NetSuiteに複数の機能が追加されると発表された。AIを活用した新機能はどのように企業課題を解決するのだろうか。
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Oracleは2023年10月16〜19日の4日間にわたり、同社の年次イベント「Oracle SuiteWorld 2023」を米国ラスベガスで開催している。
2023年10月17日(現地時間)の基調講演ではOracle NetSuiteのエヴァン・ゴールドバーグ氏(エグゼクティブバイスプレジデント)が登壇し、「Oracle NetSuite」(以下、NetSuite)の新機能を発表した。「ChatGPT」の登場から生成AI(人工知能)の活用に注目が集まる中、同社も多くのAI機能をNetSuiteに追加している。これらの機能は、企業のデータ活用や業務効率化をどのように加速させるのだろうか。
「企業はデータからインサイトを得て、それをビジネス生かしたいと考えている。一方で、増加し続けるデータを適切に加工し、分析することは難しくなっている。ルーティン業務などをいかになくし、効果的な業務にリソースを当てられるか。『Do more with less』をいかに実現するかを企業は考えなければならない」
ゴールドバーグ氏はこのように企業が抱える課題を語り、講演を始めた。この課題を解決するために、Oracle NetSuiteが新たに発表した新機能は以下だ。
「NetSuite Text Enhance」は、NetSuite上で記入された数語の文字を基に、文脈に沿った独自のコンテンツを作成する。財務会計や人事、サプライチェーン、営業、マーケティング、カスタマーサポートなどの各チームがAIを活用して文脈に応じた原稿を作成し、迅速かつ容易にレビューや編集、承認ができるようになる。
ゴールドバーグ氏は「ルーティン業務などのプロセスを自動化し、組織の効率化を支援する。これを活用することで、ユーザーは顧客に対し最新の商品説明や商品画像、価格、在庫状況、配送の詳細などを迅速に共有できる」と述べた。
「NetSuite Planning and Budgeting」はAIを活用してデータ分析を自動化し、ユーザーの意思決定の改善や迅速化を支援する。計画や予測、差異を継続的に分析するアルゴリズムにより、ユーザーはトレンドや異常、相関関係を迅速かつ容易に発見できる。
「NetSuite Bill Capture」は組織の過去データを用いて、経費に関する業務を効率化する。具体的には手作業での請求書の入力を減らし、経理チームの生産性向上を目指す。
「NetSuite Analytics Warehouse」はNetSuiteに存在するさまざまなデータを一元化し、可視化する。また、それに基づいてレポートを作成する。
「NetSuite Enterprise Performance Management」は、財務会計と業務計画にまたがって勘定照合を自動化し、決算プロセスの効率化などを目指す。
「NetSuite Capital」は組織のキャッシュフローを可視化し、売掛債権回転日期間の短縮化を目指す。売上金管理や請求書の確認、価格設定、滑降などが可能で、決済の迅速化や運転資金の増加に貢献する。
「NetSuite Pay」はNetSuiteに組み込まれた新たなデジタル決済ソリューションだ。ユーザーは決済請負業者との契約レートや手数料をNetSuite Payに統合し、顧客の¥との決済を迅速化できる。
デジタルインボイスソリューションの「NetSuite Electronic Invoicing」は、組織の支払いや資金回収に関するプロセスを最適化し、コスト削減や請求書発行に関するグローバルな規制への対応を効率化する。
「NetSuite Transaction Line Distribution」を使うことで、ユーザーは組織内のトランザクションを子会社や部門、その他のセグメントに分割できるようになる。ビジネスアプリケーション「SuiteApp」と併用することで、企業のCFO(最高財務責任者)などは取引と財務報告を迅速化できる。
「NetSuite Benchmark 360」を使うことで、組織は業務メトリックと財務メトリックを分析して同業界や地域の類似企業と自社を比較し、パフォーマンスの優劣を確認できる。
「Field Service Management」はエンドツーエンドのフィールドサービス業務を効率化し、顧客満足度を高めることを目指す。ユーザーはスケジューリングや人員配置といった業務を簡素化できる。また、在庫と顧客資産管理を自動化し、知あるタイムデータの取得や現場とのコミュニケーションを改善できる。
「SuiteCommerce MyAccount」は、組織のオンラインアカウント管理の改善を目指す。ユーザーは請求書の支払いやサブスクリプション管理などもできる。
NetSuiteで直接、製品とサービスの設定や価格設定、見積などを可能にする「NetSuite CPQ」のサブスクリプションサービス「SuiteBilling」を使うことで、ユーザーは顧客に効果的なソリューションの提案ができ、収益機会を増やすことができる。
基調講演の最後には、Oracleと生成AIに関して連携しているCohereのマーティン・コン氏(プレジデント COO《最高執行責任者》)も登壇し、NetSuiteに関して以下のように語った。
「ビジネス環境が大きく変化する中で、NetSuiteの利用は拡大している。NetSuiteは従来の手作業を必要とする財務報告システムに比べて効率的だ。また、NetSuiteが活用するCohereのAI技術が、ソフトウェアをさらに便利で使いやすくする。CohereはNetSuiteの顧客であり、技術パートナーだ。今後もNetSuiteと協力し、顧客がAIによる生産性を向上させ、利益を得られるように支援していく(一部抜粋)」
米国では現在、NetSuite Planning and Budgeting、NetSuite Bill Capture、NetSuite Capital、NetSuite Transaction Line Distribution、SuiteCommerce MyAccount、NetSuite CPQの新機能が利用可能だが、日本ではまだ利用できない。その他機能も米国は今後1年以内に提供される予定だが、日本の提供開始時期は未定だ。
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