旭化成がグループ50社の経費精算システム刷新 対面レクチャーなしでどう展開したかコロナで変わるSaaSツール定着法

旭化成が経費精算業務の共通化を目指した大規模なSaaS導入を短期間で成功させた。コロナ禍で移動が制限される中で2万8千人にSaaSを定着させ、従業員の操作ミスを劇的に減らしたという。

» 2022年01月18日 10時00分 公開
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グループ50社2万8千人の経費精算業務プロセスを統合

 グローバルで4万4000人を超える従業員を抱える大手総合化学メーカーの旭化成が、旅費、経費精算業務にSaaS「SAP Concur」(Concur)を採用した。新システムの従業員への早期展開と定着、SaaSのアップデートサイクルに対応したサポート体制を整備する目的で、「WalkMe」を同時に導入して成果を挙げている。

旭化成の吹田一人氏(人事部人事給与サポート室 室長) 旭化成の吹田一人氏(人事部人事給与サポート室 室長)

 プロジェクトの狙いはグループ会社ごとにバラバラだった経費精算業務プロセスを整理統合し、電子帳簿保存法(電帳法)に対応するための領収書のペーパーレス化などだった。導入したのはConcurのうち、経費精算の「Concur Expense」、旅費精算の「Concur Travel」、事前申請承認の「Concur Request」だ。旅費経費システム導入プロジェクトのリーダーを務めた旭化成の吹田一人氏(人事部人事給与サポート室 室長)がその狙いの詳細を語った。

 吹田氏は20年以上の人事業務経験があり人事情報システムの入れ替えの経験もある、人事業務プロセスに精通した人物だ。今回のConcur導入は国内のグループ企業50社、従業員約2万8千人を対象とした。グループ企業には住宅メーカーやヘルスケアなどの事業体もあり、経費の精算ルールも事業体ごとに異なっていた。今回のプロジェクトは単なるツール移行だけではなく、各社の業務プロセスをConcurにまとめるという大掛かりなものだ。2020年1月〜2021年3月にかけて導入を進め、2021年4月1日から本稼働を実現した。「プロジェクト期間としては長く見えるが、それは導入規模が大きかったことと、電帳法対応などを含めて調整部分が多かったため。導入そのものに障壁はなかった」(吹田氏)

SaaSを使わせる、しかも対面レクチャーなしで?

 ところが本プロジェクトを開始した直後にコロナ禍が始まり、同社もテレワークの利用が拡大した。この時点では経費精算システムをConcurに統合することだけが決まっている状態で新しいシステムの開発を進めていった。だが吹田氏は本番稼働後の従業員への浸透と定着に不安を感じるようになった。

 「今までであれば、新システムの稼働時に部門のメンバーが全国の拠点に出向いて導入説明会を開き、情報周知を進めていた。だが遠方への移動が制限されるコロナ禍においては、集合研修や対面でのトレーニングが一切できない。経費精算は従業員全員に関わる重要な業務であり、しかも今回はグループ50社への一斉導入という大規模なプロジェクト。このままでは新システムの安定稼働が危ぶまれた。教育と運用管理のデジタル化は急務だった」(吹田氏)

 何か良い対策がないかと模索していたところ、プロジェクトが開始して半年ほどたった2020年7月に吹田氏はWalkMeの存在を知る。その機能を調べ「これならいけるのではないか」と導入を決めたのは9月のことだった。

 「WalkMeを使い、ユーザーがシステムを使うときにナビゲーションを示すことで問い合わせを減らし、早期の安定稼働が図れると考えた。同時に、申請者が正しい操作をすることで経理部門のチェック作業の負担削減も見込んだ」(吹田氏)

SaaSならではのUIの課題と定着の問題

 WalkMeはさまざまなWebアプリケーションの早期定着化を推進するためのツールだ。Web画面に任意のナビゲーションや説明などを埋め込めるため、順を追って操作をガイドしたり仕様が変わった場合のアナウンス画面を表示したりできる。UIの操作状況を管理者が分析できる機能もあり、利用状況の把握やナビゲーションの設計改善が可能だ。

 Webのフロントエンドであればどこにでも適用できるが、機能やUIのアップデート頻度が高いSaaSとの組み合わせに近年特に注目が集まっている。標準画面からのカスタマイズを都度発注するのが難しいケースやアップデートに合わせたマニュアルの更新、説明会の開催などが難しいケースでも、自前でWebナビゲーションを更新して周知できる。説明会やマニュアル配布だけでは十分に周知できない情報も、操作UIに掲出すれば確実に伝達できるためだ。ITリテラシーにばらつきがある従業員にSaaSなどの業務システムを利用させ、定着させる際に有効なことから、WalkMeは自社製品を「デジタルアダプション・プラットフォーム」と呼ぶ。

 SaaSでよくあるのが、突然UIが変わって利用者が混乱する問題だ。機能アップデートサイクルが速いこと自体は望ましいが「急に画面が変わって分からない」といった問い合わせがシステム担当者に殺到するようでは業務が止まってしまう。この点も、画面に情報を付加することで個別の問い合わせが不要になるように改善できる。

 吹田氏が主導したWalkMeの導入は、2020年12月〜2021年1月で完了した。アビームコンサルティングが支援を行い、約2カ月というスピード導入に成功し、経費システムの本番稼働前のテスト段階でWalkMeを実装できたという。「導入に時間がかからないこともWalkMeを選んだ理由の一つ」と吹田氏は話す。

