夢の高速移動システム「Hyperloop」構想も、クラウドERPが後押しSuiteWorld 2016 Report(1/2 ページ)

シリコンバレーのど真ん中、サンノゼでクラウドERPの雄、NetSuiteの年次カンファレンス「SuiteWorld 2016」が開幕した。夢の高速移動ネットワーク「Hyperloop」を開発するベンチャー企業も顧客としてステージに上がった。

» 2016年05月18日 14時04分 公開
[浅井英二ITmedia]
NetSuiteの創業メンバーたち。あれからもう20年近い歳月が

 米国時間の5月17日、カリフォルニア州サンノゼでクラウドERPの雄、NetSuiteの年次カンファレンス「SuiteWorld 2016」が開幕した。会場となったサンノゼ・コンベンション・センターは、2006年にGoogleのエリック・シュミット元CEOが「クラウドコンピューティング」という言葉を初めて使った会場としても知られている。「全ては雲の中にある」と彼が表現したクラウドの波は10年後、ようやく企業コンピューティングの本丸である基幹業務システムのERPをも変革しようとしている。

 Oracleの技術者だったエバン・ゴールドバーグCTOがNetSuiteを創業したのは、さらにさかのぼる1998年のこと。もう20年近く前のことだ。思いのほか歳月を要したが、基幹業務システムで必要とされる機能を業界ごとに一つひとつ満たしていくには、やはりそれなりの時間がかかる。彼が掲げた「ネット上でひとつのシステムを」というアイデアは、この領域でもようやく存在感を増しつつある。

 1990年代半ばといえば、日本企業が競うようにしてERPシステムを導入した頃でもある。あれからおよそ20年が経過し、当時のクライアント/サーバ型ERPは確実にその役割を終えようとしている。末期的なサイロ化と高止まりするメンテナンスコストに悩まされている企業も多い。

NetSuiteのザック・ネルソンCEO

 「われわれは、部門ごと、地域ごとにバラバラの分断された企業情報システムの課題をインターネットのパワーで解決しようとNetSuiteを創業した」と話すのは、やはりOracle出身のザック・ネルソンCEOだ。

 顧客企業が3万社を超えたNetSuiteは、企業のERP/財務会計および顧客管理、e-コマースなど、業務全体を単一のクラウド型アプリケーションでカバーしようという野心的なもの。総勘定元帳を単にコンピューターシステムに載せ換えるという発想ではなく、顧客レコードにひも付けて全ての情報を一元管理することで、営業、サポート、財務会計、配送、請求書など、全ての業務を継ぎ目なく進めることができるほか、ビジネスインテリジェンス機能とダッシュボードを併せて提供し、経営の「見える化」はもちろん、プロセスの自動化まで視野に入れているのが大きな特徴だ。

 ネルソン氏は、「NetSuiteなら、カスタマイズがアップグレードの障害となることはないし、ユーザーがセキュリティパッチを気にする必要もない。毎日、50万件の取引が処理されており、大企業の基幹業務さえ担えるスケーラビリティがある」と、ここ数年取り組んできた大企業向けの機能強化を披露する。

Hyperloop OneもNetSuiteの顧客企業

 もちろん、既存の大企業も大半は新興企業からのスタートだ。大企業が失いかけた斬新なアイデアや技術力を武器に将来の成功を賭けるベンチャー企業は、ここシリコンバレーの原動力でもある。

 オープニングの基調講演でネルソンCEOが顧客企業としてステージに招き上げたHyperloop Oneもそうしたベンチャー企業だ。彼らは、Space XやTesra Motorsで知られるイーロン・マスク氏が発表したHyperloop構想の下、サンフランシスコとロサンゼルスを結ぶ高速交通システムの実現を目指している。リニアモーターカーの速度を遥かに超える時速1200キロで約600キロの両都市を30分で結ぶという夢のプロジェクトだ。

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