Googleは年間2兆円近くをITインフラに投資 AI時代になぜインフラなのか

AIやクラウドに対する需要の高まりにより、Googleの業績が好調だ。そのGoogleは今後数年にわたり多額の資本をITインフラに投下する。

» 2024年06月12日 08時30分 公開
[Matt AshareCIO Dive]

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CIO Dive

 Googleおよびその親会社AlphabetのCEOであるスンダー・ピチャイ氏は2024年4月25日、AI(人工知能)機能への需要の高まりが後押しし、「Google Cloud」の売上が2024年最初の3カ月間に急増したと2024年第1四半期決算説明会で述べた(注1)。

Google I/Oで登壇した際のピチャイ氏(出典:GoogleのWebサイト)

オープンウェイトでAIモデル公開と同時に進む技術スタック構成の再編

 「クラウドの分野では、間違いなく転換期だ。AIの変革により、全ての人は技術スタック全体を見直す必要がある」(ピチャイ氏)

 同社は2024年第1四半期、クラウド部門の売上高を前年同期比28%増の96億ドル(約1.5兆円、本稿制作時点、以下同様)と報告した(注2)。ピチャイ氏は、「YouTube」とクラウドを合わせた年間収益が2024年には1000億ドル(約15.7兆円)を超えると予想していると述べた。

 2023年、大規模言語モデル(LLM)ブームをきっかけに、クラウド業界に新たな競争の場ができた。ハイパースケーラーが生成AI機能の導入を競う中、企業にさらなるクラウド移行のきっかけが生まれた格好だ。

 Googleは2024年4月初め、「Gemini 1.5 Pro」モデルのパブリックプレビューを開始し、2024年2月にはオープンウェイトモデル(ソースコードや学習用データセットではなく学習済みAIモデルを公開する配布モデル)の「Gemma」ファミリーをリリースした(注3)(注4)。また、同社は2024年2月に「Gemini」の先行バージョンを「Google Workspace」の生産性スイート全体に組み込んだ(注5)。

 「クラウドでは、過去8カ月間で1000以上の新製品や新機能を発表した」とピチャイ氏は述べ、AIを組み込んだ企業向けサービスやAIモデルをトレーニングするための専用チップ技術を挙げた。

 全てのAIの活動がクラウドから始まるわけではないが、計算集約型のモデルトレーニングから日々の推論呼び出しに至るまで、その多くはハイパースケーラーのインフラを経由して行われる。

 ピチャイ氏によれば、資金調達を受けた生成AIスタートアップ企業の60%以上、生成AIユニコーン企業の90%近くがGoogle Cloudの顧客だという。

 AIモデルのトレーニングと企業のユースケースをサポートするために必要なITインフラは、クラウドデータセンターの建設ラッシュを引き起こし、業界全体に影響を与え続けている(注6)。

 Google Cloudは引き続きITインフラに多額を投資し、それに応じて(組織や提供する技術スタックの)再編成を進めているとピチャイ氏は述べた。

 「Google DeepMind」の下にモデル構築チームを統合するだけでなく、最近はML(機械学習)インフラとML開発者チームを統一し、より迅速な意思決定、よりスマートなコンピュート割り当て、より良い顧客体験を実現した」(ピチャイ氏)

 ルース・ポラット氏(社長兼CIO《最高情報責任者》兼CFO《最高財務責任者》)によると、このコミットメントは資本支出に反映されており、2024年3月31日までの3カ月間に120億ドル(約1.8兆円)が投資されたという。

 「特にクラウドやGoogle DeepMind、そしてITインフラに対して優秀なエンジニアや技術人材への投資を続けている」(ポラット氏)

 同氏によると、四半期ごとの設備投資額は年間を通じて120億ドル相当を維持する見込みで、これは主にサーバー部品とデータセンターへの投資だ。

 「クラウドの成長を支えるITインフラの最先端に立ち続けるために、われわれは必要な投資を惜しまない」(ポラット氏)

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