今や国家戦略――ワークスタイル変革の“賢い”進め方(4/4 ページ)

» 2016年09月30日 11時00分 公開
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ITに疎い現場こそITで変える意味がある――フジテック

Photo フジテック 情報システム部の部長を務める友岡賢二氏

 情報システム部長の友岡賢二氏が特別講演を行ったフジテックは、1948年創業の昇降機専業メーカー。エレベーターで国内4位のシェアを持つ同社は、早くから海外展開を進め、現在、25の国と地域で国内の2倍に相当する6000人が働いている。

 しかし、友岡氏の就任時には、IT革新が十分に進んでいなかったという。基幹システムはアーキテクチャが古く、「シャドーIT」への対応も十分とはいえなかった。また、主力製品のエレベーターは、建物ごとに仕様が異なる「一点物」のうえ、現場での据え付けと保守が必須で、フィールド業務の精度が製品性能を大きく左右するという特徴がある。こうした企業風土と製品の特殊性を考慮した友岡氏は、同社におけるIT活用の基本スタンスを次のように定めた。

 「まず『現場現物』です。いわゆるDevOpsを実践する組織(=情シス)は現場の近くにいなければなりません。次にBYODの導入を認める『クラウドファースト』と『モバイルファースト』。そして、1つのソリューションを単独で実現できる『フルスタック人材の育成』です」

 BYODやクラウドの導入には、セキュリティ面の不安から慎重な企業も多い。これに対し友岡氏は、「営業がクライアントとのメールをプリントアウトして持ち歩いたり、LINEを業務に応用したりしている状況を認識してください。BYODやクラウドと比べるとむしろ現状のほうが危険度は高いのです」と警鐘を鳴らす。

 フジテックでは、グループチャット(ハングアウト)に加え、社員の6割を占める現場要員の要望に応えて出勤簿や簡易電話帳などのモバイルアプリを導入した。いずれも、BYODで使えるよう、AndroidやiOS、Windowsのマルチプラットフォームに対応している。

Photo フジテックではアプリを内製しており、現在はこのような体制で開発を進めている

 特に、グループチャットと連動した現場写真アップロードは、従来、現場担当者がSDカードでオフィスに持ち帰りアップロードを行ってきた手間を軽減すると共に、リアルタイムの情報共有を実現して現場から高い評価を得た。

Photo 現場からの問い合わせにチャットを使うようになってから、ムダな連絡が減ったという

足を運び、心を通わせ、頭を働かせ、手を動かす

 同社のIT化の根幹にあるのは、「原則として開発・運用の全てを自社で行う」ことだ。クラウドSaaSを徹底的に使い倒し、必要であればIaaSや小規模クラウドサービスをピンポイントで使う。IT関連部門を子会社化せず、やむを得ない場合のみ、クラウド専業の小規模なパートナーと組む。いずれも、意思決定を遅らせる要素を排除するためだ。

 だが、同社のIT化を推進させた最大の成功要因は、情シス部門の人間を現場に派遣して徹底的に現場を観察させ、現場の人間との交流を深めさせたことだった。友岡氏はこれを「現場に溶ける」と表現している。

 前述のグループチャットと現場写真のアップロードも、現場担当者がアドバイスを求めて何人にも電話してつながらず、ようやく回答を得られたものの、今度は先に電話した相手から次々にコールバックがあり、その都度解決した旨を伝えなければならない――という手間を目の当たりにした情シス担当者が思いついたものだ。

 「例えて言えば、左手には常に現場の課題を毛細血管のように吸い上げ、右手には飛び道具であるツールを常に調査し用意しておく。直ちに課題とツールがマッチしなくても、両手がピッタリ合う瞬間は必ずありますから、それをずっと追求していくのです」(友岡氏)

 エレベーター内部の6面を1枚の写真に収められる全天球デジタルカメラ「RICOH THETA S」や、エスカレーター機構部の狭い場所も撮影できるレンズ・モニター分離型デジタルカメラ「CASIO EXILIM」など、情シスが提案して現場からも役員からも高評価を得た事例も多いと友岡氏。現場に赴いて課題を見いだし、その解決手段を追求するという情シスのスタンスが、全社規模での生産性の向上に好影響を及ぼしている。

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2016年11月16日