バイデン政権は、ランサムウェア対策に向けて国連のサイバー犯罪条約を支持する方針を明らかにした。同条約はもともとはロシアが提案したもので、人権侵害の可能性に関する広範な懸念があることから物議を醸している。
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米国のバイデン政権は、物議を醸している国連のサイバー犯罪条約を支持する方針だ。この国際協定については、権威主義的な政権による政治的反体制派やその他のグループへの悪用を懸念する一部の米国議員やデジタル権利擁護者から批判が出ている。
この条約はもともとロシアが提案したもので(注1)、深刻なサイバー犯罪を捜査するための国際的な連携を求めている。例えば、ある国の法執行機関が他国に保存されている電子的な証拠にアクセスできるようになる。2024年11月10日(現地時間)のブリーフィングで、政府高官は「バイデン政権は非政府組織や人権擁護団体、テクノロジー企業、その他の利害関係者からの広範な働きかけを受け、この条約を支持することを決定した」と述べた。
これまではブダペスト条約によって国際的な連携が進められてきたが(注2)、ロシアと中国はその条約に参加していなかった。慎重に検討を重ねた結果、米国政府は、国連のサイバー犯罪条約がランサムウェアやその他の違法行為に対する世界的な取り組みを進展させる助けとなる可能性があると現在も考えている。
政府高官はブリーフィングで記者に対して「政府は利害関係者が提起した多くの懸念を理解しているものの、幾つかの理由から合意に従うことを決定した。第一に、この国連条約は、サイバー犯罪と戦うための国際的な連携に何らかの改善をもたらす可能性があると信じている」と語った。
バイデン政権はここ数カ月間で幾つかの外国政府に働きかけし、特に親しい同盟国の間でこの協定を支持する声が広がっていることを確認した。
ロン・ワイデン氏をはじめとする上院議員は(注3)、2024年10月下旬に国務長官のアントニー・ブリンケン氏や他の政府高官に宛てて書簡を送り、ロシアや中国、その他の権威主義政権が国連条約を国内の監視や検閲に悪用することを許さないよう求めた。
当局者は「米国が協定の運用に影響を与えるための最善の方法は、協定の枠内にとどまり続けることであり、それによって特定の政府による悪用の懸念に対応できる」と述べた。懸念の中には、ロシアや中国がこの条約を利用して政治的表現やその他の権利の抑圧が含まれている。
バイデン政権は、サイバー犯罪を取り締まるための国際的な支持を得るべく精力的に取り組んできた。特に、特定の国々が自国における犯罪ランサムウェア集団の活動を許容している状況への対応に注力している(注4)。
(注1)UN Cybercrime Draft Treaty Timeline(EFF)
(注2)The Convention on Cybercrime (Budapest Convention, ETS No. 185) and its Protocols(The Council of Europe)
(注3)Wyden, Merkley, Kaine, Markey, Van Hollen and Booker Warn U.N. Cyber Convention Could Justify Spying and Censorship By China, Russia and Other Authoritarian Regimes(RON WYDEN)
(注4)Counter Ransomware Initiative summit emphasizes arduous effort(Cybersecurity Dive)
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