 並行して動画による操作ガイドなども制作し、現地で人を集める形での勉強会を全く実施せずに予定通り2021年4月1日に本番稼働させた。

WalkMe Digital Adoption Platform(出典:WalkMeの資料) WalkMe Digital Adoption Platform(出典:WalkMeの資料)

SaaSにありがちな「混乱の原因」をつぶして業務効率化につなぐ

 同社が経費精算システムをConcurに移行するに当たって、WalkMeで実現した主なユーザー支援機能は次の通りだ。

 まずガイダンス機能を追加した。通常の操作時にポップアップで機能を説明するのはもちろん、Concurならではの要素を盛り込んでいる。例えば経費精算の申請後に承認者を追加するといったイレギュラーな操作が横行していたが、Concurではユーザーに事前に注意喚起を示すことが難しかった。そこでWalkMeのガイダンスを出して、追加の承認者を登録するまで申請書を提出できないようにした。

 不要なボタンへのマスクも加えた。Concurの標準画面には同社の業務には不要なボタンも表示されてしまう。ユーザーがそれを誤って操作しないように、WalkMeの機能を使ってグレーアウトしたり上に白い画像をかぶせて隠したりした。押せないボタンは「なぜ使えないのか」の説明をポップアップ表示するなど、細かい設定を施していった。

 「一般論として、グローバルで利用されることを想定したSaaSはありとあらゆる機能を設定できてしまう『設定のお化け』のようなところがある。多機能である半面、個別企業では使わないボタンも表示されてしまい、利用者が混乱する要因となっていた。そうしたユーザーが迷う表示類をWalkMeで隠せば迷わずに使える」(吹田氏)

WalkMe設定内容例(動画)*(出典:WalkMeのYouTube)

 2022年施行の改正電帳法への対応に関わる業務フローには、Concurの画面に目立つ形で注意喚起のポップアップを追加した。紙の領収書は全て電子化してアップロードし、その際にタイムスタンプを付加する必要がある。これは、ログイン時に全体アナウンスを入れたり誤操作が多い画面で個別に注意喚起したりするなど、特に丁寧に周知を進めている。

 「当社は2021年4月から改正電帳法に対応した業務プロセスに移行している。従業員からすれば、システムが変わると同時に業務フローも変わり、負担が大きかった。そのため4月の新システム稼働時には、この業務の入力エラーが頻発した。そこでWalkMeを使ってシステムへのログイン時に黄色の目立つ画面を出し、72時間以内の資料アップロードや領収書への自署などの新しい業務フローについて注意喚起した。画面でのちょっとした注意喚起だけでもエラーは大幅に減った。実はConcurも標準で『お知らせ』画面を持つが、それよりも目立たせられるので効果があったと思っている」(吹田氏)

 最後が自動操作機能だ。Concurでは、例えば領収書を間違えて添付した場合はいったんダミーのレポートを作成して内容を移動する処理が必要だが、手順がやや複雑で覚え切れない。その手順をWalkMeでガイドすることで誰でも半自動的に操作を進められる仕掛けを用意した。

 「私は、これがWalkMeのメインの機能だと思っている。経理の事務方にとっては日常業務でも、他部門の従業員にとってはたまにしかしない業務はどうしても手順を忘れてしまう。そういう業務に対してこの機能は非常に有効だ。通常の業務手順に対してもこうしたガイドがあることで、ITの習熟度が低い従業員へのサポートができていると感じる」(吹田氏)

WalkMe差戻分析結果による効果分析*(出典:WalkMeの資料) WalkMe差戻分析結果による効果分析*(出典:旭化成の資料)

操作ミスが28%から3%に大幅減少、電帳法対応にも効果

 吹田氏らはWalkMe導入後の効果測定も実施した。それによるとシステム利用者全体の90.4%(1万5346人)がWalkMeを利用しているという非常に高い結果が出た。

 次に、前述した電帳法対応に不備があった場合の経理部門からの差し戻しは、WalkMeのポップアップ画面導入前が28%あったのに対し、導入後は3%に減少した。承認者の未設定は42%から3%に減少した。ユーザーが気を付けるようになったことが顕著に表れている。

 「当初の狙いとしていた、画面にナビゲーションが出せること、早期の安定稼働、経理部門の負担低減などは全て実現できて満足している」(吹田氏)

 一方、課題もある。Concurがバージョンアップしてインタフェースが変更された場合はWalkMeの処理を追従させなければいけない。そのための体制を整備する必要があると吹田氏は話す。Concurはモバイルの利用者も多いので、WalkMeのモバイル対応にも期待している。

 「今回のWalkMeの短期導入は外部の支援があって実現できた。今後は社内のノウハウも蓄積していきたい」(吹田氏)

 最後に吹田氏は、システムの早期定着を考える企業に対して次のように語った。

 「当社はConcur導入の当初からWalkMeが稼働しており、従業員にとってはすでに切り離せない存在になっている。SaaSの利用にはメリットが多いが、幅広いユーザーへの対応には弱点もある。WalkMeはそこの『かゆいところに手が届く』システム。短期で導入できるのも利点だ。多くの企業の助けになるのではないか」

 旭化成のWalkMe活用は、業務現場が主導して進めるDXの好例として他社も参考にできるだろう。

*Concur Expenseの画面は2021年12月時点のものです。Concur ExpenseのUIやデザイン等は今後変更となる場合がありますのでご了承ください。


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提供:WalkMe株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2022年2月17日

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