データの時代、中堅・中小企業のIT投資はどうなるのか、HPEのビジョン中堅・中小企業にもできるデータドリブンの事業運営、まずはどう着手するか

HPEは大企業だけでなく中堅・中小企業にもDXに向けたデータ中心のアプローチを提案する。人員や予算が限られる企業に向けて「簡単にできる」方法だという。米国イベントの事例から詳細を紹介する。

» 2020年07月31日 10時00分 公開
[PR/ITmedia]
PR

 Hewlett Packard Enterprise(HPE)は2020年6月24日からグローバルイベント「HPE Discover Virtual Experience」をオンラインで実施している。会期冒頭、同社CEO Antonio Neri氏は今後のITのあるべき姿として、データを集積するのではなく、エッジからオンプレミス、クラウドの間でデータを透過的に扱い、その洞察を生かす「洞察の時代に移行すべきだ」と語った。

 エッジからクラウドまで一貫性を持って透過的に運用しようともくろむHPEのIT基盤は、企業のデジタル変革にどう貢献するのだろうか。投資予算が限られる中堅・中小企業にどう実践できるのだろうか。本稿では、「HPE Discover Virtual Experience」のセッションの中から、製造業や小売業などで進むデジタルトランスフォーメーション(DX)のアプローチと具体例を見ていく。

 本稿で紹介するセッションは、全て「HPE Discover Virtual Experience」のWebサイトで視聴できます。

https://www.hpe.com/us/en/discover-more-network/discover-virtual-experience-2020/smb.html

 一部のセッションは日本語の「クローズドキャプション(cc)機能」を利用できます。画面下の操作メニューから、[cc]マークをクリックすると対応言語が表示されます。

データを生かした洞察、どこから始めるべきなのか

 HPE Discover Virtual Experienceでは中堅・中小企業向けの動画が配信された。このうち「Your Data is Your Currency:Disrupt Yourself or be Disrupted(データは通貨: 破壊される前にディスラプターとなる)」と題したセッションでは、「データから価値を得る方法」について、HPEのデータインテリジェンス、マーケティングテクノロジーの最高技術責任者であるRama Krishna氏が講演した。司会はHPEマーケティング戦略担当バイスプレジデントのSandy Ono氏だ。

Krishna氏(右)とOno氏(左) Krishna氏(右)とOno氏(左)

 「現在のビジネスモデルがデータを考慮していない場合、データを考慮したビジネスモデルが登場すればディスラプトされる可能性が高い」とKrishna氏は警鐘を発する。

 一言でデータといっても、その活用のされ方はさまざまだ。「as a Service」として提供されることもあれば、データそのものがコンテンツ・サービスや分析サービスに生かされることもある。ビジネス分析を重ねた結果をサービスとして提供するケースもあるだろう。データを考慮したビジネスモデルを検討するにはどうしたら良いのか。

 Krishna氏は、データのマネタイズを考えるとき、3つの視点から評価するという。1つはデータを使用して既に実施していることを最適化し、効率を高められるかどうか、2つ目がビジネスモデルを変更せずに付加価値サービスを獲得できるかどうか、そして今までのビジネスモデルを刷新して次のレベルに進めるかどうかだ。Krishna氏は「データ駆動型のビジネスではこうしたデータの見方が重要であり、この視点を持つことが市場で競争優位につながる」と説明する。

 だが、データに対するマネタイズの視点は理解できたとして、実際の「デジタルサプライチェーン」構築では、データの置き場所やデータ保護の問題など、デジタルサプライチェーンの各段階で検討すべき技術は多岐にわたる。

 こうして見ると困難に感じられるが、Ono氏はデータ活用を次のステップに進めるTipsとして次の5つが重要だとした。

  1. 新しいコモディティとしてのデータは現在のビジネスの延長にあるため、ビジネスのコアから順を追って育てること
  2. テクノロジーへの投資では、金融サービスを活用した消費モデルをうまく組み合わせること。サブスクリプション型モデルや投資猶予のある金融サービスもうまく活用しOPEXを見ること
  3. クラウドベースのサービスを利用してML Opsなどを駆使して自動化を推し進め、データやアプリケーションの移動にまつわる隠れたコストを回避すること、
  4. 潜在的なレイテンシとパフォーマンスの問題を想定して「HPE InfoSight」のようなデータ分析をサービスとして利用し、必要に応じてスケールさせること
  5. ハイブリッド環境全体でデータ操作を管理し、効率を最大化するため、全体を管理すること

製造業のインフラはエッジtoクラウドでどう変革するか

 では、洞察を収益につなぐアプローチについて、先行企業はどう実践しているだろうか。

 「Future Proofing for Industrial IoT(インダストリアルIoTの将来性を考慮)」と題したセッションでは、HPEの中堅・中小企業製品マーケティングマネジャーであるMartin Oderinde氏とHPEの中堅・中小企業製品マーケティングマネジャーであるMichael Meek氏が登場、製造業のDXについて語った。

