データドリブン経営には“組織改革”が欠かせない 三井住友海上が経験した泥臭い道のりとはデータドリブンのための5つの「D」

ビジネスを成長させるために、データに基づいた経営スタイル「データドリブン経営」に注目が集まるが、実際に取り組みを推進して全社にデータ活用を定着させるのは簡単ではない。三井住友海上が経験した泥臭い変革の中身が分かった。

» 2023年08月24日 10時00分 公開
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 ビジネス環境の変化が激しくなっている昨今、データの客観的根拠に基づいてビジネスを推進する「データドリブン経営」が以前にも増して重要になっている。

 だが、データを集めて、データ分析ツールを導入すればデータドリブン経営が実現するわけではない。経営層から現場までが一体となり、全社的にデータ活用を進める新たなカルチャーが必要だ。このようなカルチャーを普及、定着させる秘訣(ひけつ)とは何か。

 三井住友海上火災保険(以下、三井住友海上)の木田浩理氏(データサイエンティスト CXデザイン部長 兼 CMO《チーフマーケティングオフィサー》)と、ウイングアーク1stの大澤重雄氏(執行役員 Data Empowerment 事業部長)の対談からその秘訣を探る。

データ活用組織への変革、始めの一歩は?

――組織変革の取り組みについて教えてください。

木田氏 データサイエンティストとして、これまで複数の企業でデータカルチャーを作ることにチャレンジしました。2018年ごろ、三井住友海上がデジタルトランスフォーメーション(DX)推進の一環でデータサイエンスチームを作ることを打ち出し、そのタイミングで入社しました。

 当時は私しかデータサイエンティストがいませんでした。半年かけてメンバーを4〜5人に増やし、その間に基本のデータサイエンティスト育成コースと、アクチュアリーを対象とした高レベルな専門人財育成コースの2つの研修制度を整えました。

三井住友海上の木田浩理氏

 会社全体として人事制度の変革にも取り組み、人事担当者と一緒にデータサイエンティストやデータ分析者と事業部門の担当者、意思決定者の橋渡しをするビジネストランスレーターの資格制度も作りました。さらにこの2年間で、マーケティングの知識を活用しお客さま視点でビジネスを改善する「CX(カスタマーエクスペリエンス)人財」などの資格も作りました。

 現時点でデータサイエンティストの基礎的な講座を修了した従業員は1000人以上になり、CX人財の資格保有者は約200人です。新卒でのデータサイエンティスト採用にも取り組んでいます。

――データサイエンティストだけを育成しているわけではないのですね。

木田氏 データはあくまで意思決定を支える要素の一つです。データ分析の手法を学ぶことに特化することも可能ですが、ビジネストランスレーターのようにマーケティングやビジネスの視点を兼ね備えた総合的なデータ活用人財の育成に注力しています。

 損害保険会社はこれまで代理店向けの営業活動が中心であり、弊社もその先の顧客へのマーケティングには注力していませんでした。データ分析とマーケティングを学び、代理店の先にいる顧客を理解することがビジネス変革につながります。

大澤氏 現場担当者がデータ分析スキルを学ぶことや、データサイエンティストがビジネス知識、マーケティングを学ぶことは大変重要です。データを理解し「いかにビジネスに活用するか」という発想を得ることで、初めて社内外のデータが意味を持ち、ビジネス判断や変革に生かせるようになります。弊社もお客様のDX推進状況に合わせ、さまざまな支援をしてまいりましたが、こうした人財育成環境を用意することは、データ活用の基礎を作るだけでなく、そのカルチャーの醸成をすることを視野に入れると理想的ですね。

組織は一人では変えられない 肝となるのは“巻き込み力”

――組織を変革する上でどのようなことを意識したのでしょうか。

木田氏 組織変革で意識したことは「キーパーソンの重要性」です。データ活用やマーケティングに賛同し、率先して研修を受講してくれる部長レベルの人たちが少なからずいたので、この人たちをいかに味方に付けるかを考えました。実際に、部長レベルの人たちに会議などでマーケティングやデータ活用を促すことで、組織的な変革につながりました。影響力の大きい人を見極めて関係を築き、変革に巻き込むことがカルチャーの構築には欠かせません。

 人事と協力して制度を変革したり、メディアなどを通して社長が「5000人の従業員をマーケティング人財にする」のようなメッセージを発信したりしたことも重要です。組織トップの発言は従業員のモチベーションにつながり、一部の変革に消極的な層にも「データやマーケティング活用は不可欠」という動機になります。これが会社全体に新たなカルチャーを浸透させるきっかけになります。

ウイングアーク1stの大澤重雄氏

大澤氏 キーパーソンの存在はもちろん、こうした変革の必要性を経営トップがはっきりと認識し、「データで何がしたいのか」が定まっていたのが三井住友海上様の素晴らしいところです。データカルチャーの普及や促進には経営トップの理解とトップダウンの号令が不可欠です。

