Amazonが連邦取引委員会と17州から提訴 同社のビジネスは“悪”か“恩恵”かRetail Dive

eコマース大手のAmazonが“不当な独占”として訴えられている。その経緯とは。

» 2023年11月03日 08時00分 公開
[Daphne HowlandRetail Dive]

この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。

Retail Dive

 米連邦取引委員会(以下、FTC)と米国17州の検事総長は2023年9月26日(現地時間)、Amazonの反競争的な慣行が消費者とマーケットプレース出品者の双方に害を及ぼしているとしてワシントン州西部地区連邦地方裁判所に提訴したと発表した(注1)。

 FTCのリナ・カーン氏(委員長)は声明で「われわれの訴状は、Amazonが違法な市場独占を維持するためにいかに懲罰的で強圧的な戦術を使ってきたかを明らかにしている。Amazonがその独占的な権力を悪用し利益を上げる一方で、同社のプラットフォームで買い物をする何千万(米国内)もの人々や、同社に依存する何十万もの企業に対して価格を引き上げ、サービスを低下させていることを指摘する申し立てだ」と主張している。

 FTCは訴状の中で「Amazonは独占企業である」と強調している。

Amazonのビジネスは"不当な独占"か、それとも"恩恵"か

 FTCの発表によると(注2)、同委員会が問題視するAmazonのビジネス手法には「関連性のあるオーガニック検索の結果を有料広告に置き換える」「優れていると分かっている商品よりも自社の商品を優先する」といったものがある。

 FTCはまた、Amazonが高額なフルフィルメント手数料やその他手数料を出品者に請求し、それが最終的に買い物客の価格を押し上げ、事実上出品者がプライムプログラムの資格を得ることを必須にしているとも主張する。

 発表で詳述されている支払いには、販売者が商品販売ごとに支払う月額費用と広告料が含まれており、FTCはこれらに対して「多くの販売者は総収入の50%近くをAmazonに支払わなければならない」と指摘する。

 これらの手数料は販売者だけでなく、Amazonやそれ以外の場所で購買を行う消費者にも損害を与えるという。

 FTCはまた「値引き防止策」と呼ばれるものにも注目している。これは、販売者がAmazon以外のところでAmazonに掲載している価格よりも安い価格を提示している場合、検索結果でその価格を押し下げる行為だ。

 FTCと各州はAmazonの違法行為を禁止し、独占的支配を解いて競争を回復させる終局的差止命令を求めている。対象となる州は、コネチカット州、デラウェア州、メイン州、メリーランド州、マサチューセッツ州、ミシガン州、ミネソタ州、ニュージャージー州、ニューハンプシャー州、ニューメキシコ州、ネバダ州、ニューヨーク州、オクラホマ州、オレゴン州、ペンシルベニア州、ロードアイランド州、ウィスコンシン州だ。

 Amazonの顧問弁護士兼グローバル公共政策担当バイスプレジデントであるデビッド・ザポルスキー氏は電子メールで「同社の動きは実際に競争を促進している。FTCの焦点は消費者と競争を保護するという使命から根本的に逸脱している」と主張した。「事実と法律に基づいてこの件に異議を唱え、法廷で主張することを楽しみにしている」(ザポルスキー氏)

 「FTCが異議を唱えているAmazonの行為は、小売業界全体の競争とイノベーションを促進するのに役立っており、Amazonの顧客にとっては品ぞろえが増えて価格が下がるだけでなく、配送スピードも速くなり、Amazonのストアで販売する多くの企業にとってチャンスが広がっている。もしFTCの要求が通れば、選択できる商品の数は減り価格は上がるだろう。また、消費者への配送は遅くなり、中小企業にとっては選択肢が減ることになる」(ザポルスキー氏)

© Industry Dive. All rights reserved.

注目のテーマ