 それによると、製造業におけるDXのポイントはIoTを活用してデータをつなぎ、フィードバックを生かすクローズドループ型の製造プロセスの実践にある。

 クローズドループ型の製造プロセスとは、製造実行システムやERP、FA、顧客接点情報、製品ライフサイクル管理システムなどを連携させ、それぞれのデータからフィードバックを得て最適化を進め、継続的な品質向上を目指す仕組みを指す。

伝統的な製造プロセスとクローズドループ型製造プロセスの違い 伝統的な製造プロセスとクローズドループ型製造プロセスの違い

 大量に作って売ることが重要だった大量生産時代とは異なり、現在の製造業は、顧客からの高度なカスタマイズ要求に対応できる製造工程や短い製品ライフサイクルに対応できる俊敏さが求められる。顧客との関係も物を売って終わりではなく、サプライチェーンのトレーサビリティーを維持する必要がある。顧客とサプライヤー、生産工程を一元的に管理できる基盤も必要だ。

 こうした市場状況を考えたとき、旧来型の製造業は製造工程の実行に注力しており、全体最適の視点があまりなく、結果として収益の源泉がどこにあるかが分かりにくいという問題があった。この点、クローズドループ型製造プロセスは、各工程が「接続され、自動化され、データドリブンなプロセス」を特徴とし、クラウドテクノロジーとエッジを活用する。

 人員が限られる中堅・中小企業ではクローズドループの製造プロセスを取り入れるスキルやリソースを持ち合わせていないこともある。だが「IoTデバイスさえあれば、個別の機器は既に情報を持っているので対応できる」(Oderinde氏)。

 HPEがクローズドループ型の製造プロセスに向けて用意するのは、屋外のような過酷な条件も想定した高耐久性のエッジ向けサーバ「HPE Edgeline EL300」や、小さな筐体で仮想化プラットフォームを提供するマイクロサーバ製品「HPE ProLiant MicroServer Gen10 Plus」、そして通信を担う「Aruba Instant On」のアクセスポイントだ。エッジ側にこれらの機器を配備してIoTデータを分析し、製造ラインで生じるIoTデータを取得して分析し、クラウドと連携させる。

IoTデータを分析してクラウドと連携させる IoTデータを分析してクラウドと連携させる

 外食産業向けに射出成形容器を製造するパッケージメーカーCuBE Packaging Solutionsはテイクアウト需要の拡大などを背景に事業を拡大、容器の再利用性を重視する戦略で成長を続ける。製造ラインが従来の2倍に拡大する中で、同社は運用情報を把握して透明性を維持し、タイムリーに情報を把握して既存資産も効果的に維持する必要があった。そこでデータを収集し、予防的なメンテナンス措置が取れる仕組みを構築した。

CuBE Packaging Solutions社長 Len Chopin氏 CuBE Packaging Solutions社長 Len Chopin氏

 「設備への投資が必要になったら、設備が私たちに教えてくれる仕組みを構築したかった」(CuBE Packaging Solutions社長のLen Chopin氏)

 同社の場合、前述の3製品に加え、IoTデータ基盤を強固に管理する目的で、「Nimble Storage」や「HPE Synergy」といったHPEテクノロジーを駆使したインフラを全面的に採用する。さらにPTCが提供するIoTソリューションである「ThingWorx」を利用して製造装置などの稼働状況をダッシュボードで管理している。Aruba製品とRFIDを使って金型などの資産追跡も組み込んでおり、予防保全を前提とした運用を実現しているという。

製造装置の稼働状況などを収集、ポータル画面で一括管理する 製造装置の稼働状況などを収集、ポータル画面で一括管理する

 この例は非常に高度な取り組みだが、これからクローズドループ型製造プロセスを取り入れたい場合、「1つのプロセスに絞ってどんなデバイスで実現できるかを相談するところから始めてほしい。まずはスモールスタートで1製品から試してみることを推奨する。そこからROIの測定方法などの評価方法を含め、HPEが一緒に検討していく」とOderinde氏は説明する。

小売業界のDX、HPEの場合はどうするのか

 MESやFAなど、既に一定のIT投資経験のある製造業の場合と異なり、IT担当者が不在か兼務で人手がなく、デジタル化も十分ではない小規模小売業などの場合、データの洞察を得る機会は作れるのだろうか。

 「New Innovative Digital Business Solution to Grow Your Small Retail Business(小規模な小売業の成長を後押しする、革新的なデジタルビジネスソリューション)」と題したセッションではAruba Instant OnのマーケティングマネジャーであるAditi Pandey氏と中堅・中小企業製品マーケティングのシニアマネジャーであるRobert Checketts氏が小売業界のDXの状況を語った。

Pandey氏(右)とCheketts氏(左) Pandey氏(右)とCheketts氏(左)

 セッション冒頭でPandey氏は「中堅・中小企業の90%が自社の商品やサービスに対する需要の減少を感じている」と市場の状況を指摘した。その結果としてオンラインビジネスに活路を見いだし、新しい販売チャネルを開拓しようと試みる企業が増えているという。

