今や組織内の情報共有に欠かせない存在となっているグループウェア。この市場に今、変化の波が押し寄せている。クラウド化、“攻め”のニーズ、コスト削減、めまぐるしく移り変わるトレンド――こうした世の中の変化がグループウェア市場にどんな変化をもたらしているのかを、ノークリサーチの岩上氏に聞いた。
今や組織内の情報共有に欠かせない存在となっているグループウェア。社内スタッフの日々の活動に深く根ざしていることから、一度導入したら、乗り換えるのが難しいといわれてきたこのツールだが、そんな状況が今、変わり始めているのをご存じだろうか。
その要因はさまざまだ。クラウド化の進展に伴うワークスタイルの変化、厳しい競争の中で勝ち抜くための“攻め”のニーズの高まり、めまぐるしく移り変わる新たなトレンドへの対応、社内のムダをそぎ落とすための情報の可視化――。こうした世の中の変化に対応するための機能が、スタッフの活動を支えるグループウェアにも求められるようになってきたのだ。
こうしたトレンドは、2015年のグループウェア市場にどんな変化をもたらしているのか――。IT市場を専門としたリサーチやコンサルティングを提供するノークリサーチの最新の調査結果から、グループウェア活用の現状と、今後の製品選びのポイントを考えてみよう。
ノークリサーチのシニアアナリストである岩上由高氏は、2015年のグループウェア市場調査の結果について「上位製品の市場シェア(導入社数シェア)には大きな変化は見られなかったものの、2015年にはクラウド形態の製品が伸びるなど、若干の変化の兆しが見え始めている」と話す。
「過去5年以上にわたって、サイボウズの『サイボウズOffice』、日本アイ・ビー・エム(日本IBM)の『IBM Notes/Domino』、日本マイクロソフトの『Microsoft Exchange Server』のトップ3は変わっていません。グループウェアは社員の多くが業務の一環として毎日利用するものであるが故に、長く慣れ親しんだ製品を入れ替えることは、実際には非常に難しいのです」(岩上氏)
しかし、2015年の調査では、導入形態に由来する変化の兆しが見えたという。「ASP/クラウドサービス」として提供されている製品の伸長だ。2014年の調査と比較すると、日本マイクロソフトの「Office 365/Exchange Online」が6.5%から9.2%へ、グーグルの「Google Apps」が6.5%から6.8%へと、それぞれシェアを伸ばしている。この要因として岩上氏は、メールに対するコスト意識の変化があるのではないかと分析している。
「中堅、中小規模企業では、プロバイダーがWebページ作成サービスなどとセットで提供していたインターネットメールを、長らくそのまま利用していたケースが多いと考えられます。しかし近年では、メールシステムをより安価に利用できるクラウドサービスが増えてきたことで、従来のメールサービスをコスト面で見直す動きが出てきているのではないでしょうか」(岩上氏)
Office 365やGoogle Appsといったクラウドサービスでは「スケジューラー」や「ファイル共有」といったグループウェアで利用頻度の高い機能を、メールと合わせて提供している。メールボックスも、一般的な使い方をしているのであれば十分以上の容量が利用できるので、メールの数や添付ファイル容量が増え続けてコスト高に陥っている企業にはうってつけだ。そこに気付いた企業から、メール機能を含むクラウド型グループウェアへの移行が始まっているのではないかと岩上氏は見ている。
しかし、単に「コストを軽減したい」ということであれば、移行に伴う社員教育などの「見えないコスト」の影響を考慮して既存のものを使い続ける選択肢もあり得る。あえて、新たなグループウェアを導入する場合には「グループウェアならでは」のメリットが必要になるはずだ。そのヒントが、「ユーザーが評価するグループウェアの機能」に関する調査結果からかいま見える。
ノークリサーチの調査で、ユーザーが評価する(実際に使っている)グループウェア機能のトップ3に挙がっているのが「ワークフロー」「ファイル共有」「メール関連」だ。
「社内外と円滑なコミュニケーションをするために役立つ機能を備え、そこから得られた情報や知見を業務に役立てられる基盤であることが、今、グループウェアに求められているのだと思います」(岩上氏)
社内での申請や承認といった業務を電子化するワークフローは、以前からニーズの高い機能であり、標準機能として提供しているグループウェアも多い。しかし、それらが「実際の業務に使えるかどうか」は、十分な検討が必要だという。
「複雑な承認や申請の経路に対応できるかどうか、処理のロジックを実際の業務に合わせて設定できるかどうか――といった点がポイントになります。グループウェアに付属するワークフローの機能ではニーズに応えられず、専用のアプリケーションを導入することになるケースもあります」(岩上氏)
