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» 2020年06月10日 10時00分 公開

テレワーク助成金の種類と申請の作戦を知ろう:テレワーク環境整備、検討するなら知っておきたい助成制度の使い方

2020年度は企業のテレワーク環境整備を支援する制度が例年以上に手厚く用意されている。だが制度ごとに申請のポイントが異なり、何をどう組み合わせればよいかが分かりにくい。制度に詳しい税理士に話を聞いた。

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 新型コロナウイルス感染症の拡大を受けた緊急事態宣言や外出自粛要請をきっかけに、多くの企業がテレワークの導入を急いだ。数週間でテレワーク用のPCを手配したりネットワークやセキュリティ対策を整備したりする必要があったため、緊急対応用の予算を捻出するのに苦慮した企業もあるだろう。第2波、第3波の流行が予測されることから、事業継続のためにも対策を強化しておきたいところだ。

 だが、景気悪化の不安がある中で“そんなお金がどこにある?”というのが中堅・中小企業の本音ではないだろうか。

ビジネス・ブレイン 畑中孝介氏 ビジネス・ブレイン 畑中孝介氏

 こうした状況を受け、政府や自治体は主に中堅・中小企業を対象に、テレワーク導入を支援する補助金・助成金制度を例年以上に打ち出している。中には補助金・助成金とは別のアプローチでテレワーク導入を後押しする制度もある。だがそれぞれの制度は予算の出どころや申請内容、条件が異なるなど、全貌を把握するのは困難を極める。

 そこで本稿では、テレワーク導入に利用できる公的支援制度とその活用ポイントや留意点について、税制に関する著書を数多く手掛け、企業向けの支援制度に詳しいビジネス・ブレインの税理士 畑中孝介氏に話を聞いた。

経済産業省「IT導入補助金2020 特別枠」はPCなどのハードウェアレンタルも対象に

 現在、企業がテレワーク導入に利用できる公的な支援制度は2種類ある。一つは補助金制度、もう一つは法人税の減免だ。前者には省庁が管轄するものと地方自治体が管轄するものの2系統がある。

 省庁管轄で代表的な補助金は、経済産業省(以下、経産省)の「IT導入補助金」(サービス等生産性向上IT導入支援事業)だ。これは中小企業や自営業者がITツールの導入に利用できる補助金制度で、IT導入による業務効率化の支援を目的としている。今回は新型コロナウイルス感染症対策に伴う特別支援枠が設けられており、「甲:サプライチェーンの毀損」「乙:非対面型ビジネスモデルへの転換」「丙:テレワーク環境の整備」のいずれか一定額以上含まれている場合に補助率の上乗せなどが実施される。従来この「丙」がテレワーク環境整備に利用されてきた。経産省は既存のこれらの制度に加え、2020年度の予算では新たに新型コロナウイルス感染症対策として「IT導入補助金2020 特別枠」を設置する(宗教法人や風俗営業など一部の事業者は補助対象外)。特別枠のポイントは3つだ。

(1)補助率は従来、導入費用の2分の1だったが最大4分の3まで補助額を拡大する(補助額は30万〜450万円)

(2)従来はソフトウェアや役務のみであった補助対象に、PC、タブレットなどのハードウェアのレンタル費用も含められる

(3)補助金公募前に導入したITツールなども対象に含めてよい(一定の条件あり)

補助金類型判別チャート。テレワーク導入は丙に当たるため4分の3まで補助。ただし補助金額が300万円以上になる場合は従業員の賃上げ目標の設定と達成が要件となる(IT導入補助金 2020 特別枠 公募要領より) 図1 補助金類型判別チャート。テレワーク導入は丙に当たるため4分の3まで補助。ただし補助金額が300万円以上になる場合は従業員の賃上げ目標の設定と達成が要件となる(IT導入補助金 2020 特別枠 公募要領より)

 ノートPCや通信用のモバイルルーター、ヘッドセット、商談管理などのSaaSアプリケーションのアカウントを組み合わせたテレワーク環境一式を20人に支給する場合、1人当たり12万円と仮定して総額240万円になる。IT導入補助金 2020 特別枠を利用すれば180万円が補助されることになり、企業の負担は60万円で済む。

 だが、この制度には幾つかの注意点がある。

 「ハードウェアは“レンタル”のみが対象で購入品は対象外です。加えてハードウェアレンタル“のみ”を導入する場合も、申請は認められません。ソフトウェアなら何でもいいというわけではなく、この制度の対象として登録された労働生産性向上に資するソフトウェアに限られます。導入のみが対象なのでバージョンアップ費用は対象外です」(畑中氏)

