kintoneで“何をどこまで”やるべきか? ヘビーユーザーが明かす「実際のところ」効果を最大限に引き出すツール活用のコツは

ノーコード/ローコードツールとして広く普及するkintoneは、その利便性故にSaaS連携など「どこまで利用範囲を拡大すべきか」の判断が難しいという側面もある。同ツールのヘビーユーザーがkintoneの実践例を交えてうまい使い方を解説した。

» 2022年12月14日 10時00分 公開
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 2022年11月10〜11日、サイボウズが主催するイベント「Cybozu Days 2022」が開催された。同イベントではジョイゾーの大竹 遼氏が登壇し、「kintoneでどこまで内製化できる? ヘビーユーザーに学ぶ他SaaSとのすみわけ・連携」というテーマで講演した。

 大竹氏は講演で、サイボウズのクラウドサービス型業務システム「kintone」について、その活用法やSaaS(Software as a Service)との連携などをヘビーユーザーならではの視点で語った。本稿はその講演内容をレポートする。

ヘビーユーザーが語る「kintone活用法」とは?

 ジョイゾーはサイボウズ製品に関するコンサルティングとシステム開発を手掛けるサイボウズのパートナー企業だ。kintoneを中心としたシステム開発やサービスを提供しており、900社以上の企業システムを開発した実績がある。なお同社は、kintoneが正式にリリースされる1カ月前の2011年10月からこれを利用してきた。

 ジョイゾーの主力サービスである「システム39」は、定額39万円(税別)で顧客の業務課題を解決するシステムをkintoneで作成する。同社はその他にも、kintoneと連携させるプラグインや人材育成プログラムなどを提供している。

ジョイゾーの大竹 遼氏

 kintoneの標準機能であり最大の特徴は、自社の業務に合わせてシステムやアプリをノーコードで開発できる点だ。従来のシステムやアプリの開発は、システムインテグレーター(SIer)や社内エンジニアに依頼するのが一般的だった。機能の追加や変更が必要になるとそのたびに発注作業が発生して費用や工数もかさむ。

 「それに比べてkintoneはドラッグ&ドロップで直感的にアプリを開発できるため、技術的な知識が不要で誰でも簡単に使えるのが強みだ」と大竹氏は話す。

kintoneはドラッグ&ドロップでシステムを開発できる(出典:ジョイゾーの講演資料)

 ジョイゾーはkintoneをどのように活用しているのか。大竹氏は「案件管理やプラグイン管理、日報、週報、ブログ管理などさまざまな用途で使用している。システム39の案件管理では、いつ、どの顧客から、どのような問い合わせを受け、どのような対応をしたかを全てkintoneで管理している」と語る。

 システム39の案件管理に必要な顧客マスターや見積もり管理に連携させてデータを転記する「アプリアクション」および情報を付加して分かりやすく管理する「ラベル」機能などはkintoneの標準機能を利用した。

 入力フィールドをタブごとに整理する「タブ表示」や条件に応じて受注日を必須入力に設定する「条件付き入力制御」などは、kintoneの標準機能では実現できないため、プラグインやカスタマイズを利用して自社で実装した。

 ジョイゾーはその他、Webサイトの問い合わせフォームを作成する「フォームブリッジ」やリマインドメールを送信する「kMailer」などのSaaSとkintoneを連携させて、案件管理システムをより効率化している。「案件管理システムは標準機能に加えて、プラグインやカスタマイズ、連携サービスなど豊富な機能を備える“全部盛りのアプリ”だ」(大竹氏)

SaaS連携で広がる利便性 Garoon×kintoneでできること

 自社の業務に合わせてアプリを柔軟に開発できるのがkintoneの強みだが、実用に足るアプリとして作り込むのには時間がかかるのではないか。大竹氏はこの疑問に対し、「いきなり全てを作ったわけではない」と話す。「標準機能で開発してまずは使ってみる。使いにくいところにはプラグインを入れたり、他のSaaSを連携させたりして少しずつ拡張するのがポイントだ」(大竹氏)

 ジョイゾーは案件管理以外にもkintoneを利用しており、以下のようなSaaSと連携させている。大竹氏は「kintoneは何でもできるが、やはり『餅は餅屋』で適材適所のサービスを使った方がいいケースもある」と指摘する。

