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» 2020年04月13日 10時00分 公開

人材不足が真因ではなかった、IT部門がデジタル変革に踏み出すために必要なことIT部門が改革のボトルネックになってしまう本当の理由

事業部門は変革に向けたアイデアを次々と実現したい。だがIT部門は既存システムの運用に追われ、なかなか変革に踏み出せずにいる。そのような状態を解消できない限り、変化に強い企業IT基盤の実現は程遠い。原因はどこにあるのか。これからのIT部門に求められる基本戦略を読み解いていこう。

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シリーズ:「攻め」だけが正解ではなかった! 「強い企業IT基盤の実現」とは何か

デジタルトランスフォーメーションへの取り組みが急務となり、企業は変化に対して俊敏に追従できる「強い企業IT基盤」を求めている。しかしツールを導入しただけで成功につながるわけではない。試行錯誤を繰り返したい事業部門と、既存システムとの整合性やセキュリティを確保したいIT部門の対立を吸収する仕掛けが必要だ。DX時代のIT部門に求められる基本戦略を読み解いていこう。

 「働き方改革」「デジタルトランスフォーメーション」といった言葉に代表されるように、新しい働き方やビジネスモデルの実現に向けた取り組みが広がっている。その背景には労働力人口減少による人材不足が挙げられる。

 「AIやIoTを導入して新規ビジネスを創出しよう」「生産性を向上させ、コストも削減するにはクラウドサービスやRPAを活用しよう」――IT部門には事業部門から次々と変革に向けたアイデアが寄せられる。そして、それを実現するための技術やサービスが既に存在する。

 しかしIT部門は既存システムの運用に追われ、新たな取り組みに向けてリソースを割くために十分な余力があるとは言えない。そして「IT部門が改革のボトルネックになっている」という評価が下される。これが日本企業の現実ではないだろうか。

 だが、IT部門が業務改革に対して俊敏に取り組めない本当の理由は「IT部門の人材不足」ではないという。変化に強い企業のIT基盤を構築するために、IT部門に新たな在り方が求められる。その第一歩は意外なところにあった。

IT部門が改革のボトルネックになってしまう本当の理由

 「ITの専門知識を持ち、最新技術の習得に積極的で、なおかつ業務知識も豊富。経営者視点のマインドと彼らを説得できるスキルを持つ。IT部門にそんな『スーパーマン』がいれば苦労はしません。問題の原因を『人材不足』と捉えてしまうのは表面的にすぎます。IT部門が改革のボトルネックになってしまう本当の課題は別のところに隠されています」

小林 悠氏 小林 悠氏

 こう語るのは、サイボウズの小林 悠氏(ビジネスマーケティング本部)だ。小林氏は同社が主催する「IT部門から始まる業務改革セミナー〜クラウド時代のIT部門はどうあるべきか〜」と題したセミナーで講師を務め、企業が強いIT基盤を実現するためにIT部門が取るべき戦略を紹介する。

 一般的にIT部門は既存システムの運用負荷が高く、慢性的なリソース不足に悩まされている。深堀すれば「対象となるシステムの運用保守要件が複雑」だからリソースが足りない。


 なぜそうなるのかと言えば「事業部門から寄せられた独自の要求を多く盛り込んだから」であり、突き詰めれば「事業部門とIT部門が一方的な主従関係になっている」のだ。

 攻めに出たい事業部門は「既存業務の効率化のため」「新規事業の立ち上げのため」とさまざまなアイデアや要求をIT部門に突き付ける。IT部門は反論するための業務知識が少なく、コストセンターだと見なされることもあって立場が弱い。その結果、IT部門にとって手が掛かる独自システムが生まれ、多忙なIT部門の負荷がさらに高まるという悪循環に陥る。

 IT部門自身も業務効率化や運用省力化を進めているが、一方的な主従関係が続く限り根本的な解決には至らない。「IT部門はその名の通り『ITのプロ』です。事業部門の要求に対して『これを受け入れたらまずいな』という勘所を分かっていても、立場の弱さ故に『そんなことを気にしている暇があったら作ってくれよ』と押し切られているのではないでしょうか。これでは誰も幸せになれません」(小林氏)