 しかし、IT導入補助金 2020 特別枠には「メイン」と「オプション」という概念があり、労働生産性向上に資するソフトウェアを活用するのに必要なもの(オプション)は認められる。

 「労働生産性向上に資するソフトウェアを利用するには持ち運びやすいノートPCや安全な通信環境が必要です。そのためにVPN装置を導入する、あるいはコンサルティングを受けるという場合、それらはオプションの範囲で認められます。メインよりオプションの費用が高額になっても構いません」(畑中氏)

「令和2年度第2次補正予算案の事業概要」(経済産業省) 図2 「令和2年度第2次補正予算案の事業概要」(経済産業省)

経産省の各種補助金が描く「ストーリー」に即した申請がポイント

 経産省では「IT導入補助金」以外にも「ものづくり補助金」「持続化補助金」という名称の補助金がある。今回、これらにも特別枠が設置された。ものづくり補助金は、中小企業で2分の1、小規模事業者で3分の2(補助上限:1000万円)、持続化補助金は3分の2(補助上限:100万円)の補助率だ。

 もともとこれら3つの補助金は「生産性革命推進事業」として一体運用しているものだ。

 事業者がものづくり補助金で新製品の開発に取り組み、持続化補助金でマーケティングや広告などで販路を開拓し、バックオフィスについてはIT導入補助金で生産性向上を実現するという一連のストーリーが描かれている。

 つまり本稿で取り上げた3つの補助金は一体運用されており、ストーリーに当てはまる事業者であれば3つ全て申請できる。「生産性向上やビジネスの革新を目指した業務デジタル化」のような大きなビジョンの一環としてテレワークの導入を組み込むこともできる。ただし、当然“二重取り”は不可だ。同一のソフトウェアで「持続化補助金」と「IT導入補助金」の支援を受けることはできないため、何をどの補助金で導入するかは綿密に計画を立てる必要がある。

「gBizID」は取得しておいて損はない

 経産省の補助金には根本的な留意点もある。電子申請制度への対応だ。

 「経産省は、行政サービス認証システム『gBizID』利用による電子申請を強く推奨しています。申請するのであれば原則として補助金用アカウント『gBizIDプライム』の取得が必要です。ただし、取得には一定の時間がかかるため今回の交付申請では特例で暫定IDでも許容されましたが、今後補助金の申請はgBizIDによる電子申請に一本化される見込みですから、早めに取得しておくとよいでしょう」

 また、申請には加点項目がある。

 「(1)導入するITツールとしてクラウド製品を選定していること、(2)給与支給総額を年率平均で1.5%以上増加させるなどの賃上げ条件を含む事業計画を策定して従業員に表明すること、などが加点項目です。経産省が推奨する企業変革、生産性向上、賃上げの方向性に寄与する加点要素は、盛り込めば盛り込むほど採択率が上がります」(畑中氏)

 補助金制度は申請したからといって必ず採択されるわけではない。申請時にどのような労働生産性向上を達成しようと考えているかを整理し、経産省の政策目的に合った経営ストーリーを構築し生産性向上することが重要だ。

厚生労働省や地方自治体も打ち出す補助金や助成金

 新型コロナウイルス感染症対策でのテレワーク導入の助成金は、厚生労働省(以下、厚労省)でも実施していた。「『働き方改革推進支援助成金』新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース」がそれだ。

 1企業当たりの補助率2分の1(上限額:100万円)という支援内容だったが残念ながら2020(令和2)年5月29日が提出締め切りだった。

 その代わり、厚労省は「雇用調整助成金」を拡充する。主な拡充内容は、一定の要件を満たす場合は休業手当全体の助成率を「10分の10」(つまり100%)にする(1人1日当たり8330円が上限)というものだ。

 この「一定の条件」には、中小企業であり、解雇などを行わず雇用を維持している場合、都道府県対策本部長からの要請により休業または営業時間の短縮を求められ、それに協力した事業主などといったものがある。

 申請手続きや助成金の算定方法も簡素化されており、申請期限も特例として令和2年8月31日までに延長されている(2020年5月26日現在)。また補正予算により日当上限額の引き上げや、申請の簡素化も検討されている。テレワークシフトが間に合わず休業を与儀なくされたという事業者は、併せて活用することで資金に余裕を持たせ、その分を今後のテレワーク施策に充当するなどの方法も考えられるだろう。

雇用調整助成金の拡充内容詳細(出典:厚生労働省) 図3 雇用調整助成金の拡充内容詳細(出典:厚生労働省)

