Nikeの在庫問題解消への取り組みが「驚異的な進歩」と評価された。D2Cとデジタルの売上構成比が高いことも利益増の理由のようだ。
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Adidasは直近の決算報告で、売上高の減少と惨憺たる年間報告を発表した(注1)。一方、Nikeは2023年3月21日に14%の増収を記録し(注2)、四半期の売上高は124億ドルに達した。
NikeにおけるD2C(Direct to Consumer)の売上は17%増加した。デジタル売上の20%増加を受けたものと見られ、卸売も12%増加した。NikeでCFO(最高財務責任者)を務めるマット・フレンド氏はアナリストとの電話会議で、「卸売の成長は今後数四半期にわたって鈍化する見込みだが、Nikeの小売業者は過剰在庫を処理できるだろう」と述べた。
ここ数四半期でNikeを苦しめていた過剰在庫だが、現在は16%増の89億ドルの利益を上げ、フレンド氏は「驚異的な進歩」と評価した。売上総利益率は330bp(ベーシスポイント)の打撃を受けたが、これは主に過剰在庫を解消するためのプロモーションの増加によるものだ。
Nikeの売上は順調に見えるが、2桁の成長を遂げられたのは小売業者の在庫問題に一部起因する。トム・ニキッチ氏率いる投資会社Wedbush Securitiesのアナリストは電子メールで「過去2回の四半期は、営業収益の成長は好調だったが(第2四半期+27%、第3四半期+19%)、その理由の多くは過剰在庫の一掃によるものだ」とコメントしている。
Nikeの今後の成長予測は、横ばいから1桁台前半とかなり小さくなっている。また、Nikeは通期での在庫削減を続けるため、売上総利益率は250bp(前回のガイダンスの下限値)も低下するとみられる。販売管理費も年間10%増加する見込みで、投資銀行のBMO Capital Marketsは「NikeのD2C戦略における潜在的な警告サインだ」と指摘している。
シメオン・シーゲル氏などのアナリストは電子メールで「営業経費の増加は単にD2Cの成長に伴う構造的なコストだと考えている。そのため、D2Cにより利益額が減少することはなくとも、利益率を圧迫する可能性がある」としている。
一方、Nikeの経営陣はD2Cとデジタルの売上構成比が高いことが小売業に利益をもたらすと主張する。
「デジタルビジネスの利益貢献は卸売よりも高いとされ、実際に2019年度から2022年度にかけて売上総利益率の拡大を後押しした。デジタルビジネスを成長させる上で追い風になるだけでなく、実はデジタルチャネルの収益性を改善する機会もあると考えられる」(フレンド氏)
Nikeの経営層が楽観的な見方をする理由は他にもある。同社の中国事業は為替変動の影響を除けば低調な四半期が続いていたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する政策が主因となり成長に転じた(注3)。Nikeにとって在庫は依然として問題だが、在庫水準は前四半期の43%増に対し(注4)、今四半期は16%増にとどまっている。
「在庫水準が急速に正常化していることやブランド人気が高いこと、中国がコロナ禍から回復傾向にあること、そして2024年度に向けて複数の粗利益率の追い風があること(運賃や物流、チャネルミックス、中国の回復、値下げの正常化)が強気の理由だろう」とニキッチ氏は述べている。
(注1)Adidas projects first annual loss in 3 decades as it shakes up management team(Retail Dive)
(注2)NIKE,INC.REPORTS FISCAL 2023 THIRD QUARTER RESULTS(NIKE)
(注3)Nike’s Q4 sales fall slightly after 20% decline in China(Retail Dive)
(注4)Nike CEO: ‘The inventory peak is behind us’(Retail Dive)
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