「システムを作らされている」状態から抜け出すために必要なこと

 では、IT部門と事業部門の関係性はどうあるべきか。キーワードは「フラット」だ。

 小林氏は従来の関係性を、事業部門が「上」、IT部門が「下」のピラミッド型だと分析する。主たる事業部門によって意思決定がなされ、従たるIT部門に伝言ゲームのように指示や依頼が伝わる。下位の創意工夫は促されず、意思伝達の過程でギャップが広がる。

 システム開発にもピラミッド型の弊害が散見される。IT部門は、システム開発能力があるという理由で「システムを作らされている」状態だ。自分で使うシステムではないため、どこかにユーザー目線を置き忘れてきたシステムが出来上がる。事業部門にしてみれば、システム開発能力がないのでIT部門に頼まざるを得ないのだが「思っていたものと違うシステムが出来上がる」状態に陥る。

本当の課題 IT部門の本当の課題を分析(サイボウズセミナー資料より抜粋)

 「セミナーでは、両者が協調して同じゴールを目指す『フラット』な関係性を提言しています。その実現には『対話』が重要です。相手が何をしたいのか、何ができるのかを理解するには、お互いの事情を知り、できることとできないことの整理が必要です。そうでなければ、これからも『ヤバい』システムが生み出され続けるでしょう」(小林氏)

 サイボウズの社内には、「どこの部署の人がどんなことに困っているのか」をIT部門が把握できる仕組みがある。何のために新しいシステムが欲しいのかが事前に分かっていれば、言われた通りのシステムを作るのではなく、もっと良い解決方法を提案することもできる。

 サイボウズのような仕掛けを常設しなくても、フラットな関係構築のきっかけは日常の業務の中にも存在する。例えば部署を横断する形で新しいプロジェクトが持ち上がるケースだ。小さなチームで構わない。

 小林氏は、飲み会のような交流機会を増やすことも良いが、なるべく通常の仕事に近い形で他部署との交流の機会を得た方が相互理解も進むと語る。

 「業務を通じて相手に興味を持つこと、仕様書を理解するのではなくそれを書いた人の気持ちに思いをはせることから始めましょう。相手がどういうミッションを持ち、自分には何ができて、何をアウトプットしたら喜んでもらえるだろうかという歩み寄りが関係性を変えるきっかけになるはずです」(小林氏)

「わが社には無理」をひっくり返す、初めの一歩

 確かに両者がフラットな関係になって協調することは理想的だ。しかし、組織の在り方を変えるとなると「わが社には無理だ」という諦めの気持ちが先に立ってしまうこともある。特にピラミッド型であることが既定路線だった企業では変化に前向きになるのは難しそうだ。

木地谷 健介氏 木地谷 健介氏

 「IT部門と事業部門の協調を実現するための1つ目のポイントとして、まずは小さな改善で成功体験を積むことが大事です」と語るのは、同じくセミナーで講師を務める木地谷 健介氏(営業戦略部 副部長)だ。

 「とても小さなことで構いません。事業部門の現場が困っているところにIT部門が歩み寄り、すぐに何かが変わるという経験をすることが、一緒になって変わっていくぞという機運につながります」

 半年や1年といった時間が必要なプロジェクトは不向きだ。成否が分かりにくく、お互いが出した意見がすぐに反映されたという経験にもつながりにくいからだ。数日ないし長くとも1カ月以内で「便利になった」という経験が繰り返されることで、IT部門と事業部門の距離が近づく。

 2つ目のポイントは、事業部門の人が普段の業務で触っているシステムを変えることだ。木地谷氏は、営業活動の管理、申請業務のペーパーレス化、作業実施内容を記録、報告するシステムなどを例に挙げる。業務の裏側で何かが走っているような基幹系システムの改修は事業部門の人に伝わりにくい。

 きっかけとなるシステムは企業によって異なる。作業内容が単純であるにもかかわらず、適切なツールがないために負荷が高いものがあれば、そこから取り掛かるのも良い。従来、時間がかかっていた作業が短縮できれば「他にも変えていきたい」という空気になる。

 近年、ビジネスの変化に対する俊敏さを重視する企業の間で「ローコード開発」に注目が集まっている。従来のようにプログラムを書くのではなく、開発画面にパーツを配置するような感覚でアプリケーションを作成する手法だ。

