エンタープライズ品質のAIをクイックに実装、安定的な運用を維持するにはAWS×キンドリルの協業が企業のAI活用にもたらすメリット

キンドリルがAWSを活用した産業別のクラウド活用支援を強化する。中でも注目したいのが、エンタープライズ品質での生成AI活用の取り組みだ。業界別にクイックにサービスを立ち上げられるという。

» 2024年06月24日 10時00分 公開
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生成AIプロジェクトを迅速化する「イノベーションファクトリー」

 Kyndryl(キンドリル)とAmazon Web Services(AWS)は2023年11月27日、複数年にわたる戦略的協業契約(SCA:Strategic Collaboration Agreement)を締結した。IBMから分社した後、キンドリルはさまざまなハイパースケーラーと協業を進めてきたが、SCAはこれまでの協業からさらに一歩踏み込み、リソースやノウハウを顧客に提供する価値を最大化する内容になっている。

 本稿ではSCAの取り組みの一つである「Innovation Factory」(イノベーションファクトリー)の詳細を見ていく。

AWSユーザー企業のプラットフォームの価値を最大化

 キンドリルジャパン理事の榎木泰平氏(プラクティス事業本部 アプリケーション、データ&AI事業部長)は、「金融機関をはじめとするラージエンタープライズのお客さまはクラウドへの対応も比較的早く、既に多くの企業がクラウドを活用しています。特に日本では『AWSをIT基盤として活用したい』との声も多く寄せられていました」とSCA締結の背景を説明する。

キンドリルジャパン理事の榎木泰平氏 キンドリルジャパン理事の榎木泰平氏

 ニーズに合わせてシステムの構築から運用・保守まで高い品質で包括的にサポートするキンドリルは、SCAの下でAWSの技術情報をいち早くキャッチアップして顧客にデリバリーするため、AWS技術スペシャリストや認定エキスパート人員を拡大している。

 「SAPやOracleのビジネスアプリケーションのクラウド移行を検討していて、既にAWSをシステム基盤として活用しているお客さまに対しては、最先端のAWSのサービスを生かした方法を今まで以上に効果的に提案できるようになります。汎用(はんよう)的な業務だけでなく、AWSとの共創の場であるイノベーションファクトリーを通じて開発・検証した業界別の業務プロセスに対応したベストプラクティスをエンタープライズグレードの品質でクイックに提供する体制が整いました」(榎木氏)

図1 イノベーションファクトリーの全体像(出典:キンドリルジャパン提供資料) 図1 イノベーションファクトリーの全体像(出典:キンドリルジャパン提供資料)

業界別の課題にクイックに応える 検証済み構成でクラウドを活用

 キンドリルはこれまでもAWSの技術やサービスを活用したソリューションを顧客に提供してきた。SCAとして取り組みを強化する背景には、顧客のビジネス課題の変化があるという。プリンシパルアーキテクトの劉 功義氏(プラクティス事業本部 アプリケーション、データ&AIデリバリーディレクター)は、こう話す。

 「キンドリルは創業以来、アプリケーションやデータ&AIの他に、クラウド、メインフレーム、セキュリティ&レジリエンシー、ネットワーク&エッジ、デジタルワークプレースという6つの柱でソリューションを提供してきました。ソリューション領域を組み合わせてのサポートは従来から多く実施しており、最近は特に増えています。ビジネスアプリケーション領域ではクラウドのより深い知識が求められる相談が増えていますし、IoTデータの活用やデータレイクの構築、生成AIにおけるプロンプトエンジニアリングなどの領域を横断する相談を受けるケースもあります。アプリケーションだけでなくクラウドについて深い知見を持たなければ、お客さまのニーズに寄り添い、伴走することはできないでしょう」

キンドリルジャパン プリンシパルアーキテクトの劉 功義氏 キンドリルジャパン プリンシパルアーキテクトの劉 功義氏

 中でも現在ニーズが高いのが生成AIの活用だ。生成AIを生かしたラピッドプロトタイピングやアプリケーションモダナイズ、DevOpsを支援する「生成AIアクセラレータ」を出発点に将来的にはフルスタックでのサービス提供を目指す。

 「イノベーションファクトリーの成果として先行する生成AIアクセラレータでは、生成AIを活用したアプリケーションのコードモダナイゼーションを行っています」(劉氏)

 AWSの生成AI関連サービスとしては、機械学習(ML)基盤である「Amazon SageMaker」や生成AIサービスの「Amazon Bedrock」、コード自動生成サービスの「Amazon CodeWhisperer」などがある。AWSとの協業により、キンドリルはこれらのサービスを知り尽くした専門家として顧客をサポートする。サポートにはモデルの構築や提供にとどまらず、AIライフサイクル全体が含まれている。

エンタープライズ品質の生成AIサービス

 ユースケースの創出に当たって両社が開発・検証するのは生成AIサービスの実装部分だけではない。各企業が実際のサービスを提供する際に必要な要素全体を検証する。

 「企業が生成AIを利用するとき、注意しなければならないのが信頼性を含むAIモデルの品質です。もちろんコスト管理やセキュリティ、プライバシーにも配慮が必要です。全体を考慮して設計・運用するには、関連する技術スタック全てを理解して取り組む必要があります。われわれのようにフルスタックで対応できる企業はそう多くはないでしょう。これらの知識と経験を生かして、エンタープライズ品質の生成AIユースケースをグローバルチームで創出しようと考えています」(劉氏)

