アイティメディアが実施したテレワークの実施状況に関するアンケートを基に、テレワーク「ベテラン企業」と「ビギナー企業」の取り組みの違いを比較するとともに、「テレワークは無理」と思い込んでいる企業に対するヒントを提供する。
2020年4月、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大を受けて政府は全国に緊急事態宣言を発令した。その間、首都圏を中心に少なくない数の企業がテレワークによる事業継続を余儀なくされた。新規感染者が減少傾向に転じた2020年5月末には緊急事態宣言は解除されたものの、“第2波”の可能性も浮上している。
厚生労働省は国民に対して「新しい生活様式」を公表したが、企業も「ウィズコロナ」の環境下で生き抜くためにワークスタイルの転換が必要だ。既に全社的にオフィスを中心とした働き方からテレワークに移行しようと動き始めている企業もある。
一方で、テレワークへの切り替えに苦戦する企業も見られる。もちろん企業によって業種や規模、体制や予算差はあるが、なぜスムーズに移行できない企業が存在するのか。働き方改革以前からテレワークを実施していた先行企業と、感染症問題を機にこれからテレワークを始めようとする企業とでは抱える問題に違いがあるように見える。
そのヒントを探るために、アイティメディアは2020年4月17日〜5月18日にかけて、ITmedia エンタープライズ読者を対象にしたアンケート調査「テレワークの実施有無とその課題の実態」(回答数=1637)を実施した。
まず「導入率」と「導入時期」を基に、国内におけるテレワークの現状を俯瞰(ふかん)する。
読者の勤務先のテレワーク導入状況を選択式で尋ねたところ、「全社的に導入している」と回答した人は47.8%、「部分的に導入している」とした人は合わせて36.4%、「今後導入を検討している」が6.3%、そして緊急事態宣言が発令されている中でも「テレワークを導入していない」とした人は9.6%という結果が得られた(図1)。
緊急事態宣言期間中に実施したアンケートということもあり、平常時の調査結果よりも比較的高い導入率のように見られるが、「全社的に導入している」と回答した人の多くが東京、千葉、神奈川、埼玉の首都圏在住の読者であり、1都3県を除くと導入率は平均して3割弱にまで落ちる。また、コロナ禍であってもまだ部分的にしか実施していないとした人は合計で36.4%にも上る。
テレワークを全社または部分的に導入していると回答した人に対してテレワークの導入時期を問う項目では、「過去1年以内」が36.7%と最多で、ここ1年の間でテレワークを進めた“ビギナー企業”が多くを占める結果となった。次いで「1〜3年前」(20.7%)で、2019年4月に始まった働き方改革以前からテレワークに取り組んでいたことが分かる(図2)。
テレワークの導入率を問う項目では、コロナ禍であっても「導入していない」とした人も一定数存在する。テレワークを導入できない理由のトップ5は「出社しなければできない業務が多い」が最も多く65.0%、次いで「持ち運べるPCが与えられていないため」が40.8%、「社内の労務規定が整備されていないため」が34.4%、「環境整備に割ける予算がない、少ないため」が33.1%、「経営層の理解がないため」が25.5%であった(図3)。
テレワークを導入できない理由として「業務形態」や「IT機器の不整備」「制度の理由」が中心であることが分かる。ただし、「テレワークを導入していない=意欲がない」というわけではなさそうだ。「課題が解消されればテレワークで勤務したいと思うか」と尋ねたところ、「テレワークを導入していない」とした人の約70%が「そう思う」と回答した。
次にテレワークの導入時期を基に、テレワークに長年取り組んでいる「ベテラン企業」と実施期間が短いもしくは実施までは至っていないものの近い将来に実施の予定がある「ビギナー企業」に分け、テレワークを実施する上で障壁となりやすい課題、またそれぞれで抱える課題の違いを探る。
「テレワークを実施して困った点はあったか」と尋ねたところ、長年テレワークに取り組んでいるベテラン企業は「リアルタイムでの意思の疎通や情報共有」に最も多くの票が集まった。一方のビギナー企業では「テレワークでは対応が難しい業務が多い」「勤怠など正確な労務管理が難しい」といった、業務や管理面に課題を感じる回答者が多いようだ。
