Oracle CloudWorldで、Oracle Cloud SCMのアプリケーションにおけるAIのユースケースやスマートマニュファクチャリング、サステナビリティに関する新機能が発表された。
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Oracle CloudのERPとサプライチェーンアプリケーションに、AIエージェントやスマートマニュファクチャリング、サステナビリティの機能が新たに導入される。
2024年9月9日(現地時間、以下同)の週にOracle CloudWorldで発表されたAIエージェントは、ERPやサプライチェーンマネジメント(SCM)、HCM、カスタマーエクスペリエンス向けの「Oracle Fusion Applications」を横断して自律的な作業をする。ユースケースはアプリケーションに固有で、顧客によるプロセスの自動化、パーソナライズされた推奨事項やコンテンツの受領を目的としている。
Oracleのビジネスアプリケーションが、AIを武器にSAPと肩を並べるほどの存在感を示している。その詳細を届ける。
アナリストによると、この新機能は他の主要なERPベンダーが最近力を入れているものと同様だという。しかし、Oracleが生成AIエージェントを追加し、より包括的なサステナビリティを提供することで、市場に新しく個性的な競争が加わり、顧客に利益をもたらす可能性がある。
Oracleは、Oracle Fusion Applicationsで利用可能になるAI機能に対して顧客に追加料金を請求しないことを明言した。また、2024年9月11日に開催された基調講演において、Oracleにおいてアプリケーション開発を担当するスティーブ・ミランダ氏(エグゼクティブバイスプレジデント)は、AIの使用に関する特定の「エンゲージメントルール」を確立したと発表した。
「AIに関する全てのデータのセキュリティとプライバシーについて、顧客と同様の合意を維持している。大規模言語モデル(LLM)にデータを渡すことはなく、LLMを訓練するために顧客データを使用することもない」(ミランダ氏)
「Oracle Cloud SCM」には、製造とサプライチェーンのオペレーションを改善する機能が追加された。「Oracle Cloud Manufacturing」の新しいSmart Operations for Manufacturing機能は、現場の作業員への指示に関するリアルタイムの情報を提供し、シフト報告に活用できる生成AIエージェントも提供する。
Oracle Cloud Maintenanceの新機能であるSmart Operations for Maintenanceには、管理者向けのスケジューリング用の単一のダッシュボードが加わった。早急に解決が必要な問題についてリアルタイムのアラートを受け取ることで、製造業者が資産のメンテナンスに関する問題を特定して解決するプロセスを改善する。
ミランダ氏によると、これらの新機能は製造実行システム(MES)や製品ライフサイクル管理(PLM)などの製造ソフトウェアのモダナイズに役立つという。
「従来のMESと異なり、Oracle Cloud SCM Smart Operationsは1つのデータモデルと1つのテクノロジースタックを使用して、複数のエンタープライズシステムと緊密に統合されている」(ミランダ氏)
Oracleにおいてクラウドアプリケーションの開発を担当するナタリア・レイチェルソン氏(グループ・バイスプレジデント)は、カンファレンスに先立つブリーフィングで次のように述べた。
「新しいOracle Cloud Sustainabilityは、ERPやサプライチェーン、エンタープライズプランニング、レポーティング、その他のシステムと接続し、企業のサステナビリティへの取り組みを一望できるアプリケーションだ。二酸化炭素排出量の報告など、持続可能性の目標に対する企業の立ち位置を示すことができる。これを可能にするために複数のシステムからデータを取得し、AIを適用することで、サステナビリティの取り組みに適合するものとそうでないものを分類する」(レイチェルソン氏)
例えば、顧客はOracle Cloud Sustainabilityを使用して、どのサプライヤーがサステナビリティ要件を満たすかを判断し、関連するデータの調査にAIを活用し、サプライヤーのサステナビリティ報告要件の追跡と管理ができる。
レイチェルソン氏によると、Oracle Cloud Sustainabilityは近日中に顧客向けに提供される予定だが、リリース日は未定だという。ライセンスを持つ顧客は追加料金なしで利用できる見込みだ。
調査企業であるConstellation Researchのホルガー・ミューラー氏(アナリスト)によると、Oracle Cloud SCMのアプリケーションスイートは、HCMおよびSCMアプリケーションの開発を担当するOracleのクリス・レオーネ氏(エグゼクティブバイスプレジデント)に引き継がれてから顕著な進展を見せている。
「チームは全力を尽くしており、サステナビリティに関連する機能の提供やスマートオペレーションなどで最初の成果を見せ始めている。仮にOracleがこのスピードでイノベーションを続ければ、製造市場のリーダーであるSAPに対する代替手段としてすぐに浮上するだろう」(ミュラー氏)
Oracleはすでに従来型のAIでリードしており、現在はAIエージェントによる生成AIの業務適用で業界をリードしている。ミュラー氏によると、これらは、Oracleが「アプリケーションに自社のクラウドインフラを使用する唯一のERPベンダー」になるための取り組みだう。
ミュラー氏は「これは競争を望む企業にとって朗報だ」と語った。
調査企業であるForrester Researchのリズ・ハーバート氏(アナリスト)によると、Oracle CloudWorldで発表されたOracle Cloud Fusion Applicationsの機能は、主要なエンタープライズアプリケーションベンダーのテーマと一致しており、特に驚くようなものはなかったという。
ハーバート氏は「しかし、AIに焦点を当てた開発にはポジティブな面もあれば疑問点もある」と述べている。
「ポジティブな面として、OracleのAIに対する取り組みは、より具体的になってきており、サプライチェーンや人事といった特定のビジネスプロセス分野でAIがどのように機能するのかについて明確な例を示している。一方、これらの機能の一部はまだ初期段階にあるか、利用可能ではない状態だ。顧客は、実際の例や成功事例、価格についてもっと知りたいと考えている」(ハーバート氏)
ハーバート氏によると、SAPやSalesforce、Sageといった他の大手企業がすでにサステナビリティアプリケーションを提供しているように、Oracle Cloud Sustainabilityのリリースは、この分野におけるエンタープライズアプリケーションの進化とおおむね一致している。
「追加料金なしでOracleのアプリケーションを提供するのは、このアプリケーションを有用なものにするために必要なデータソースから別の方法で収益を上げると考えがあるためだろう」(ハーバート氏)
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