“Googleが認めたPOWER8”でビッグデータをけん引最強プロセッサーでオープン化を推進

POWERプロセッサーが進化を続けている。最新のPOWER8ではビッグデータ処理機能を高めたほか、Linux向けPower Systemsや、Googleも巻き込んだOpenPOWERの本気のオープン化など、多方面に向けて拡大を続けている。POWERはどこに進むのか。担当者へ詳しく聞いた。

» 2014年06月30日 10時00分 公開
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 ITのテクノロジートレンドは技術開発によって、また市場の動向によって時に大きく変化を遂げる。メインフレームに代表される集中型処理からネットワークによる水平分散型の処理へと変遷してきたトレンドは、IAサーバーによるスケールアウトモデルで1つの頂点に達し、最近ではコンピュータの数が増えすぎることが問題視される場面も増えてきた。

 特にビッグデータ処理を始めとする最近の新しいアプリケーションでは、個々の処理能力を上げて台数を減らす方が設置スペースや総消費電力量の削減に繋がるということで、ITのアーキテクチャがまた新しい段階に変化しつつある。こうした流れをリードする位置にいるのが、長年に渡って進化を続けてきたIBMのPOWERプロセッサーだ。

“地上最強プロセッサー”POWER8の登場

伊東氏写真 POWER8を紹介する日本アイ・ビー・エム株式会社 テクニカル・セールス Power Systems テクニカル・セールス システムズ&テクノロジー・エバンジェリスト シニアITスペシャリスト 伊東成倫氏

 POWERプロセッサーは、IBMが自社で設計/製造を行なうRISCプロセッサーだ。かつてはUNIXワークステーション/サーバーのプロセッサーとして、さまざまなベンダーがRISCプロセッサーを開発/販売したが、当時有力な競合と見なされたプロセッサーが次々と勢いを失っていく中で、一貫して着実な性能向上を続けており、業界最高レベルの性能を維持し続けている。

 最新世代であるPOWER8は、ビッグデータ処理の重要性を踏まえ、そこに最適化した設計を採り入れた点が大きな特徴となっている。これには、データ量そのものの爆発的な増加に加え、データから知見を得るための分析処理も高度化/複雑化しており、結果としてビッグデータ処理に求められる処理能力が等比級数的に増加し続けているという現実がある。

 POWER8プロセッサーおよびPOWER8搭載システムでは、プロセッサー単体での処理性能の向上はもちろん、I/Oバンド幅の拡大や並列処理性能のさらなる向上、より大規模なメモリの活用など、ビッグデータ処理を想定した設計が行なわれている。プロセッサーからシステムまでを一貫して自社で設計できるITベンダーという立場を堅持し続けているIBMならではの優位がこの点であり、現時点で技術的に達成可能な性能を無駄なく引き出し、用途に対して最適化されたシステムを構成できる業界でも唯一の存在となっている。

Linux向けPower Systemsの拡充

 POWERプロセッサーはIAプロセッサーとは異なるアーキテクチャを採るため、IAサーバー用のソフトウェアをそのまま実行することは出来ないが、新しい「Power Systems」にはこの障壁を軽減するための施策が盛り込まれた。

 「スケールアウト型クラス」と位置付けられる1ソケット/2ソケットの製品で新たに準備された「Linux専用モデル」もその1つだ。Power Systemsでは、IBM製UNIXであるAIXやIBM i(かつてのAS/400の系統)、そしてPOWERプロセッサー用のLinuxがOSとして利用可能だが、Linux専用モデルではLinuxのみを選択可能とした上で価格を下げ、導入しやすくしている。

 同じLinuxというOSであれば利用者の導入障壁はぐっと下がるし、価格が引き下げられていることでコストパフォーマンスで比較しても用途によってはコモディティ化したIAサーバーより有利になる。POWER8はプロセッサー当たり12コアを集積し、かつコア辺りの同時実行スレッド数は8にまで高められているため、プロセッサー当たりの同時実行スレッド数は96スレッドにも達する。この処理能力を支えるメモリサブシステムも強化されており、メモリ搭載量はプロセッサー当たり512GB、メモリバンド幅は現時点で192GB/s、将来的には230GB/sまでの拡大が予定されている。IBMによれば、コア辺りのスレッド数/メモリ帯域幅はともにx86の4倍だと言い、プロセッサー当たりの処理性能にも大差が付いていることは容易に想像できる。

