AI時代にメインフレームが脚光を浴びる理由とは? グローバル2500人を対象にした調査で判明CIO Dive

クラウド移行が進む中でもメインフレームは依然として重要な役割を果たしている。ベテラン技術者の退職に伴う人材不足や既存アプリケーションのモダナイズなどといった課題もあるが、メインフレームが脚光を浴びる理由とは。

» 2024年11月22日 07時00分 公開
[Matt AshareCIO Dive]

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 2024年10月9日(現地時間)に発表されたIBMビジネス価値研究所の報告によると、AI導入と複数の環境を統合して活用する「ハイブリッド・バイ・デザイン」への移行により、メインフレームの注目度が高まっているという(注1)。

AI時代にメインフレームが脚光を浴びる理由

 IBMビジネス価値研究所は調査会社のOxford Economicsと協力し、2500人を超える世界中の企業の技術幹部を対象に調査を実施した。AI時代にメインフレームが脚光を浴びる理由が明らかになった。

 回答者の4分の3以上が、「メインフレームベースのアプリケーションはDX計画に欠かせない」と答えている。2023年に実施された調査ではこの割合は3分の2に満たなかったがそこから増加した。回答者の5人中4人近くが「メインフレームはAI主導のイノベーションと価値創造を実現するために不可欠」との意見に同意している。

 「IBM Z」および「IBM LinuxONE」のプロダクトマネジメント担当バイスプレジデントであるティナ・タルキニオ氏は、「われわれはクラウドファーストの流れから戻りつつある。当社の顧客はより良い成果を得るために、これまでの全ての投資をどのように活用できるかに注目している」と話す。

 レガシーITの中核であるメインフレームが新進気鋭のAIを味方に付けている。AIモデルがオンプレミスの企業データという“宝庫”に着目することで、生成AIの導入はメインフレームの機能を再評価するきっかけとなった。

 ITサービス企業Ensono LPのブライアン・クリングベイル氏(CTO《最高戦略責任者》)によると、メインフレームは最も価値のあるビジネスデータの保管庫だという(注2)。

 「良質なデータがなければ、機械学習も高度なAI活用もできない」(クリングベイル氏)

 IBMによると、クラウドへの移行が進んだ現在でも、メインフレームは世界における取引額の70%の処理をしているという。「電車や飛行機、ホテルの予約はもちろん、クレジットカードのスワイプさえもメインフレームの関与なしでは難しいだろう」と、タルキニオ氏は2024年4月のIBM Zプラットフォームの60周年の際に述べた(注3)。

 企業がメインフレームアプリケーションをモダナイズし、柔軟なハイブリッドクラウドエコシステムを実現する中で、IBMはAI機能をさらに強化している。タルキニオ氏によると、2025年初めに発売される同社の次世代メインフレームは、大容量の「IBM Telum IIプロセッサ」と「IBM Spyreアクセラレーター」を搭載する予定だ(注4)。

 ソフトウェア企業のRocket Softwareの委託を受けて実施されたForrester Researchの調査によると、企業はメインフレームアプリケーションのモダナイゼーションに多大なリソースを投入しているが、そのプロセスは依然として課題が多いという(注5)。この調査では、全面的な書き換えの初回は失敗するのが珍しくないことが明らかになった。

 IBMは、COBOLアプリケーションをJavaベースのものに変換するために「IBM watsonx Code Assistant for Z」を学習させたが、多くの場合、元のプログラミングを再構築するだけで十分だ(注6)。

 「これまでのところ、ほとんどのクライアントはCOBOLが正常に動作するだけで非常に満足している。COBOLをモダナイズすることで、アプリケーションに必要な高いパフォーマンス特性を維持できる」(タルキニオ氏)

 IBMの報告によると、企業の4分の3近くがメインフレームアプリケーションをモダナイズするために生成AIツールを使用しているという。

 ベテランのメインフレームエンジニアが退職する中、企業は将来的な人材不足にも対応している。回答者の3分の2近くがメインフレームの人材を積極的に採用しており、半数強がメインフレームサービスをサードパーティーのサポートに頼っている。

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