 「HPEはこうした中堅・中小企業の新しい取り組みに対して効率的に最小限の時間と努力で挑戦できるよう支援している」(Pandey氏)

 Checketts氏もまた米国の小売業の多くがオンラインビジネスに着手する一方で、「どうすればオンラインビジネスで成功するか」を模索する状況にあると分析する。だが小規模小売事業者がオンラインサービスを運営する場合、課題となるのがIT基盤をどう整備するかだ。

顧客相手のサービスではダウンタイムは許されず、データセキュリティやパーソナルデータ保護への配慮も必要なため、多くの場合は複雑なITが必要となる。この時、Pandey氏は複雑な投資やIT機材のセットアップが必要なく、迅速にオンラインサービスに向けた環境を月額サブスクリプション費用のみで整備できるマイクロサーバ製品「HPE ProLiant MicroServer Gen10 Plus」とネットワーク製品「Aruba Instant On」、バックアップ&リカバリーシステム製品「HPE RDX Removable Disk System」の組み合わせが有効だとする。

 HPEが勧めるProLiant MicroServer Gen 10 Plusは16TBの内部ストレージを持つ仮想化基盤サーバで、「HPE Integrated Lights Out(iLO)5」が持つ遠隔管理機能やシリコンレベルのセキュリティ機能も利用できる。加えてサーバ管理はSaaS型の運用監視ツールである「InfoSight for servers」を使った予測分析も可能だ。予防保全のアプローチでシステムを停止せずに運用できる仕組みを備え、MicroServerの小さな筐体ながらProLiantが持つエンタープライズ向けの機能を受け継ぐ。これからIT投資を本格化し、デジタルシフトを目指す企業や拠点のIT化を検討する企業にとって良い選択肢の一つとなるだろう。

ProLiant MicroServer Gen 10 Plus ProLiant MicroServer Gen 10 Plus(日本語の製品詳細情報はこちら

 一方のAruba Instant Onは小規模ビジネス向けに2019年10月に国内リリースした製品だ。屋内だけでなく屋外やデスクマウントなどのアクセスポイントを提供してきたが、2020年7月には新たに1930スイッチ群がラインアップに追加され、無線だけでなく有線ネットワークもカバーできるようになった。Aruba Instant Onはスイッチ、無線LANアクセスポイント両方を統合的に管理できる。ファームウェアアップデートやパッチ適用も遠隔から実施できることから、拠点が多数ある小売店のデジタル化の環境としても使える。

 ここまでで、製造業におけるデータ活用の実際、小規模小売事業者のDXと、デジタルサプライチェーン実現に向けてさまざまなフェーズに立つ企業へのHPEの支援内容や技術アプローチを見てきた。データを軸に新たな価値創出を目指すステップの1つとして参考にしてほしい。

オンプレミス環境の集約とコスト削減に効果があるAzure Stack HCI

 小規模オフィス向けのIT環境とは別に、HPEの中堅・中小企業向け製品で忘れてはならないものの1つが、「Windows Server 2019」を生かしたHCI「Azure Stack HCI」だ。

Windows Server標準のハイパーバイザーを生かしてHCIを構築できる。WSL(Windows Subsystem for Linux)を使えばLinuxの仮想マシンもHyper-V環境に移植できるため、さまざまな環境が混在していても集約しやすい。Azure Stack HCIはさまざまなベンダーから製品が供給される点が特徴だが、中でもHPEはオールフラッシュアレイ製品やパーシステンスメモリを搭載したモデルなど、豊富なAzure Stack HCIのラインアップを提供するが、中でもコストパフォーマンスに優れたAMD EPYC搭載サーバ製品は注目したい。

HPEが提供するAzure Stack HCIのラインアップ HPEが提供するAzure Stack HCIのラインアップ

 なお「Azure Stack HCI With HPE Servers Combine to Form Powerful Hybrid Solutions」と題したセッション(英語のみ)に登場したMicrosoftのシニアプログラムマネジャーであるMatt McSpirit氏によると、MicrosoftとAMDとHPEが期間限定でWindows Server 2019にとって最も経済的でパワフルなシングルソケット、デュアルソケットのHPE ProLiantプラットフォームを提供していくことを計画しているという。具体的には、AMD EPYC搭載のHCI製品「DL325」または「DL385」のGen10/Gen10 Plusを購入した場合に、HPEから提供されるOEM版のWindows Server 2019のライセンスにこのプログラムは適用される予定だという。プログラムを活用すれば、サーバOSのライセンスコストを半分に削減できるケースもあるとされる。プログラムは2020年8月から2021年6月末までの予定だ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.


提供:日本ヒューレット・パッカード株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2020年8月21日

関連記事

パンデミックを前にDXにつまずく中堅・中小企業を支援すべく、HPEは新しいサブスクリプションモデルなどによる多数の支援策を提示する。止められない業務、医療の現場をHPEはどのように支えたか。