 実際のアプリケーションによる処理性能の比較では、キー・バリュー・ストア(KVS)によるNoSQL分散データベースの処理で最新のx86サーバー24台で実行している処理をPower Systemsでは1台で賄うことができ、設置スペースは24分の1、総消費電力量は18kWから1.5kWへと12分の1に減少するという。スケールアウト型の分散システムではサーバー台数が増加する一方だったわけだが、その結果データセンターが足りなくなったり、電力供給や排熱に問題を抱えたりといったマイナス面が出てきた。Power Systemsならこうした問題を解決し、省スペース/省電力で高度な処理を実行できる可能性が拡がる。

オープン化に本気で突き進むOpenPOWER

 IBMはオープンソース/オープンコミュニティへの貢献にも力を入れており、1990年代のApacheとの開発協定やその後のLinuxやJavaに対する貢献などはよく知られている。

新井氏写真 OpenPOWERを紹介する日本アイ・ビー・エム株式会社 システム製品事業 ATC OSS&CloudSupportCenter Systems & Technology Evangelist 新井真一郎氏

 また、最近では「OpenStack」や「OpenDaylight」への積極的なコミットメントも行なっている。こうしたオープンコミュニティへの貢献はソフトウェアに限定されず、POWERプロセッサーも対象となった。具体的には「OpenPOWER Foundation」を結成し、POWERの仕様公開や知財の寄贈を行ない、オープンなエコシステムの構築に乗り出している。Googleが新サーバー用マザーボードにPOWER8を採用するというニュースが注目を集めたが、GoogleもOpenPOWERのメンバー企業であり、POWERのエコシステムの拡大を象徴するニュースとなった。

 今回、OpenPOWERに基づく取り組みの1つとして実装されたのが「CAPI(Coherent Accelerator Processor Interface)」だ。

 これは、POWER8に初めて実装されたプロセッサー内部インターフェースで、外部のコプロセッサーやハードウェアアクセラレータをPOWER8と直結することで、低レイテンシで高効率な機能拡張手段を提供できる。優れたベンダーが開発する特定用途向けのアクセラレータをPOWER8と直結することで、汎用プロセッサーでは実現不可能なレベルの高速処理を実現するなど、外部のIPを巧みに取り入れながらエコシステムの拡大を目指す姿勢を象徴するような取り組みだ。POWER8ではPCIe 3.0をネイティブサポートしており、プロセッサー外部のI/Oブリッジなしで直接結合するアーキテクチャに変更されているが、CAPIはこの仕組みをベースとしており、CAPI対応アクセラレータはPCIeカードの形で実装され、Power Systemsに搭載されることになる。

 発表以降、OpenPOWER参加企業数は増加し続けており、さまざまな活用例/実証例が揃いつつある。エコシステムが拡大することによってユーザーにも大きなメリットが生まれることが期待できる。

 さらに、“POWERアーキテクチャになじみがない”という理由で導入に不安を感じるユーザーのための支援策も手厚く用意されている。まず、クラウド環境上にPower Systemsを準備し、主にISV向けに無償で試用できるプログラムなどが展開されているほか、東京・晴海には「IBM Power Systems Linuxセンター」が開設されており、開発・検証環境の提供、開発者向け技術セミナーの開催、アプリケーションの移行相談など、各種サービスを受けることができる。

 将来的なシステム規模の予測が難しく、必要な処理能力の増減が激しいといった用途に最適なシステムアーキテクチャとしてスケールアウト型システムが採用されるようになってずいぶん経つが、ビッグデータ時代を迎えた現在、その限界も明らかになりつつある。

 特に、IAサーバーによるスケールアウト型システムでは、個々のサーバーの処理能力の限界からサーバー台数が多くなりすぎ、これがスペースや電力消費、発熱の問題に繋がる例が目立つ。しかし、Power Systemsであれば運用管理やアプリケーション開発などはOSにLinuxを採用することで多くのノウハウを移行でき、かつプロセッサー単体の性能の高さを活かしてサーバー台数を抑制することでスペースや電力の問題を解消できる。

 ビッグデータ処理に対する取り組みはまだ始まったばかりという段階であり、今後もより一層の処理能力が必要になってくることは容易に想像できる。IAサーバーによるスケールアウト型システムで対応し続けることは相当に困難であることが予想されることもあり、新たなアーキテクチャとしてPOWER8によるサーバー統合/効率化、さらにはビッグデータの経営資源としての活用を検討すべきタイミングが到来したと言って良いのではないだろうか。

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2014年7月29日