DX時代の企業を支える仕組み「VMO(ベンダーマネジメントオフィス)」とはソフトウェアベンダーとの契約内容、きちんと把握できていますか?

企業にとって、多様なソフトウェアやクラウドサービスを迅速に調達して組み合わせる重要性が増大している。だが、その内容やコストをきちんと把握しなければ、多大な損失につながりかねない。企業が安全にITを使いこなし、成長し続けるための方法とは。

» 2019年11月18日 10時00分 公開
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 デジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みが活発化し、企業がクラウドベンダーやアプリケーションベンダーとの契約、ライセンスをどう管理するかが重要になってきた。契約内容が複雑化し、頻繁に変化する今、「現在のシステム構成」や「契約状況」を常に把握しなければ、コスト面の損失だけでなく、セキュリティやコンプライアンス面で多大なリスクを負いかねないためだ。これを受け、事務的な“管理”が一般的だったベンダーマネジメントは転換期を迎えている。

 ITmedia エンタープライズが2019年10月8日に主催したセミナー「経営層が知っておくべき『DXの絶対要件』〜ベンダーマネジメントというIT部門に期待すべき役割〜」から、DX時代を生き抜くためのベンダーマネジメントの在り方を探る。

JTがDX時代に向けてベンダーマネジメントに注力するワケ

日本たばこ産業 IT部 CIO グローバルオフィス担当部長 引地久之氏

 企業のビジネスや組織としての在り方は、DXの波を受けて大きく変わろうとしている。基調講演に登壇した日本たばこ産業(JT)のIT部 CIO グローバルオフィス担当部長 引地久之氏は、DXの大きな3つの方向性として「カスタマーエクスペリエンス(CX)の向上」「オペレーション最適化(スピードとコストの改善)」「ビジネスモデル再構築(デジタルディスラプション)」を挙げた。

 「これらの実現には、セキュリティリスクへの対応、IT資産やライセンス契約の管理が不可欠です。デジタルビジネスにおいて、セキュリティ対策はコストではなく投資。DXは(状況に応じて利用状況が変わる)各種クラウドサービス(XaaS)と密接に関わるため、資産管理やライセンス管理は企業としての危機管理に相当します。正しい現状認識を基にした投資が重要です」(引地氏)

 JTのIT部門は、攻めのITとして「変化対応への取り組み」「多様化、グローバライゼーション」「リスクテイク」などを掲げ、守りのITとして「運用、保守、維持、簡素化、自動化」に積極的に取り組む。

 DXというと、「攻めのIT」に関心が集まりがちだ。しかし、実はセキュリティやIT資産管理などの「守りのIT」と表裏一体で、どちらもおろそかにはできない。

 以上の認識に基づき、JTは2020年以降に向けてベンダーマネジメントに注力する。契約管理やパフォーマンス管理を徹底するため新たに交渉プロジェクトチームを立ち上げ、ライセンスや保守、サブスクリプション契約、サポート契約などのコストを把握し直した。財務部門を巻き込んだコスト管理の他、サービス管理の一環で「誰が、何を、いつ、どこで、どのように」ソフトウェアを利用しているか管理、監査する体制も強化した。

 引地氏は「変動し続ける契約を把握してコントロールしなければ、攻めのIT活用ができません。また自社にとってコアではない部分には外部の知見を活用するなど、内製とアウトソースのバランスも必要です」と強調。講演の最後には、「テクノロジーが日々革新される中で、学びの終わりはありません」と、DXにおいて新しい姿勢を学び続ける重要性を説いた。

管理のミッシングリンク問題を解消する「ハイブリッドVMO」とは

 JTが立ち上げたような、契約管理やライセンス管理、稼働状況など「社内のIT資産状況」をリアルタイムで把握する組織は、VMO(ベンダーマネジメントオフィス)と呼ばれる。企業でツールやシステムのクラウド化が進み、複雑なライセンス契約が頻繁に更新される今、VMOの高度化は企業のITを支える現実的な強化策だ。