 ユースケースとしては、コンタクトセンターにおけるAIチャットbotの活用や顧客対応におけるユーザーエクスペリエンスの向上、システム障害の原因分析、サービスデスクにおける1次2次対応の効率化といった業種・業界に合わせた生成AI活用シナリオが挙げられる。

 通常であれば1つずつサービスを選定して検証しながら構成を決定する必要があるが、AWSとキンドリルは、業界で共通する業務シナリオを「検証済みのユースケース」として提供する。各種認証などの業界ごとのルールに即した安全な構成を素早く立ち上げられるというメリットがある。

 各ユースケースの構成には、ビジネス部門がすぐに生成AIを活用できるようにするためのアセットや「Amazon QuickSight」のようなBIツールなどのアプリケーションプラットフォームも含まれる。ソリューションを提供するだけでなく、生成AIガイドラインの策定やプロンプトエンジニア人材の育成支援などのプログラムも整備する。

 「生成AIを活用したアプリケーションのライフサイクルマネジメントにも取り組んでいます。将来的には単体のソリューション提供だけでなく、データを収集、蓄積、分析するためのデータ基盤からAWSの生成AI関連サービス、大規模言語モデル(LLM)の運用、ユースケースの提供、アプリケーションプラットフォームの提供や運用を含むフルスタックでの支援を目指しています」(劉氏)

図2 AIサービスだけでなく、運用やガバナンスを考慮したデータ基盤の設計や構築、運用も一括して提供(出典:キンドリルジャパン提供資料) 図2 AIサービスだけでなく、運用やガバナンスを考慮したデータ基盤の設計や構築、運用も一括して提供(出典:キンドリルジャパン提供資料)

 イノベーションファクトリーが目指すのは、顧客のニーズに基づいたユースケースをエンタープライズグレードのソリューションやサービスに変換することだと榎木氏は強調する。

 「金融や公共、製造、運輸、流通といった業界別のソリューションの開発と、生成AI、データモダナイゼーション、アプリインサイト&インテグレーションといった業界を問わないソリューションの開発に取り組んでいます。データサイエンティストやエンジニア、アーキテクト、開発者、ドメインエキスパート、コンサルタントなど多分野にまたがるスキルを持つ人材の育成やお客さまとの共創プロジェクト、ユースケースの開発、継続的なイノベーションを目的としたツールや技術の開発にも取り組んでいます」

 イノベーションファクトリーはグローバルレベルで実施しており、得られた成果は各国で活用できる仕組みだ。

 その成果の一つに、IoTデータを活用した消防士の健康管理システムがある。“出口”のソリューションは固有の業務に特化しているが、ここで使われているアーキテクチャ自体はリアルタイム性が求められるさまざまなIoTサービスのバックエンドに生かせる。

LLMライフサイクル全体を管理するプラットフォームも提供

 「LLMOps Services Platform」という生成AIアプリケーションの管理プラットフォームを開発したことも協業の大きな成果の一つだ。

 「LLMOps Services Platformは、生成AIの試行からリリースまでを高速化するプラットフォームです。LLMを利用する際に課題となるオブザーバビリティーやコスト管理、オーケストレーション、セキュリティとプライバシーの管理などを一貫して実施できるようにします。作成した生成AIアプリケーションの利用状況やコスト、効率などを管理画面でモニタリングできます。ユーザーからのフィードバックを取り込み、開発支援に役立てることも可能です。LLMOps Services Platformを利用することで、LLMのパフォーマンスを維持し、ビジネスの意思決定に役立てたり、問題を早期に特定してトラブルシューティングしたりできるようになります。生成AIのように変化が速い技術領域においても持続的なイノベーションが可能になるのです」(劉氏)

図3 LLMOps Services Platformの概要(出典:キンドリルジャパン提供資料) 図3 LLMOps Services Platformの概要(出典:キンドリルジャパン提供資料)

 榎木氏によると、生成AIに関する相談は日本企業でも目立って増えている。グローバルのユースケースの提供やAWSと共同開発したソリューションの提供に力を入れたいと同氏は言う。

 「コンタクトセンターでの対応業務やホストシステムのモダナイズなど、マニュアル作業が多く残っている領域で生成AIの活用ニーズが高まっています。データ基盤の開発からクラウドアプリケーションの提供、スキル提供や人材育成まで一貫してサポートするのがキンドリルの強みです。生成AIを中心に日本のお客さまのイノベーションとDX(デジタルトランスフォーメーション)を支えていきます」

 生成AIはコンシューマー向けサービスや顧客接点などへの適用が期待されている。競争力を高めるにはクイックなサービス提供が必須であり、クラウドサービスの活用は有力な選択肢になる。だが、企業の「顔」とも言える領域で生成AIを活用するとなればその品質と信頼性は企業イメージに直結する可能性がある。だからこそ実装して終わりではなく、高い品質のサービスを長期的に維持できる体制づくりが重要だ。

 AWSサービスに関する広い知見を持ち、データ基盤の構築から確実かつ安定的な運用まで支援するキンドリルがAWSとイノベーションファクトリーを設立したことは、エンタープライズ品質のAIをいち早く手に入れたい企業にとって大きな助けとなるだろう。

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提供:キンドリルジャパン株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2024年8月4日