自治体独自の助成制度、費用の100%を助成する制度も

 地方自治体もさまざまな金銭支援制度を打ち出している。東京都の「事業継続緊急対策(テレワーク)助成金」は、都が実施する「2020TDM推進プロジェクト」に参加している中堅・中小企業であること、支給決定日以後2020年7月31日までに導入完了が可能であることなどの条件はあるが、助成対象となる経費を助成率10分の10で最大250万円まで支給する。ハードウェア、ソフトウェアの購入やリース、クラウドツールの使用料などが対象だ。

 他にも福岡県は「福岡県中小企業生産性革命支援補助金(テレワークツール導入支援型)」を用意する。IT導入補助金2020 特別枠に採択されてテレワークツールを導入し、売上高などが前年同月比で15%以上減少した事業者を対象に、56万2500円を上限とする補助金制度だ。

 畑中氏によると、新型コロナウイルス感染症に関連した地方自治体の補助金、助成金、融資情報は、中小企業基盤整備機構が運営するポータルサイト「J-Net21」(リンク)に最も網羅されているという。自社が拠点とする自治体でどんな支援が提供されているかを確認しておくとよいだろう。

ほとんどの中小企業が知らない「中小企業経営強化税制」による税制優遇

 政府は中小企業の経営強化を目的にIT投資資金を提供するだけでなく、税金の減免も打ち出している。中小企業庁を主管とする「中小企業経営強化税制」だ。

 中小企業経営強化税制はあまり一般に知られていないが「中小企業が設備投資やIT投資をするなら申請を検討した方がよい」と畑中氏は説明する。

 「中小企業経営強化税制は『中小企業等経営強化法』の認定を受けた経営力向上計画に基づき、一定の設備を取得したり製作したりした場合に、その設備に対して即時償却または取得価額の10%の税額控除(資本金3000万円超1億円以下の法人は7%)を選択適用できるというものです。これまでは生産性向上設備(A類型)、収益力強化設備(B類型)のみが対象でしたが、2020年度の臨時の税制改正で拡充措置としてテレワークなどの導入を促進するためのデジタル化設備(C類型)も対象に加わっています」(畑中氏)

中小企業経営強化税制の拡充ポイント(経済産業省「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策における税制上の措置(経済産業関係)」より) 図4 中小企業経営強化税制の拡充ポイント(経済産業省「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策における税制上の措置(経済産業関係)」より)

 前述の例で総額240万円のテレワーク環境一式を導入した場合、240万円を1年で減価償却を進めるか、24万円あるいは16万8000円の法人税減免を選択できる。ここでの注意点を畑中氏は次のように語る。

 「申請の条件に『中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づき』とありますから、事前に『経営力向上計画認定申請書』を提出して認定を受けるのが大前提です。そう説明すると難しく聞こえるかもしれませんが、用意する書類は至ってシンプルです。経営力向上計画認定申請書は、表紙を除いてA4用紙3枚からなる書式の定まった書類で、具体的な取り組みとそれによる経営力向上の目標などを、今後の利益向上の観点から数値なども駆使して記述します。『この販売管理ソフトを導入すると、処理時間を何%短縮でき、人件費がいくら減らせるため、営業利益の何%向上が見込める』といった具合です。作成に関しては『経営革新等支援機関』として認定されている税理士事務所や商工会議所、金融機関などのサポートを受けられます」

 IT導入補助金2020 特別枠は設備や機器を取得してからでも申請が可能だったが、こちらは取得前に認定が必要で、申請から認定までは1〜2カ月程度かかるので注意しておきたい。

2020年は中小企業にとってIT投資を最も進めやすい時期

 畑中氏は、「中小企業が少ない負担で最大限のIT投資を実現できるチャンスと言えるこの機会を逃すのはもったいない」と訴える。

 「2020年度の各種補助金や助成制度は、例年よりも補助率が高く設定されています。補助金の採択率は年度によって大きく異なりますが、新型コロナウイルス感染症拡大に付随するテレワーク導入支援や景気促進策としての側面もありますから、恐らく採択率も高くなることでしょう。うまく活用すれば、全社テレワーク導入といった改革を推進できる上、クラウドを利用したデータの利活用による経営改革、経営改善も可能になります。さらに今ある資金を別の用途に回せます。私たちの税理士事務所の顧客には『ダメ元と思って挑戦しましょう』と声を掛けています」(畑中氏)

 「これを機に、こうした公的支援制度を省庁のWebサイトなどを見ながら常にチェックして早くから周到に準備し、機会が提供されるや素早く利用するという姿勢を身に付けることをお勧めします。そうすれば今回のように未曽有の事態に遭遇しても、したたかに生き残っていける強い企業に成長できます」

 先行きに不安を感じてさまざまな予算を絞る企業も少なくないだろうが、ことテレワークやIT設備への投資については各種助成制度を受けやすい2020年のうちにできるだけ前倒しで推進することも検討したい。

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2020年6月26日