Security Copilotで業務はどう変わる? Microsoftが考えるAI時代のセキュリティ(2/2 ページ)

» 2024年03月08日 07時00分 公開
[宮田健ITmedia]
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Security CopilotはTier 1のアナリストをTier 3にまで押し上げる

 この統合プラットフォームの効果的な活用を支援するソリューションがSecurity Copilotだ。

 例えばMicrosoft Purviewを使用する中では、Security Copilotは内部者のリスク管理やデータ漏えい防止、通信コンプライアンスを処理でき、自然言語で電子情報開示ツール「Microsoft Purview eDiscovery」のクエリを実行できる。

 Microsoft Intuneの場合、Security Copilotは、ユーザーとグループの詳細を調査したり、不正なログインを調査したり、管理者のログイントラブルシューティングを実行したり、リスクのあるユーザーやリスク調査を支援したりできる。この他、デバイスのポリシー作成から展開まで自動化することも可能だ。

 リー氏は「Security Copilotは対話を通じ、リアルタイムで可視性と状況を把握し、タスクをより迅速に実行させ、操作者の知識が少なくてもクエリを作成でき、コードではなくプロンプトを使ってタスクを自動化する能力を防御側に与える」と述べた。

 この他、Security Copilotは「直近のインシデントについて教えて」「『Log4Shell』とは何か」といった質問にも答えられるため、メンバーのスキルアップやトレーニングにも活用できる。

 「攻撃者が悪い目的でAIを使っているのであれば、私たちが良い目的でAIを使わなければ、どうやって彼らに対抗していけるだろうか?」(リー氏)

Security Copilotのクエリ例(出典:日本マイクロソフトの発表資料)

 リー氏によると、既に数百のセキュリティチームが公開プレビューでSecurity Copilotを利用しており、セキュリティアナリストのスキル向上効果が認められたという。

 「Security Copilotを使うことで、SOCチームにおけるTier1のアナリストがTier2やTier 3のアナリストと同レベルの複雑なタスクをこなせるようになった。調査結果では、利用者のタスクの実行精度が44%向上し、26%速く実行できるようになったことも報告されている。90%のユーザーが『今後もSecurity Copilotを作業に活用したい』と回答している」(リー氏)

生成AIの安全な利用を推進するためのMicrosoftの取り組み

 生成AIツールを利用する上ではガバナンスについても気になるユーザーが多いはずだ。Microsoftはこれについて、データのセキュリティ、ユーザーのセキュリティ、AIアプリケーションのセキュリティという3つの観点で支援を提供する。

 Microsoft DefenderとMicrosoft Purview、Microsoft Intuneを連携させて、データやユーザー、アプリケーションに関連するAIリスクの発見、プロンプトインジェクションなどのAIを狙った攻撃からアプリとデータを保護し、Security Copilotのガバナンスに活用できる。

AI利用におけるガバナンスをどう考えるか(出典:日本マイクロソフトの発表資料)

 リー氏は「人間同士に『ハラスメントをしない』『差別をしない』『不適切な発言をしない』といった規範があるように、AIの行動においても同様の規範が必要だ」と語った。同氏はMicrosoftのブラッド・スミス氏(副会長兼社長)の言葉を引用し「新しいテクノロジー開発の早い段階で行動規範を確立することは、全体的な安全性やセキュリティ、信頼性を確保することにつながる。当社が定めた『責任あるAI』を作るためのフレームワークが、全世界のコミュニティーによりポジティブな影響をもたらすだろう」と話した。

 この原則は「プライバシーとセキュリティ」「包括性」「アカウンタビリティ」「透明性」「公平性」「信頼性と安全性」の6つをガバナンスやポリシー、ルールを定めることで実践する。顧客にはトレーニングやベストプラクティスが提供され、AI利用時の安全を強化するためのツールやプロセスが提供される。

Microsoftが考える「責任あるAIの原則」フレームワーク(出典:日本マイクロソフトの発表資料)

 これに加えて、Microsoftは2023年11月、AI時代に安全なソフトウェアを構築する全社的な取り組みとして「Secure Future Initiative」を発表した。この取り組みは、AIによってソフトウェア構築方法の抜本的な改革を図るもので、AIによるコード品質の向上やソフトウェアのセキュリティ確保などが目的となっている。

Secure Future Initiativeで目指すこと(出典:日本マイクロソフトの発表資料)

 リー氏は最後に「"セキュリティとはチームスポーツ"というのが私たちの考えだ。AIはこれまで不可能だったことを達成してくれる力を与えるが、同時に十分注意しなければならない新たなリスクも生み出している。生成AIをセキュリティに活用し、AI自体のセキュリティも確保することは、最終的に防御者側に優位性をもたらす、セキュリティの新たな時代を切り開くはずだ」とまとめた。

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