ウチダスペクトラム 取締役常務執行役員 岡田恭介氏

 しかし、今すぐVMOに取り組むだけのスキルやリソースがない企業はどうすればよいのか。引地氏に続いて登壇したウチダスペクトラムの取締役常務執行役員 岡田恭介氏は、DX時代に守りのITを実践する方法として、VMOを一部アウトソースする「ハイブリッドVMO」を紹介した。

 岡田氏によれば、VMOを通して組織の中のITを「いつ買ったか」「どのような目的に使えるか」「幾つ使っているか」といったライフサイクルで捉えることが重要だという。

 「調達部門とIT部門が連携し、発注情報や契約情報、インベントリ情報を適切に管理し、IT資産のサイクルを継続的に回すことが求められます」(岡田氏)

 組織のVMOが高度化すれば、ITのライフサイクルを鎖のようにつなぎ、現在のシステム構成を可視化して継続的に回せるようになる。ただし今日の取り組みには、予算や人材不足、スキル不足が原因でITリソースの活用状況を正しく把握できず、ライフサイクルが途中で切れる「ミッシングリンク」状態になるケースが多い。ハイブリッドVMOはこの問題を解消するという。

 「VMOを推進する『ベンダーマネジャー』を任命し、その機能を部分的にアウトソースします。これにより、社内のリソース不足を補いつつ、DXを含めた新しい取り組みを安全、合理的に実施できるようになります」(岡田氏)

 ウチダスペクトラムは、企業が抱える複数のソフトウェアライセンスの管理を一括して引き受けるマネージドサービスやライセンス管理のノウハウを顧客企業に伝える教育サービスなどを提供。ハイブリッドVMOやベンダーマネジャーの取り組みを支援する。岡田氏は、無理なく確実にライセンス管理や契約管理を進める重要性を説き、講演を締めくくった。

「IT資産=BOM管理」、全社的な取り組みでバリューチェーンを構築せよ

 とはいえ、VMOは支援サービス導入だけで高度化できるものではない。そんな中、頼りになるのが第三者機関による支援だ。VMO設置やベンダーマネジャーを支援する一般社団法人日本ベンダーマネジメント協会 理事の武内 烈氏は、クラウドの普及で契約管理が複雑化する一方、企業が昔ながらの縦型組織や業務プロセスを引きずれば対応が難しくなると指摘した。

一般社団法人日本ベンダーマネジメント協会 理事 武内 烈氏

 「法律用語や技術用語を理解し、IT資産の状況をリアルタイムに把握する必要があります。ただ、ソフトウェアのライセンス契約は複雑で、法務部門や調達部門にはハードルが高い。そこで、IT部門が新しいVMOの役割を担うことが望ましいのです」(武内氏)

 これまでのVMOはプロジェクト管理におけるベンダー管理としてSIerや開発業者を対象にしがちだった。しかし、武内氏が語る新しいVMOは企業の製品やサービスの品質を決定する重要な組織となる。

 「IT資産は、企業が提供するサービスの、いわば部品のようなもの。つまり製造業がBOM(部品表)を使ってバリューチェーンを管理するのと同様の役割を、企業でVMOが担うべきということです」(武内氏)

 武内氏によれば、企業によっては大量のライセンス管理を担当者1人に任せ、疲弊させてしまうケースもあるという。同氏は、組織的にベンダーマネジャー人材を育成したりマネージドサービスを活用したりして、全社的に取り組むことが重要だと強調した。

ベンダーを戦略的にコントロールすることが重要

 セミナーの最後には、引地氏、岡田氏、武内氏の3氏を招いたパネルディスカッションが開催された。

 ディスカッションのテーマは「VMOが誤解されている理由と、IT部門の本当の役割」。冒頭では「DX時代に契約内容を主体的にコントロールする役割の重要性が高まる中、昔からあるVMOの認知度はなぜ低いのか」という話題が出た。

