IBMの直近の動きで見る「メインフレーム主力プレーヤー」の身の処し方CIO Dive

IBMは、SAPのサービス経由で新たなAIソリューションの提供を予定している。メインフレーム市場の縮小が見えている今、IBMはどう事業を成長させようとしているのか。

» 2024年06月14日 08時00分 公開
[Matt AshareCIO Dive]

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 IBMとSAPは2024年5月8日(現地時間、以下同)、「クラウドベースの生成AIビジネスソリューションを共同で構築している」と発表した(注1)。両社はSAPの企業向けソフトウェアスイートとSaaS製品を通じて、製造や消費財、小売、自動車業界向けのユースケースの展開を目指すという。

依然メインフレームで稼ぐIBM、直近の買収と提携に見る変化

 提携拡大の一環として、IBMは財務やサプライチェーン管理、人事、顧客体験、支出管理のためのERPを含む、「SAP Business Technology Platform」(SAP BTP)のクラウドポートフォリオにAI機能を組み込む。IBMは「業界や事業部門を問わず、製品提供に至るまでの100以上のAIソリューションを開発中」と述べた。

 今回の発表は、両社がより多くの顧客をクラウドに移行させる取り組みを強化する中で実施された。IBMのステイシー・ショート氏(SAP担当グローバル・パートナーシップ・エグゼクティブ)はLinkedInの投稿で「この取り組みを通じて、われわれは顧客のクラウド変革を支援する」と述べた(注2)。

 IBMとSAPが企業向け技術スタックで共通の基盤を築いたのは、今回が初めてではない。クラウド以前の大規模なオンプレミス時代から50年以上にわたって続いている。今回の提携拡大は、両社がクラウドに注力していることと関係している。

 SAPは「RISE with SAP」と「GROW with SAP」のインセンティブプログラムを通じて、顧客をオンプレミスのERPシステムからクラウドベースのSaaSソリューションへと誘導する取り組みを継続している。同社のクリスチャン・クライン氏(CEO)は「クラウドの成長を促進するためにAIの強化に注力している」と2024年4月の決算説明会で述べた(注3)。

 「クラウドのポートフォリオ全体で30以上の新たなAIシナリオをリリースした。追加のシナリオはほぼ毎週リリースされ、年内には100以上のシナリオが予定されている」(クライン氏)

 IBMは依然としてメインフレーム市場の主要企業でありながら、アルヴィンド・クリシュナ氏(会長兼CEO)のもと、ハイブリッドマルチクラウド統合ソリューション、コンサルティングサービス、そしてAI機能に力を入れている(注4)。

 同社は2024年4月にマルチクラウドソリューションを提供するHashiCorpの買収に64億ドルを投資し、2024年1月にはAdvancedのメインフレームのモダナイゼーション部門をポートフォリオに加えた(注5)。

 クリシュナ氏は2024年4月の決算説明会で、「HashiCorpの買収は、業界のコラボレーションや開発者コミュニティー、オープンソースのハイブリッドクラウドおよびAIのイノベーションに対するIBMのコミットメントを強化するものだ」と述べた(注6)。

 IBMは2024年5月9日、Microsoftとの提携を拡大し、Microsoftのオフィススイート「Microsoft 365 Copilot」のカスタマイズと導入を支援するIBMコンサルティング部門を設立し、マルチクラウドの地位を強化した(注7)。

 同社は2023年10月にAmazon Web Services(AWS)とAIコンサルティングに関して同様の契約を締結し、2024年4月第5週初めにはAWSのマーケットプレースで利用可能な企業向けソフトウェアポートフォリオを92カ国に拡大した(注8)(注9)。

 SAPとIBMは、ERPデータやプロセス、システム、デバイスの統合のためのレファレンスアーキテクチャを標準化し、SAPのエコシステムにおける「IBM Watson」のAI機能にLLMの「Granite」シリーズを追加すると、2024年5月9日の発表で述べた。

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