「反力アームのエッジをとってほしいという客先要望がありました。珍しいケースなので写真をアップします」「先々週からイコライザー集中PRをやってみました。いくつか気づきがありましたのでフィードバックします」――。
社員同士がWeb上で知識や情報を共有し合い、有用な投稿をした人を評価する――そんな“企業内ソーシャル”というコンセプトが注目されるようになって久しいが、実際に活用できている企業はまだそう多くない。その成功企業の1つが、愛知県大府市に本社を構えるトルクシステム株式会社だ。
主に重工業向けボルト締め付け工具の販売・レンタルおよびサポートを手がける同社は、全国7カ所に営業拠点を構えている。そこで、全国に散らばる社員同士の情報共有の場としてマイクロソフトのクラウドサービス「Office 365」を活用。本社から各営業所への情報発信のほか、各地の営業社員同士のナレッジ共有、社員の評価などに役立てているという。
同社の全社員28人が集まる機会は年2回のミーティングだけ。クラウドサービスの導入で「まるでネット上に本社ができたようだ」と北原真一 代表取締役は話す。北原氏と同社の広報 兼 販促ディレクターでSharePointサイトの構造・運用方法を開発した五十川稔晃氏、導入を支援した株式会社アイ・エス・システムズの藤本洋介氏(企画広報部責任者)に、導入の背景と成果を聞いた。
トルクシステムは、主に全国の発電所や製鉄所、石油プラントといった重工業者向けに大口径ボルト締め付け工具を提供している。「顧客の数が限られているため、1社当たりにどれだけリピートしてもらえるかが重要。そのため、工具をただ提供するだけでなく、営業社員が現場まで足を運んでデモンストレーションを行うなど、長期的なお付き合いを目指して手厚いサポートを提供している」と北原氏は話す。
同社は顧客の所在地に合わせ、愛知の本社をはじめ、北海道、関東、関西、岡山、中四国、九州に営業拠点を設置。“年中無休”体制でサポートを提供している。
2011年にはiPadを全社導入し、顧客先でのプレゼンテーションや外出先でのメールチェック、スケジュール管理などを効率化した。しかし、そこで新たな課題も浮かび上がったという。
「iPadではMicrosoft Excelで作成した資料の閲覧、編集がしにくいため、何でもこれ1台というわけにはいかなかった。また、資料の共有にはオンラインストレージサービスを使っていたが、オフライン環境では利用できないなどの問題もあった」(北原氏)。オフライン環境でも資料を閲覧し、これまで以上に現場に寄り添ったサポートを提供したい――そんな目的で選んだのがOffice 365だったという。
同社は2013年3月にOffice 365の導入をスタート。導入パートナーには、同社の基幹システム開発を長年手がけてきたアイ・エス・システムズを選んだという。トルクシステムはまず本社のPC数台で試験運用を行い、今では全国の社員がPC/iPad経由でOffice 365を利用している。
導入の成果はすでに表れている。新しいOfficeで採用された“クイック実行”と呼ばれる導入テクノロジにより、今まで管理が難しかった全国の各営業拠点のPCに対し、最新のOfficeアプリケーションをクラウドからすばやく展開。また導入後のバージョンアップとパッチ適用も自動化で行われるため、PC管理の負担を下げることができた。
入荷情報や在庫情報などの資料共有には、Office 365のドキュメント管理/グループウェア機能である「SharePoint Online」を活用。最新の資料データをオフィスで自動同期しておくことで、顧客先などのオフライン環境でも資料を閲覧できるようになったという。
また、同社のOffice 365の利用方法で特徴的なのは、SharePoint Onlineの「ニュースフィード」機能を用いた社員同士のコミュニケーションだ。
「全社員が集まる機会が年2回のミーティングしかないため、これまでは社員全員との一体感をどのように醸成すればいいか、試行錯誤してきた」と北原氏は振り返る。そこで同社は、Office 365上に用途別で4つのニュースフィード(※)をメインコンテンツとしたサイトを開設。社員間での情報共有やコミュニケーション活性化に役立てている。
※Office 365の利用メンバーがテキストや画像を投稿したり、それに対してコメントや評価(いいね!)などを付けられる機能
例えば、本社社員だけが書き込み権限を持つニュースフィードサイト「Head Office」では、工具の入荷情報、在庫情報のほか、売り上げ進ちょくや予定表、北原氏が発信する「業界ニュース」などさまざまな情報を各営業所に発信。「全社員が毎日欠かさずこのサイトをチェックする、能動的なルール作りを推進している」(五十川氏)という。同様に、「Demo Machine」のサイトではデモンストレーション用工具の入荷状況などをリアルタイムで全社共有している。
一方、各営業所の社員が仕事上で得られた知見を共有する場が「Feed Back」のサイトだ。「知られていないボルトテンショナー油漏れの原因について」「指挟まれ防止−安全対策」など、さまざまな情報が現場写真とともに投稿されている。こうした投稿にはコメントや「いいね!」がいくつも付き、社員同士の交流も盛んだ。
「各営業所はそれぞれ遠く離れているが、扱う商品は同じなので、ここに投稿される写真や動画がとても貴重な情報になる。また、仕事上でのちょっとした工夫なども共有されており、まさに“ナレッジベース”という感じ」と北原氏。『Feed Back』で集まった各社員の知見は五十川氏が編集し、全社的に活用できる事例集を作成しているという。
また、「Feed Back」上での投稿は、その有用さに応じて1〜7個の「星」で評価される。多くの星を獲得した社員は年に1回社内表彰し、社員のモチベーションアップにつながっているという。
「社員表彰はOffice 365の導入前から行っていたが、ニュースフィードがここまで使われるのは、社員全員が、お客様に最適な方法をご提案できるよう、どんな小さな情報でも参考にしたいのだと思う。そのため、“もらってばかりではなく自分も情報を提供しよう”といういいサイクルができている。ここでの投稿が社員間と会社からの評価にもつながるし、普段顔を合わせない人とコミュニケーションもできる。その結果、会社の一体感の醸成だけでなく、顧客のニーズにマッチしたご提案、さらに社員の業務知識を広げることができた」(北原氏)
「もっと自由にコミュニケーションしたい」という社員のニーズに応えるため、「イコイノバ」という雑談用サイトも新たに開設。「ここは完全なフリースペース。どうでもいいことから大事なことまで、誰もが思い思いのことを書き込んでおり、社内コミュニケーションの活性化に役立っています」と五十川氏は笑う。
同社は今後、Office 365のさらなる活用を進めていく方針だ。具体的には、Microsoft Accessを組み込んだアプリの活用による在庫管理の充実や、Office 365とiPadのさらなる連携――といったことを計画しているという。
「営業担当者にOffice 365を継続的に使ってもらうには、具体的で分かりやすい利用メリットを利用前に提示することが重要。利用価値に納得すれば、自然と利用は進むのだ」と北原氏。同社は今後も社員のニーズと向き合いながら、着実にクラウドサービスの活用を進めていく考えだ。
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