 引地氏は「VMOというIT特有の3文字略語は、事業部門から購買部門と勘違いされるなど、誤解を招きやすい面があります。まずはVMOの認知度を上げることが必要。その上でVMOのミッションやビジョンを明確化して社内に周知し、コミュニケーションを取ることが求められます」と実感を述べた。

 岡田氏は「PC管理からVMOを始めた企業も少なくありません。PCやパッケージソフトの管理とクラウドのサービスやライセンスの管理では考え方やアプローチが異なるため、何から手を付けてよいか分からないという相談をよく受けます」と、企業が抱える課題を解説した。

アイティメディア統括編集長の内野宏信(左)をモデレーターに、引地氏、武内氏、岡田氏の3氏をパネリストに迎えたパネルディスカッションの様子。

 武内氏もこれに同意しつつ「VMOが取り組むのは、管理というよりもコントロール。単なるIT製品の調達管理ではなく、自社サービスをどのように提供し、サービスを実現する上で必要な各構成部品のベンダーとどのような関係を構築するか、という点から戦略的、組織的に取り組まなければなりません」とした。

 武内氏によれば、ITのライセンス契約は複雑化し、専門家でも誤解してしまうケースがあるという。同氏は「購買部門やIT部門だけで理解しようとするのではなく、必要に応じて専門家の力を借りることがポイント」とアドバイスした。

VMO高度化のポイントは「教育」と「要件定義」

 続いて出た「なぜVMOが必要なのか」という話題について、引地氏は「クラウドなどのサービス管理は、従来のPC管理とは異なり『これから何台必要になるので何台分をボリュームディスカウント』といったやり方では対応できないためです。ビジネスの状況に応じて利用するリソースが変わる以上、ユーザー企業が主導権を取ってITをコントロールする必要があります。ベンダーの提案を待っていては前に進みません。DXを戦略的に後押しする意味でも重要です」と話し、VMOが攻めのITの一要素であることを指摘した。

 武内氏は「これまでのITは、SIerに組み上げてもらう水平分業型でした。DX時代には、サービスを組み合わせて構成する垂直統合型になります。IT資産を製造業で言うBOMとして捉えることで、リスクの低減や移転、回避も可能になります」と、ガバナンスやリスク管理の効果を指摘した。

 では、VMOを具体的にどう実現すればいいのか。武内氏は「トップダウン、ボトムアップ両方からのアプローチが必要です。両方の取り組みのご相談を数多く受けましたが、どちらか一方だけでは行き詰まり、先に進むことが難しい。両方の道をそれぞれ進み、ハーフウェーで出会うのが成功の確度を高める秘訣(ひけつ)だと思います」と多数のユーザー事例を振り返った。

 岡田氏は「取り組みを進めると『うちには人材がいない』と嘆く場面も出てきます。そこは悲観的にならず、人を探し、教育することが大事です。探してみると、社内に優秀な人材が見つかるものです」と話し、武内氏も「内製化してベンダーマネジャーを育成しつつ、アウトソーシングを活用して外部の知見やノウハウを取り入れ続けることが重要」と指摘した。

 パネルディスカッションでの議論を整理すると、VMOの実現、高度化に向けたポイントは大きく分けて3つある。1つ目は、VMOを運営する上で「自社内で担う範囲」と「外部の専門家に依頼する範囲」を明確に切り分けること。2つ目はベンダーマネジメントへの全社的な理解を促すとともに、外部の知見を社内に蓄積して有効に活用すること。3つ目は、ビジネス目的に即した形でVMOを運営することだ。

 ベンダーマネジメントをするための人材やケイパビリティー不足に悩む企業にとって、ウチダスペクトラムが提供するような、VMOの要件定義やベンダーマネジャーの育成、VMOの一部アウトソーシングなどを網羅するサービスは、力強い味方になるだろう。また、日本ベンダーマネジメント協会は、情報提供や担当者同士の交流の場も設けている。それらを柔軟に活用しながら、DX時代を生き抜くベンダーマネジメント実践へ、第一歩を踏み出してみてはいかがだろうか。

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提供:ウチダスペクトラム株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2019年12月17日