 ツール自体がクラウドサービスとして提供され、aPaaS(application Platform as a Service)とも呼ばれる。サイボウズの「kintone」もこの一つだ。開発のプロではない事業部門ユーザーが自ら必要とするアプリケーションを開発できるという点が評価されている。

 「事業部門の人が実際に手を動かしてシステムの一部修正を体験できると効果的です。IT部門から提供されたツールを使って、事業部門の人が自分でシステムを修正できれば『事業部門でもできることがあるよ』という気付きが得られます。システム開発にはアジャイル開発という手法がありますが、事業部門の人が関与することでシステム利用開始後も業務の状況に合わせてシステムの改善を続けやすくなります」(木地谷氏)

 3つ目のポイントは、成功体験を社内に広げるための仕掛けだ。風通しのよい風土を持つ会社なら、特定部署の小さな成功体験が人づてに広がるかもしれない。だが物理的にオフィスが離れているような場合、何らかの情報発信手段が必要だ。しかし、小さな成功を社内報などで大々的に発表するというのもサイズ感が合わない。

 木地谷氏は「協調戦略の構築に成功した企業は、IT部門がシステムをリリースした『後』を大事にしています」と言う。事業部門の改善要望を挙げてもらう仕組みを作り、IT部門がしっかりと応えてくれるという信頼感を醸成すること。小さな改善を継続的に実施することで、事業部門に感謝の気持ちが広がり、関係性が改善されて「これもお願いできる?」という次のアイデアにつながる。

新しい在り方の実現、誰が動くべきなのか

 IT部門と事業部門のフラットな関係性を企業全体までに広げるには、当然のことながら経営層のコミットメントが重要になる。組織の在り方がフラットになることで従来のピラミッド型時代には見えていなかった課題が浮かび上がるだろう。

 小林氏は、次のように述べる。「それはフラットであることに起因する課題とは限らないでしょう。ピラミッド型の中では見えなかっただけで、本当は対応しなければいけなかった課題なのに放置されていたという可能性もあります。『現状維持で良い』というのは言い訳です。経営層が理解を示し、承認し、後押しすることでIT部門も事業部門も行動しやすくなるでしょう」

対立の解消 対立はどのように解消すべきなのか(サイボウズセミナー資料より抜粋)

 IT部門と事業部門の協調戦略を実現するためには、誰が、どうやって動き始めたらいいのか。木地谷氏は「IT部門の人だけでなく、事業部門の人と一緒に『IT部門から始まる業務改革セミナー〜クラウド時代のIT部門はどうあるべきか〜』に参加されるのが理想的です」と提案する。両者が同時にセミナーに参加することでマインドチェンジが起きるという。

 小林氏は「特にIT部門の人の先入観を揺さぶりたい」とも言う。フラットな関係になると、事業部門の要望が今まで以上に増えてしまうのではないかという不安が先だってしまう。だが、その不安を上回る効果もあるはずだ。

 IT部門は「ITの専門家」であるという自負から、事業部門に権限をゆだねることに消極的だ。だが協調することで「この部分は事業部門に渡した方がうまくいくかも」という気付きを得られる。一方の事業部門にとっても「これはIT部門でなければできないこと」というシステム開発に対する先入観が解消できるだろう。

 本稿で紹介したセミナー「IT部門から始まる業務改革セミナー〜クラウド時代のIT部門はどうあるべきか〜」では、IT部門と事業部門の協調戦略の他に、実際にkintoneを活用してIT部門が業務改革を進めてきた星野リゾートや京王グループの取り組み事例なども紹介する。IT部門が「改革のボトルネック」から「改革の推進剤」に生まれ変わるための気付きが得られるだろう。

セミナー「IT部門から始まる業務改革セミナー〜クラウド時代のIT部門はどうあるべきか〜」

サイボウズは、IT部門向けのセミナーを複数日程で開催しています。詳しくはセミナーページの内容をご確認ください。

https://kintone.cybozu.co.jp/jp/josys_seminar/

ホワイトペーパー

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IT部門向け冊子〜京王グループ・星野リゾートの事例から学ぶ〜

AIやRPA、IoTなどへの期待が高まる中で、深刻なIT人材不足問題が顕在化している。現状の少ないリソースの中でビジネスに貢献していくために、“これから”のIT部門はどうあるべきだろうか…


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提供:サイボウズ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2020年5月19日

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