サプライチェーンは回復したのに「50%引きで販売」 アンダーアーマーの利益が減少する理由Supply Chain Dive

生産効率が改善し、輸送や配送時間が短縮されるなど、サプライチェーンはコロナ禍前に戻りつつある。しかし、利益から見ると“通常運転”への復帰は必ずしも福音とは言えない面もあるようだ。その理由は。

» 2023年03月27日 15時45分 公開
[Ben UnglesbeeSupply Chain Dive]

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Supply Chain Dive

 コロナ禍によるサプライチェーンの混乱は解消に向かっている。生産や輸送にかかる時間がコロナ禍到来前の水準に戻った企業もある。

なぜ「50%引き販売」に追い込まれるのか?

 しかし、企業の利益から見ると、サプライチェーンの回復は良いことばかりとは言えないようだ。生産効率が上昇してコストが削減されたにもかかわらず、大幅値引きに踏み切るブランドもある。なぜなのか。

 米国のスポーツウェアメーカーUnder Armourは、2022年のホリデーシーズンを含む期間の在庫が前年同期比50%増の12億ドル相当に達し、「従来の予想を上回った」と報告した。同社の幹部は「過剰在庫を処理する体制は整っている」と述べた。

 Under Armourのコリン・ブラウン氏(COO《最高執行責任者》兼臨時CEO《最高経営責任者》は2023年2月の第3週、アナリストに対して次のように主張した(注1)。

 「当社の在庫は、制約の多い戦略とサプライチェーンの混乱によって2021年度はかなり減少した。在庫が今回、あるいは今後数四半期にわたって増加するうちの大部分は、60億ドル近いブランドとして適正な水準に戻るだけだ」

予想を上回る大幅な減益の理由は?

 ブラウン氏は、2022年9月1日〜12月31日の四半期において「当社のサプライチェーン全体が改善している。パートナー工場はパンデミック前の生産効率に戻りつつあり、海上輸送や配送時間が短縮されたことを確認した」と述べた。

 Under Armourのサプライチェーンにおける効率化とコスト削減は、需要の鈍化とアパレル業界全体の在庫水準の高さが課題となる四半期において、明るい話題となった。ただし、経営陣は決算説明会で「肥大化」「停滞」という表現を使った。

 海上輸送の改善と航空輸送の削減による輸送コストの低減は(注2)、同社の売上総利益率に0.4%の好影響を与えた。しかし、利益は6.5%減少したため落ち込みの一部が相殺されたにすぎない。

 利益の落ち込みの大きさは同社の予想を上回るものだった。デイブ・バーグマンCFO(最高財務責任者)は、「(利益の落ち込みが予想を上回ったのは)消費者向け直販事業(売上高は前年比1%減)で在庫管理に努めた結果、予定外の値下げやプロモーションを実施したことが原因だ」と述べた。同四半期の全社売上高は3%増の16億ドルだった。

アパレル業界の値引きは今後も続く

 バーグマン氏は「アパレル業界は変化が少ない在庫の山を処理するため、今後さらに値引きが進む」と示唆した。「アパレル業界全体が在庫増加の影響を受けていると思われる。より多くのプロモーション活動が実施されており、収益の伸びに多少影響をもたらすだろう」(バーグマン氏)

 このような背景から、バーグマン氏は「当社はオフシーズンの在庫を整理したり大幅に値引きしたりするのではなく、2024年に備えて整理、保管するためにかなりの量を確保した」と述べた。「私たちはそうすることができる状況にあり、それに対して抵抗はない。古い製品在庫は持っていない」(バーグマン氏)

 Under Armourの経営陣は、同社の会計年度最終四半期である今期まで、在庫水準が昨年比50%で推移すると予想している。ブラウン氏は、会計年度末における在庫の増加がピークとなり、「その後、次の四半期は増加しつつも段階的に落ち着いていくだろう」と述べた。

 スイスの投資銀行Credit Suisseのマイケル・ビネッティ氏(アナリスト)はメモの中で「Under Armourは2023年、他企業よりも積極的に注文数を減らしていた」と指摘した。「在庫が前年同期比50%増であっても、在庫として抱える商品数が何日分の売上額に相当するかを示す『手持ち在庫日数』は、今期は140日となる。これはパンデミック前の2017〜2019年の同社の3月における平均日数と同じ水準だ」(ビネッティ氏)

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