今や国家戦略――ワークスタイル変革の“賢い”進め方(1/4 ページ)

少子高齢化が世界的にも急速に進む中、あらゆる日本企業にとって労働力の確保が経営課題となっている。そこで注目を集めているのが、ITを活用し既存業務を見直し、生産性向上、さらに社員にとって働きやすい職場作りを目指す「ワークスタイル変革である。ITmedia エンタープライズの主催セミナーではユーザー企業や有力ベンダーが、ワークスタイル変革の“勘所”を紹介した。

» 2016年09月30日 11時00分 公開
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 「ワークスタイル変革」が今、国民の大きな関心事となっている。

 安倍首相が内閣官房に「働き方変革推進室」を設置し、働き方を変えるのに必要な法律、政策を整備していく方針を固めたことから注目が高まり、もはや先送りできない問題であることが浸透し始めている。それは、時を同じくしてヤフーが発表した、「週休3日制への取り組み」が大きな注目を集めたことからも見て取れる。

 ワークスタイル変革が注目される理由は明らかだ。少子高齢化が進む日本では労働力人口が急速に減少しており、この現状を放置すれば近い将来、企業経営に必須の人材確保が困難になりかねないからだ。

 そこで、ITツールを使って、より多様な働き方ができる環境を用意することで生産性を高め、さらに、出産や介護などの理由で退職を余儀なくされていた社員をつなぎ止めることが、企業の中長期的な成長のためにも必須となっている。

 9月27日に開催されたITmedia エンタープライズ編集部主催のセミナーでは、Sansanやフジテックが、ユーザーの立場から自社の取り組みを紹介するとともに、富士通や日本マイクロソフトなどのベンダー各社の専門家が、ワークスタイル変革に向けたポイントなどを解説した。

Sansanのワークスタイル変革を支える3要素

Photo Sansan CIO兼IT&ロジスティクス部の部長を務める久永航氏

 法人向け、個人向けに名刺管理サービスを提供しているSansanは、組織や事業の拡大に伴い、積極的にワークスタイル変革に取り組んできた。CIO兼IT&ロジスティクス部の部長を務める久永航氏は、働き方を変えるためには、「風土、ツール、システムの3要素の達成が重要」と指摘する。

 「風土」は、組織の価値観、経営陣の意識を指し、「システム」は会社の制度で、評価や労務管理を意味する。「ツール」は、新たなITツールやモバイルデバイスなどを想定しがちだが、久永氏の考えはそこにとどまらない。働くための環境や道具、例えばサテライトオフィスなども含めて、業務効率化の具体策としてのツールを指している。

 「ツールを入れれば、ワークスタイルが変革できるというものではありません。経営のビジョン(風土)があって、それを実現するための環境と、さまざまな働き方を推進する制度を用意する。この3要素が相互に影響しあってワークスタイル変革が実現できます」(久永氏)

ワークスタイル変革、「4つのターニングポイント」とは

 Sansanは、営業や製品開発のスタッフが独特な働き方をしている。例えば営業スタッフは、訪問営業に加え、オンライン営業ツールを活用して商談を進めている。また社内コミュニケーションは社内SNS、Web会議などを活用し、意思決定のスピードを高めている。さらにフリースペースやサテライトオフィス、在宅勤務を積極的に活用し、柔軟な働き方を推進している。

 久永氏によれば、こうした変革を実現するまでには4つのターニングポイントがあったという。最初のターニングポイントは、設立2年目となる2009年。設立当初、5人だった社員が30人に増え、メールでは議論の過程が見えにくいなどの課題が浮上したことから、経営層が「社内メールの使用を一切禁止」と決め、社内SNSに切り替えた。

 2010年には、製品のプラットフォームが巨大化し、開発スピードが事業に与える影響がより大きくなった。そこで、開発者の生産性を向上させる取り組みの1つとして導入したのが、サテライトオフィスである。

 「サテライトオフィスは、徳島県神山町の古民家を改築したもの。開発者が2人駐在するだけでなく、営業部、人事部をはじめ、さまざまな部署の合宿などに活用しています。通勤することなく仕事に集中でき、自然が豊かでリフレッシュしやすい環境であるため、創造性、生産性が高まりました。このサテライトオフィスをきっかけに、従業員が本社にいなくても、コミュニケーションが取れるノウハウが蓄積されました」(久永氏)

 さらに2012年には、商談件数を増やすためにオンライン営業ツールを導入。クライアントに出向いて商談をすれば、1日に回れるのは3件程度だが、オンラインに切り替えることで商談機会が倍増し、遠く離れた地域での案件も開拓できたという。

 「オンライン営業は若手の営業の育成にも貢献しました。商談件数が増えることで経験値がたまりますし、先輩の営業スタッフが横に座って、商談後にアドバイスができる。この小さなPDCAを回すことが、営業スキルアップに役立っています」(久永氏)

 そして社員数が200人近くに増えた2014年。社内システムを全面的にクラウド化し、仮想デスクトップ環境を導入した。これによって、どこにいても社内と同じ環境で働けるようになり、リモートワーク、在宅勤務が進んだ。

Photo Sansanのワークスタイル変革の変遷

変革に「終わりはない」、段階的な発展を

 これらの変革によって、Sansanの働き方は変わり続けてきた。しかし2つの注意点があると久永氏はいう。

 1つはセキュリティだ。名刺という顧客情報を扱うSansanの事業にとって、情報漏えいにつながるセキュリティ事故は会社の存続に関わる大問題となる。そこで社員に対し、セキュリティの啓蒙と教育を継続的に行うために、朝会などでヒヤリハットを含めた関連情報を共有し、全社員に個人情報保護士の取得を義務付けている。

 もう1つは、ワークスタイル変革は目的ではなく手段であると強く意識することだ。

 「ワークスタイル変革は、会社の成長を加速させるためのものです。一気に完成形を目指す必要はありません。段階的に変化させながら、多様な働き方や生産性向上に寄与するものと考えることが大事です」(久永氏)

 ビジネスの発展、社員数の変動、ITの進化、社会の変化などによって、企業をめぐる状況はたえず変わり続ける。そのなかで会社の成長を加速するためのワークスタイル変革にも終わりはないということだ。

Photo Sansanのワークスタイル変革への取り組み

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2016年11月16日