木田氏 社長の舩曵 真一郎の理解もあり、特に社長は新たな意見も良いと思えばすぐに経営に反映し、行動に移すのでデータカルチャーの確立と取り組みが一気に進みました。

データ分析のスキルだけがデータサイエンティストの条件ではない

――三井住友海上が重視しているデータ活用人財や考え方についてもう少し詳しく教えてください。

木田氏 データ活用人財はITとビジネスのどちらも知っておくべきだと考えています。なぜなら私が推奨しているデータ分析の考え方「5Dフレームワーク」ではどちらの知識も必要だからです。

 5Dフレームワークとは、データ分析は5つの「D」で構成されているという考え方です。まず「Demand」(要望・要件)で要件や要望を聞き、課題を明確にします。次に「Design」(デザイン)で、課題を解決するために必要な工数や分析の流れ、どのようなデータを使うのか見積もります。それらを基に「Data」(データ)を集めて加工し、「Develop」(分析)します。分析した結果を現場に「Deploy」(展開)し、意思決定プロセスを変革します。

データ分析に必要な5つのステップ「5Dフレームワーク」(出典:三井住友海上提供資料)

大澤氏 このフレームワークには共感です。「分析できるデータがありません」という企業がよくありますが、データの有無の前に「Demand」(要望・要件)が重要です。課題を引き出す能力がデータサイエンティストに最も求められるかもしれませんね。

 さらに言えば、要望・要件を整理し、データウェアハウスやデータレイク、データ分析ツールなどをデータ分析基盤として導入・構築したとしても、データ活用が一気に進むわけではありません。「IT部門がツールを現場に提供したが全く使われなかった」という話も聞きます。理由はさまざまですが、「IT部門が提供した環境に現場が欲しいデータがない」というのが大きな要因でしょう。このギャップはIT部門と現場の課題を引き出せない相互理解の不足から発生します。

 ウイングアーク1stはこうしたギャップを埋めるために、データカルチャーの構築から伴走支援し、データ活用を成功に導くためのコンテンツ・ナレッジやデータ活用を進めるユーザー同士のコミュニケーションの場も提供します。また、ユーザーが欲しいデータを欲しいときにいつでも活用できるツールとして、クラウドデータマートの(注1)「Dr.Sum」を提供しています。

Dr.Sumの概要(出典:ウイングアーク1st提供資料)

(注1)データマートとは、データレイクやデータウェアハウスなどに入れられた大量のデータの管理負担を軽減し、目的に応じたデータを迅速に取り出せるようにするための分析基盤の一つ

 ユーザーが必要なデータは、「システムに蓄積されたデータ」だけではありません。現場でローカルに保存された「Microsoft Excel」のデータ、紙に書かれたアナログデータといった暗黙知を、いかにデータ分析に活用するかが重要です。現場の課題を「Demand」として引き出し、暗黙知を取り込む真のデータ活用を弊社は支援します。

課題解決型セールスパーソンの登場がデータカルチャーの構築の成果

――マーケティングやCXを含めたデータカルチャーを醸成したことで、どのような成果が得られたのでしょうか。

木田氏 課題解決型のセールスパーソンを育成できたのは大きな成果です。彼らは集客に困っている代理店にヒアリングし、マーケティングとデータ活用のスキルを生かしてWebサイトのUI/UX改善をはじめとした具体的な解決策を自ら立案し提案します。セールスパーソンは単なるご用聞きではなく、顧客の課題を引き出すコンサルティング人財であるべきだと思います。

大澤氏 こうした人財が育っているのはデータ活用のための技術的な仕組みが十分に整っている点が大きいでしょうか。

木田氏 三井住友海上はいかなるレベルのデータサイエンティストもデータ活用に取り組めるように、高度な分析環境や、「Dr.Sum」や「Tableau」のようなツールを使いたいと思ったらすぐにライセンスを支給できる体制があります。要望に合わせてタイムリーにツールを提供できれば現場のモチベーションも向上します。レベル別や要望別にメニューを用意し、ユースケースも提供しています。

――データカルチャーの構築を目指す企業にメッセージをお願いします。

木田氏 データカルチャーの構築は泥臭いことばかりです。DXの「D」は泥臭いの「D」だと思っています。組織内でキーパーソンを見つけ、後は覚悟を持って突破するだけです。道のりは長いですが、諦めないことが重要です。

大澤氏 ツールや仕組みの構築には投資が必須なので、組織のトップの理解が必要です。しかし、トップの理解があってもボトムアップで現場のデータカルチャーを推進する人間がいなければ変革はうまくいきません。

 データ活用は難しいですが、成功すれば会社のカルチャーを変革できるので、多くの企業にチャレンジしてほしいですね。ウイングアーク1stはそのためのサポートを今後も提供していきます。

――本日は興味深いお話をありがとうございました。

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