも採用が進むに伴い、単に情報をWebサイトで閲覧できるようにするだけでなく、より優れた顧客体験を提供すべくWebサイトを細かくコントロールできる機能や、より大きな製品カタログからデータを引き出して表示する機能への要望が同社に寄せられたという。
一方、業界でも数年前から大きな変化があった。多種多様なデバイスの登場だ。
「さまざまな顧客接点が生まれ、顧客とのやり取りも多様化してきた。企業は、Webサイトだけではなく、当然、携帯電話やスマートフォンもサポートしなければならない。さらにiPadのようなタブレットはブランド力の強化に役立つだろうし、Facebookを活用すれば販売の機会も広がる。われわれはフロントエンドのアーキテクチャーを見直し、将来にわたって多種多様化するだろうタッチポイントに企業が対応できるようにした」とネルソンCEO。
既存の典型的なe-コマースソリューションは、フロントエンドが柔軟性に優れたものか、そうでなければバックエンドの堅牢性に特徴があるものかのどちらで、いずれにしろWebフロントエンドと、販売管理、顧客管理、在庫管理、配送、サポートなどの連携に手間取ることになる、とネルソン氏はみている。それに対して、CaaS構想の下、同社が今回発表した「SuiteCommerce」は、NetSuiteのプラットフォームの上にフィルタで商品を絞り込む機能や、柔軟なカート機能・レジ機能などを拡張したもので、フロントエンドとバックエンドの垣根を取り払うソリューションだという。
NetSuiteの主たる顧客ベースは、同社が「フォーチュン500万の企業」と呼ぶ新興企業だが、本社のオンプレミス型ERPと海外拠点のNetSuiteを連携させる2層アプローチを提案することによって次第に大企業にも採用が広がりつつある。
「SuiteCommerceによって、さらに大企業の市場に切り込んでいける」とネルソン氏は期待する。
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