ビギナー企業が抱える課題はかつてベテラン企業も通ってきた道だ。今後、企業におけるテレワークの導入率の高まりが予想される中、手をこまねくだけではなく何か打てる策はないものか。そこで、「テレワーク実施時の問題点、懸念点の解消に向けて何か取り組んでいること」について自由回答形式で尋ねたところ、ベテラン企業から以下のようなコメントが寄せられた。
これらベテラン企業の取り組みを見ると、ビギナー企業が抱える勤怠管理などの制度的な問題もまずは工夫から始めることでカバーできそうだ。テレワークの推進は相応の権限や予算を持って進めるものだけではない。始める前から大風呂敷を広げるのではなく、まずはすぐに着手できることから始めることがテレワークの一歩とも言える。
一方のビギナー企業の中にもテレワークを少しでも前に進めようと苦心する企業がある。同様の設問に対してビギナー企業からは以下のようなコメントが得られた。
こうしたコメントから、テレワークを前提とした業務プロセスや制度、組織がまだ整備されておらず、予算や権限が与えられていない中、何とか創意工夫でテレワークを運用しようとする現場の苦心ぶりが透けて見える。ビギナー企業がテレワークを進めるためには、具体的な仕組みやツールを検討する以前に、まずは制度や体制などを整えて社内でテレワーク推進の機運を高めるところから着手する必要がありそうだ。
スピーディーに取り組みを進めるためには、現場からのボトムアップよりも経営陣によるトップダウンで一気に進める方が望ましいだろう。まずはテレワークに対する経営陣の意識を高めるよう働き掛けるとともに、「ベテラン企業が重点的に取り組むポイント」を参考にしながら組織体制や社内制度の整備を進めていくといいだろう。
本調査で、ベテラン企業でも多くが業務の意思疎通に困難を感じていることが分かった。ビジネスコミュニケーションツールの代表格である「Microsoft Teams」は、Web会議やテキストでのチャット、資料の共有などを1つのツールで完結でき、情報共有をスムーズに運ぶための手段として企業間で急速に採用が進んでいる。ベテラン企業の問題を解消する糸口となりそうだ。コミュニケーションに関する課題と解決法については後編の記事で詳細を紹介する。
テレワークは全てがそろわなければ始められないというわけではない。現場でできることとツールに頼らなければできないことを明確にし、できることから着手して、並行してIT環境の整備を進めるなど、段階的な進め方もある。テレワークの導入に悩む企業にとって、本調査が参考となれば幸いだ。
テレワーク未導入企業の約4割が、テレワークができない理由として「持ち運べるPCが与えられていないため」を挙げている。本調査結果から見て取れるように、組織体制や制度を充実させるだけではなく、ツールや環境整備も同時に進めなければならない。
新型コロナウイルス感染症を機に、「ニューノーマル」という言葉の通り、場所に縛られない新たな働き方のスタンダードが生まれようとしている。それに応えるノートPCとして富士通はテレワークに好適な13.3型の超軽量ノートPC「LIFEBOOK U9310/D」とタブレットの便利さとモバイルPCの快適さを兼ね備えたコンバーティブルモデルの「LIFEBOOK U9310X/D」を提供している。
LIFEBOOK U9310/Dは約777g、U9310X/Dは約877gと両モデルとも1キロを切る軽量さだ。本拠点とサテライトオフィス、自宅を行き来する場面が増えても持ち運びに苦にならない重量だ。また強固なセキュリティ対策として、非接触で簡単に本人認証が可能な手のひら静脈センサーを選択可能だ。さらにLIFEBOOK U9310/Dは、のぞき見防止専用プライバシーフィルターも選択できる。パブリックスペースでの作業でも安心だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
提供:富士通株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2020年7月13日