NetSuiteは結局どう? 気になる疑問をエヴァン氏に聞いた一問一答

NetSuiteは何が優れているのか。AIはERPの差別化要因になるのか。グローバルで顧客数3万7000社は多いのかなど、気になる質問をトップに聞いてみた。

» 2023年10月20日 12時20分 公開
[関谷祥平ITmedia]

この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。

 OracleのクラウドERP「Oracle NetSuite」(以下、NetSuite)に関する年次イベント「Oracle SuiteWorld 2023」(以下、SuiteWorld)が2023年10月19日をもって閉幕した。多くの企業がERPの導入によってデータを統合して効果的なインサイトを見つけ出している。ERPは企業の意思決定に大きな影響を与えるものだが、ERPベンダー各社の違いや差別化のポイントは分かりづらくなってる。

 特に「ChatGPT」の登場で改めて注目されるようになった生成AI(人工知能)を利用した機能は多くのベンダーが取り入れており、「何を理由にERPを選定すべきなのか」は難しい判断だ。

 本稿では、Oracle NetSuiteのエヴァン・ゴールドバーグ氏(エグゼクティブバイスプレジデント)に実施したインタビューから、「SuiteWorldで頻繁に使われた言葉の意味」「NetSuiteと他社の差別化要因」などを一問一答形式でお届けする。

SuiteWorldが米国ラスベガスで開催(筆者撮影)

「SuiteUP」の意味は? 世界で3万7000社の顧客数は多い? AIは差別化要因になるのか?

――SuiteWorldでは「SuiteUP」という言葉が頻繁に使われました。これにはどのような意味が込められているのでしょうか。

Oracle NetSuiteのエヴァン・ゴールドバーグ氏

ゴールドバーグ氏 あなたたち(記者団)が使っているカメラもそうですが、どのような製品でもさまざまな機能を持っています。実際にそのカメラの全ての機能を使いこなしている人は多くないでしょう。SuiteWorldには「NetSuiteで可能な機能をお互いに教え合う」という目的があります。このような取り組みによって、急成長している顧客からの満足度は高くなっていると感じます。

――NetSuiteは2023年で25周年を迎えました。今後の25年に向けて、Oracleのラリー・エリソン氏(会長兼兼CTO《最高技術責任者》)から何か話はありましたか。

ゴールドバーグ氏 そうですね。常に前を向き、顧客に最適なサービスを提供できるように効果的な投資をしていこうと私たちは考えています。もちろんプレッシャーはあります。

――イベントで発表された新たなサービスの大半が生成AIに関するものでした。他社も生成AIを取り入れた多くのサービスを発表していますが、これは今後の差別化要因になるとお考えですか。

ゴールドバーグ氏 まず、生成AIは誰でも利用可能で、私たちはそれをユニークな形でNetsuiteに取り入れようとしています。例えば企業が商品情報を顧客に共有しようとした際に、NetSuiteであれば数語を入力するだけで自動的に効果的な文章が生成されます。これは一つの例に過ぎませんが、私たちはただデータを統合しインサイトを出すのではなく、それを基に効果的なアクションを可能にします。NetSuiteはただ生成AIを組み込んでいるのではなく、それ以上の付加価値を提供します。

――多くの企業が生成AIをビジネスに活用したいと考えています。ゴールドバーグ氏ならどのように活用しますか?

ゴールドバーグ氏 私が強調したいことは「NetSuiteを使い続けてください」ということです。NetSuiteであれば、例えばグラフやチャートを表示する際に、現在は画像としてだけ把握されているものが、将来的にはその画像の背景や内容にリンクする重要な要素も提供できるようになるでしょう。このような機能をできるだけ早く提供したいと考えています。

――貴社は「Oracle Fusion Cloud ERP」(以下、Fusion)も提供していますが、NetSuiteとの連携が強化される、または統合されることはあり得ますか?

ゴールドバーグ氏 それぞれの製品は全く異なるものです。Fusionは大企業の部門運営などで利用されることを想定しています。例えばOracleが提供しているサプライチェーン関連のアプリケーションやHCM関連のアプリケーションなどですね。それに対し、NetSuiteは単一のアプリケーションとして設計されています。大企業はFusionから必要な要素を使うのに対し、スタートアップや中小企業はNetSuiteで全てをカバーできるわけです。こう考えると、どちらの製品を活用すべきかは簡単に判断できるでしょう。

――NetSuiteを導入している企業は現在、世界で約3万7000社です。この数字をどのように捉えていますか。

ゴールドバーグ氏 OracleがNetSuiteを買収した時、顧客数は1万1000社でしたが、現在は3万7000社です。このような成長が今後も続くと期待しています。

――さらなる顧客獲得に向けて、戦略などはありますか。

ゴールドバーグ氏 顧客に魅力的だと思ってもらうにはAIの活用と優れたユーザーエクスペリエンスが重要だと考えています。今後はNetSuiteの導入をより容易にしたいですね。

 以上がゴールドバーグ氏が答えた内容だ。イベントでも強調されたことだが、NetSuiteは大企業ではなく、グローバル展開などを視野に入れるスタートアップや中小企業をターゲットにしている。中小企業を多く抱える日本で、NetSuiteが今後どのように顧客数を伸ばしていくのか。同社の成長に注目だ。

(取材協力:日本オラクル)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