  • スケジュール管理やポータル:「Garoon」
  • 電子メール管理:「メールワイズ」
  • チャットコミュニケーション:「LINE WORKS」「Slack」
  • 社内の打ち合せや会話ベースのコミュニケーション:「oVice」
  • ファイル管理やテキスト管理:「Dropbox」「Dropbox Paper」
  • タスク管理や図面管理:「Backlog」「Cacoo」
  • 経費管理や勤怠管理:「freee会計」「freee人事労務」

 kintoneとのSaaS連携についてGaroonを例に見てみよう。Garoonは主に、中堅・大規模組織で利用されるグループウェアだ。従業員数30人弱のジョイゾーが導入するメリットはあるのだろうか。大竹氏は「最大の決め手はkintoneと連携できることだ」とした上で「kintoneや『サイボウズ Office』『Google カレンダー』などのスケジュール管理ツールと比較した結果、当社にはGaroonが最もフィットすると判断した」と語る。

Garoonと他のスケジュール管理ツールの機能比較。kintoneと比較した場合、月表示と週表示の切り替えや組織単位での表示が可能な点などが評価ポイントだ(出典:ジョイゾーの講演資料)

 Garoonをkintoneの案件管理とひも付ければ、スケジュール管理画面で打ち合わせ時の情報をスピーディーに閲覧できるようになる。Garoonとkintoneの連携によって、全従業員共通のポータルや個人ポータルも作成可能だ。

 ジョイゾーはLINE WORKSやSlackなどの利用に加え、Garoonの掲示板機能も利用している。大竹氏はこの使い分けについて「kintoneやLINE WORKSは通常業務で頻繁に利用するが、通知が多いので見逃しが発生することもある。Garoonはスケジュール以外の通知はほとんどないため、これに通知が来ると『会社から連絡が届いた』とすぐに判断できるという点で便利だ」と語る。

 ジョイゾー以外でもこのようにkintoneとSaaSを連携させた事例は多く存在する。社会保険労務士事務所の秋田国際人事総研は、kintoneとHCMの「SmartHR」、freeeのシステムを連携させた。行政書士法人のINQはkintoneとSlack、コミュニケーションプラットフォームの「Calendly」などの連携を今後の展望として描いている。星野リゾートが運営する日本旅館である星のや東京は、業務管理のためにkintoneと「Google スプレッドシート」をうまく活用している。

 「これらの事例からも分かる通り、システム開発会社やプログラミングの知識を持つ従業員を多数抱えている企業以外でも、さまざまな連携パターンでkintoneは利用されている。現場主導で手軽にアプリを開発したりシステムを変更したりできるのが評価のポイントだろう」(大竹氏)

最初から100%を期待しない 全てをkintoneでやろうとしない

 ここまでkintone単体の機能やSaaS連携でのメリットを見てきたが、kintoneを使わない方がいい場面もあるのだろうか。

 大竹氏は「顧客から相談を受けたとき『これはkintoneの案件ではない』と感じることもある」と明かす。同氏によれば、システムの要件が機能ベースでしっかりと決まっている場合は、kintoneの柔軟性を生かせないため、フルスクラッチで開発した方が効率的だ。開発後に変更しないシステムやデータ入力後に変更しないデータベースもkintoneで作るメリットが少なくなってしまうという。

 データベースは処理したデータを格納して初めて利用できるようになる。「kintoneにデータを入れたときが“スタート地点”だ。kintoneに顧客データを入れた後、チームで情報を追加・加工したり、データベース自体を改修したりできる」と大竹氏は指摘する。

 「チームで情報を追加して、より良いものを作っていくことをジョイゾーでは『育てる』と呼んでいる。先ほど紹介した当社の案件管理も、プラグインを入れたりSaaSと連携させたりして『育てた』結果だ。利用しながら少しずつ変更できるのがkintoneの強みだと思う」(大竹氏)

他SaaSとの連携の在り方(出典:ジョイゾーの講演資料)

 大竹氏は「ヘビーユーザーとしてあえて言いたいのは最初から100%を期待しないこと。全てをkintoneでやろうとしないのが最大のポイントだ」と述べる。kintoneを利用するのは業務効率化のためであり、「業務のkintone化」が目的ではない。手段と目的を正しく認識することが必要だ。

 他のSaaSとの連携も含めてkintoneでできることと、他サービスを利用した方がよいことは常に一定ではなく、環境の変化によって変わるということも忘れてはいけない。

 「『DX』というキーワードが登場して以来、業務を改善して新たなビジネスモデルを作る意識が高まっている。組織の在り方が変更されたり、新たな業務が生まれたりしても、システムは柔軟かつ迅速に対応しなければならない。しかし、まずは難しく考えずやれるところからやってみて、困ったら当社のようなプロにアドバイスを求めてほしい」(大竹氏)

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