創業百有余年を数えるという倉田産業株式会社(以下、倉田産業)は、兵庫県尼崎市に拠点を置き、給食事業を手掛ける老舗企業だ。一口に給食事業といっても、そのビジネスは多岐にわたる。官公庁や病院、民間企業の食堂を運営したりするだけでなく、山陰地方では外販弁当を製造する自社工場「くらた亭」も展開している。高齢者世帯向けの宅配弁当の委託製造も始めたという。弁当だけで日産6000食を越え、給食を含めると日産1万食を提供する同社は、地域の給食を支える事業者と言えよう。
倉田産業のビジネスは、関西地方にとどまらない。地元兵庫県に加え大阪府、鳥取県、島根県、岐阜県、そして群馬県にまで事業エリアを広げており、6府県に対して9カ所の営業所を設置、合計21カ所の食堂を委託運営している。
しかし解決すべき課題もある。広い地域で事業を展開している以上、リアルタイムに情報を共有することが、必然的に難しくなってしまうのだ。
同社に求められているのは顧客と最前線で向き合う現場力だという。倉田産業にとって、現場力の主要なリソースは「メニュー組み」であるが、それは顧客の食堂の規模、運営条件、地域性などにより千差万別である。顧客の多様なニーズにどれだけきめ細やかに対応するかが、給食会社の競争力だという。倉田産業では受託先の食堂の「メニュー組み」については顧客ごとに対応しているが、内容の充実と効率化という観点から、基本的な部分は共有化することでクオリティーコントロールをしている。
「1人が献立を作成すると、どうしても偏りが出てしまいますし、栄養士によって得意なジャンルも異なります。バランスの良い食事を提供するには、栄養士同士の意見交換が必要です」と同社枚方営業所の管理栄養士、植野香苗さんは話す。
それが「月間メニュー」であり、各営業所の管理栄養士および栄養士(合計8人)がLyncでディスカッションを行い確定する。次にその「月間メニュー」を現場ごとに、本部スタッフと各現場の栄養士がLyncでディスカッションし、その現場に最適な「メニュー組み」にアレンジ、調整する。次に本部スタッフと各営業所の栄養士が、再度Lyncでディスカッションを行い、「週間メニュー」を作成する。そして、それをもとに実行書というべき、盛り付けや彩りを含めた詳細を記載した「料理カード(レシピ)」を専用のアプリケーションによって作成し、調理スタッフに指示するという。
このようにして各現場ごとに最適な「メニュー組み」を実施する。そして全ての顧客に満足していただくためには、このような複雑な工程を必要とする。その複雑な工程のスムースな進行の橋渡しとなっているのがLyncによるビデオ会議である。
「メニュー組み」を確定するための意見交換は、毎月2回定期的に実施していた。方法としてはFAXなどで送られてくる献立案を見ながら電話で意見を伝えていたというが「電話だと“1対1”の会話しかできないため、他の栄養士の意見を伝えることが大変でした」(植野さん)という。また比較的近い営業所同士の場合はどちらかの事務所に訪問し打ち合わせをすることもあるが「栄養士によって勤務シフトが違うため時間の調整が難しく、そもそも移動時間がもったいないと感じていました」(本部スタッフの管理栄養士、北畠由恵さん)という。
栄養士による「メニュー組み」は、倉田産業の事業にとって根幹となる業務である。この栄養士同士のコミュニケーションをより効果的に、同時に効率化するにはどうすればよいか? 検討していた下山誠司社長が出会ったのは「Microsoft Office 365」であった。
きっかけはたまたま参加したセミナーだった。倉田産業が抱える課題を聞いた、セミナー出展社のピコシステムは、下山社長に対しチャット、オンライン会議、在席確認ができる「Lync Online」を勧めたという。「丁寧な説明でLyncの機能を良く理解できました。そしてLyncを使えば、社員間の意思疎通が活発になり現場力が向上すると確信しました」と下山社長は振り返る。
Lyncを導入した2013年の2月以降、「メニュー組み」確定のための定例会議はオンラインで行うようになった。FAXなどで共有していたメニュー案をLyncで共有しながら複数人で会話できるため「意思の疎通がとてもスムーズになりました」(本部スタッフの栄養士、本持幸子さん)という。
本持さんによると、メニューで指摘をしたい場所に対し各自の名前が付いた“レーザーポインター”で指示できる機能も便利に感じているという。また植野さんはLyncによるコミュニケーションについて「料理カードの内容について議論する際には実際の写真を見ながら会話できるため、誤解や言い直しが減りました」と評価する。
同社の栄養士がLyncを利用し始めてまだ2カ月ほどだが、皆一様に「オンライン会議ということで最初は緊張したけれど、使ってみたらすぐに慣れた」と話す。栄養士という職業のため、特にPCの知識が豊富なわけではないが「操作に困ったこともない」という。
倉田産業でのLyncの活用はまだ始まったばかりだが、早くも次の展開が視野に入っているようだ。
管理栄養士の北畠さんは「例えば食堂を利用しているお客様から“小さい子供用のメニューはどんなものがいい?”といった質問を頂くことがあります。離れた営業所にいる幼児向けの栄養管理が得意な栄養士に、その場ですぐにLyncのチャットで聞いて回答してあげられれば喜ばれるでしょうね」とアイデアを出す。また「Lyncで栄養相談を受け付けてもいいかもしれない」(北畠さん)と考えているという。
中国・山陰地方の取締役統括部長を務める石倉直志氏は、Lyncによるコラボレーションを経営に生かすことも考えているようだ。現在は経営会議のため、月に1度尼崎本社に幹部が集合しているというが、「経営幹部同士がLyncでコミュニケーションするようになれば、オンラインの経営会議を開催したり、普段から社長と意思疎通したりできるようになるでしょう。ビジネスの意思決定が早まるはずです」と期待を寄せている。
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