“グループウェア内の機能でカバーしようと思った業務フローが使いづらい”ということになれば、グループウェアそのものの利用意欲をそぐことにもなりかねない。これはワークフローに限ったことではなく、ファイル共有機能の使い勝手やストレージ容量の制限などにもあてはまるだろう。
新たなグループウェアを検討する際には、機能の多さやコストだけに目を奪われず、それぞれの機能が実際の業務ニーズに応えられるものかを事前に確認しておくことが重要だ。それが「せっかく入れ替えたグループウェアが使われない」という悲劇を防ぐポイントになるだろう。
トレンドがめまぐるしく移り変わり、意志決定のスピードが企業の生き残りを左右するといわれる今、企業はグループウェアにどんな機能を求めているのか。調査からは、ワークフローやファイル共有、メール関連といった機能に加えて、「社員の活動状況をより確認、共有しやすくする機能」や「独自のアプリケーションを構築できる機能」を求めていることが分かる。
1つ目の社員の動向を把握するための機能は、これまでも「在席」や「会議中」といったステータスを共有できるプレゼンス機能や、社員がどこにいても統一された方法で連絡が取れる「ユニバーサルコミュニケーション(UC)」といった形で実現が試みられてきた。しかし、企業がグループウェアに求めるものは、これらとは少し性質が異なるという。
「ユーザー自らが細かくステータスを設定するような手間がかかるものではなく、なおかつUCほど大掛かりでもない、新たな情報共有の方法が求められているようです。社員同士が、緩くお互いの状況を把握しながら、タイミングよく業務上のコミュニケーションを図れるようにする仕組みといえるでしょう」(岩上氏)
2つ目に挙がった独自アプリの開発機能は、「仕事に役立つ情報を、いつでもどこでもグループウェアを使うような気軽さで共有できるようにしたい」というニーズの高まりが背景にあるようだ。これは、90年代後半に「Notes/Domino」が日本において絶大な支持を得た要因の1つにもなった。
「顧客管理やSFA、売上管理のシステムを個別に作るほどではないけれど、これまでExcelなどを使ってまとめていた情報をグループウェア上に集約できて、他の機能とも連携できるようになれば便利なのに――と考える企業が増えています。現場が知りたい情報をすぐに確認できて、それをスムーズに業務上のコミュニケーションにつなげられる基盤としての進化が、今後のグループウェアに求められていると言えます」(岩上氏)
だからといって、“必要な機能を全て網羅したグループウェアがベストか”と言えば、そうではなく、企業のニーズに合った形にカスタマイズできる柔軟性を備えているかが重要だ。
場合によっては「求めている機能を何でもかんでもグループウェアでカバーしようとせず、PaaS的なアプローチで別に機能を用意しておいて、それをグループウェアと連携させるという方法も有効になるだろう」と岩上氏はいう。
例えば、グループウェアを「全社員のスケジュールが格納され、常に更新されるデータベース」と捉えると、「独自アプリとして開発したWeb受注システム上で、問い合わせに対応する社員をアサインするために在席中の社員を探し、自動で業務フローを発生させる」――といった連携も可能になる。
「最も重要な視点は、グループウェアが『現場の全ての社員にとって使いやすいもの』で、『そこにある情報を共有することで業務効率が上がり、人的リソースをさらに活用できる』ことです。そう考えた場合、標準機能の数の多さよりも、蓄積されたデータを多様な業務システムと柔軟に連携できる仕組みを持っているかどうかが、今後のグループウェアに求められる要素になるのかもしれません」(岩上氏)
グループウェアは、社員にとって最も身近な「業務システム」であるからこそ、その存在は会社の業務全体に大きな影響を与える。今後は「使いやすさ」と合わせて、自社の業務プロセスやルールを考慮した活用方法を事前に検討しておくことが、導入効果を最大化するための必要条件となっていくのかもしれない。
この調査結果は、ノークリサーチが2015年10月に発表した「2015年版 中堅・中小企業のITアプリケーション利用実態と評価レポート」に基づくものである。調査は、日本全国、全業種の年商500億円未満の中堅・中小規模企業に対して2015年7月に実施され、1300社からの有効回答を得た。
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提供:株式会社ネオジャパン、リスモン・ビジネス・ポータル株式会社、ソフトバンクコマース&サービス株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2015年12月10日
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