脱VMware旋風が吹き荒れる中、Broadcomはなぜ“余裕”なのか?CIO Dive

Broadcomは2023年のVMware買収によりソフトウェア部門を拡大したが、製品価格の引き上げにより顧客の流出が懸念される。同社が見据える次のターゲットはどこなのだろうか。

» 2024年10月30日 08時00分 公開
[Matt AshareCIO Dive]

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 BroadcomはVMwareの買収により、ソフトウェア部門の規模を約3倍に拡大した。買収の1年前は同部門の売上高は20億ドルに満たなかった。

 この成長は、「VMware」が企業で広く利用されていることを映し出している。Gartnerによると、37万5000社近くがVMwareソリューションを利用しているという。しかし、Broadcomが主導する製品ポートフォリオの統合により、価格が最大5倍に引き上げられた結果、多くの企業が代替案を検討していると、Gartnerは2024年4月に報告している(注1)。

非難を浴びるBroadcomの次なるターゲットは?

 しかし、顧客の流出が起きても、Broadcomはあまり困らないようだ。同社が見据える次のターゲットはどこなのだろうか。

 「BroadcomによるVMwareの買収は、ユーザー企業の確立されたプラットフォーム戦略を崩壊させ、調達や購買、予算編成、アーキテクチャのロードマップに影響を及ぼしている。CIO(最高情報責任者)は、この買収が自社のビジネスと技術ポートフォリオにもたらすリスクを見極め、必要に応じて代替案を検討すべきだ」(Gartner)

 通信大手のAT&Tは、この動きに正式に反発している大企業の1社だ。同社は2024年8月末に提訴した訴訟で、Broadcomが不要なソフトウェアに数百万ドルを支払うよう圧力をかけていると主張している。AT&Tは現在、8600台のサーバで7万5000台のVMware仮想マシンを運用しているという(注2)。

 それでもなお、Broadcomは2024年7月に「VMware Cloud Foundation 5.2」と呼ばれる包括的なプライベートクラウドバンドルを発表した。2025年には既に開発中の新バージョン「VMware Cloud Foundation 9」をリリースする予定だと2024年8月に発表した。

 Info-Tech Research Groupのスコット・ビックリー氏(アドバイザリープラクティスリード)は次のように語った。

 「Broadcomは断片的なビジネスには興味がないため、この広範なビジョンに賛同しない中小規模の顧客を失っても構わないと考えている。統合された機能スタックに十分な対価を支払ってくれる顧客を求めている」(ビックリー氏)

 同社はAIコンピュートへの需要の増加に対応し、カスタマイズチップをハイパースケーラーに提供しており、半導体事業も堅調だ。

 「当社の顧客は、AIデータセンターでより多くの容量を導入してくれるハイパースケーラーだ」と、タン氏は2024年9月5日の決算説明会で述べた(注3)。

 「Broadcomは、GPUやその他のAIハードウェアの企業向け市場には興味がない」とタン氏は述べた。焦点は完全にクラウドプロバイダーに絞られている。同氏によると、一般的な企業にはBroadcomが製造するカスタムシリコンに投資するリソースはないが、ハイパースケーラーならそれが可能だという。

 「ハイパースケーラーと呼ばれる少数のクラウド事業者は、プラットフォームの規模も資金力も十分なため、独自のカスタムアクセラレーターを開発することが経済的に合理的だ。このようなハイパースケーラーにとって、GPUはエンジニアよりも重要である」(タン氏)

 Broadcomが2024年9月5日に発表した2024年第3四半期の業績報告書によると、同社は2023年にVMwareを買収して企業向けソフトウェアの分野を拡大したが、半導体製造は依然として中核事業だという(注4)。

 VMwareを610億ドルで買収したことで、Broadcomは収益を大きく押し上げた。同四半期の連結売上高は131億ドルに達し、前年同期比47%増となった。

 一方、VMware買収の影響を除くと第3四半期の売上高は前年同期比4%増にとどまったと、キルスティン・スピアーズ氏(CFO《最高財務責任者》)は報告書で述べている。

 Broadcomの四半期収益のうちソフトウェアは58億ドルだったが、半導体ソリューションはより大きな割合を占め、総収益は73億ドルに及んだ。ホック・タン氏(社長兼CEO)は「AI向けデータセンターのイーサネットネットワーキングとカスタムアクセラレーターにより、AI関連の収益は2024会計年度に120億ドルに達すると見込んでいる」と述べた。

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