アクセンチュアやデロイトに頼らず自動化を実現せよ InforがEnterprise Automationを発表

InforがRPA実装を支援するサービス「Enterprise Automation」と、開発統合環境「Infor Developer Portal」を発表した。

» 2023年11月29日 08時00分 公開
[Jim O'DonnellTechTarget]

この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。

 業界特化型のERPベンダーであるInforは2023年10月(現地時間)、顧客のビジネスプロセス自動化を支援することを目的に、クラウドプラットフォーム「Infor Enterprise Automation」(以下、Enterprise Automation)を発表した。併せて、アプリケーションや拡張機能の構築を可能にする開発者向けツール「Developer Portal」も発表された。

高額なシステムインテグレーターに頼らずに済む世界を

 Enterprise Automationは、RPAやデータインテグレーション、AI(人工知能)、ML(機械学習)といったテクノロジーを単一のSaaSに統合する。Inforのヴィグネシ・スブラマニアン氏(製品管理担当バイスプレジデント)は「Enterprise Automationは、ユーザーが自動化すべきプロセスを発見し、RPAを実装するのを支援する。ユーザーはプロセスの効率性を高め、従業員を重要性の低い作業から解放できる。事業の業績向上につながる」と話す。

 同氏によれば、Enterprise Automationが発表されるまでInforのユーザーは、プロセスを自動化する際にサードパーティー製のRPAを利用しなければならなった。

 「Inforには自社開発のRPAがなかったため、ユーザーは『UiPath』や『Automation Anywhere』『Blue Prism』などのアプリケーションを利用する必要があった。これがInforにとって提供できない“隙間”になっていたが、自社製品で満たすべきコア機能だと判断し、実行に移した」(スブラマニアン氏)

 Enterprise Automationを開発した意図について、スブラマニアン氏は「ITリソースが潤沢ではない企業が、AccentureやDeloitteなどのシステムインテグレーターに頼らずに自動化や統合を実現できるようにすることだ」と語る。

 自動化の導入に弾みをつけるために、標準的なユースケースを収めたコンテンツカタログを提供しているのもこうした目的意識の表れだと同氏は語る。同カタログには請求書や配達証明、船荷証券、返品など、あらゆる組織で利用できるユースケースが含まれている。

 また、同カタログは個別のプロセスについて、自動化が適切に進められたケースに関するベストプラクティスも説明している。

 「プロセスを誤れば、自動化が失敗する可能性が高まる。Inforの早見表やガイドブックを見れば、『自動化が適しているのはどんな状況なのか』『自動化が適していないのはどんな場合なのか』を理解できる」(スブラマニアン氏)

 一方、Developer PortalにはInforの全技術に関する情報が盛り込まれたチュートリアルやハウツーを解説する「YouTube」動画、アプリケーションとベストプラクティスガイドを網羅する完全版APIライブラリなどが含まれている。

 「Developer Portalは、デベロッパーコミュニティーがこれを活用し、テクノロジーに基づいた独自のIPを構築できるようにすることを目指している」(スブラマニアン氏)

顧客の開発ニーズを支援するInforのツール

 Constellation Researchのホルガー・ミューラー氏(バイスプレジデント 主席アナリスト)は「エンタープライズ規模の企業に必要なのは、『エンタープライズアクセラレーション』の実現を支援してくれるERPベンダーだ」と指摘する。これは、自社の要件に適合したソフトウェアを使ってアジリティを高め、効率性の向上を実現することを指す。

 「現在、市場にある既製品だけでエンタープライズアクセラレーションを実現するのは困難だ。企業はPaaSなども利用しながら、ユースケースの構築に励む必要がある」(ミューラー氏)

 同氏はInforについて「同社は『Infor OS』によって、エンタープライズオートメーションプラットフォーム(EAP)の領域にいち早く踏み込んできたベンダーの一つだ。この背景には、クラウド移行やマイクロバーティカル向けの拡張、カスタマイズなどに対応するために開発すべき機能の幅が広かったためだ。InforはEnterprise AutomationとDeveloper PortalのRPA機能で、さらに前に進もうとしている」と話す。

 Enterprise AutomationとDeveloper Portalの対抗馬となり得るEAP製品としては、SAPの「SAP Business Technology Platform」や、Oracleの「Visual Builder」および「APEX」、Workdayの「Workday Cloud Platform」および「Ceridian Integration Studio」「Microsoft Power Apps」などがある。

 Technology Evaluation Centersのプレドラグ・ヤコヴリエヴィッチ氏(主席業界アナリスト)は、Enterprise Automationについて「Inforのユーザーが『プロセスの自動化を進展させるのに適したツールセットだ』と評価する一方で、これを繰り返し利用してもらい、全ての顧客とパートナーが利用できるようにすることが今後の課題になる」と指摘する。

 「InforがRPA市場において単独で競争することはないだろうが、同社の顧客とパートナーにとっては十分に優れた製品になるはずだ」(ヤコヴリエヴィッチ氏)

 ヤコヴリエヴィッチ氏はDeveloper Portalに関しても、顧客がInforのアプリケーションに有用な拡張機能を開発できる良いアイデアだと話す。

 「Inforは、自社のRPAやAI、ローコード、API統合、データレイク、プロセスインテリジェンスの利便性を向上し、何度も利用されるサービスにしようと取り組んでいる。これらをいかにコアシステムに組み入れていくのかを見守りたい」(ヤコヴリエヴィッチ氏)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.