AI活用が企業の成否を左右すると言っても過言ではない昨今、CFOはAIを精査し、AI投資における意思決定をするという重要な役割を担っている。AIで成果を上げるためにCFOや財務部門がすべきこととは?
この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。
カリフォルニア州サンディエゴを拠点とするSeismicは、営業やマーケティング、技術に焦点を当てたソリューションを通じて企業の収益向上を支援するためのイネーブルメントプラットフォームを提供する企業だ。同社のケリー・ライアン氏(金融サービス業界マーケティング担当シニアディレクター)は、ビジネスリーダーはAIの導入を成功させるために「AIリテラシー」のスキルを常に念頭に置く必要があると話す。
ライアン氏は2022年5月にSeismicに入社、2023年3月から現在の職務に就いており、それ以前にはSalesforce、The Independent Order of Foresters、Citigroupでキャリアを歩んできた。
「あらゆる技術投資において、正しく導入されなかったり適切な学習プログラムが伴わなかったりすると、企業が求めるような価値や導入効果、全社的な利益を高めることはできない」(ライアン氏)
OpenAIの生成AIツール「ChatGPT」が登場し、この技術の可能性に注目が集まってから2年、ビジネスリーダーはAIを企業全体に導入する最善の方法についてより戦略的に考え始めている。ライアン氏はAIの導入を検討する際の最初の一歩について次のように語った。
「最初にすべきことは、成長への最速かつ最も賢明な方法は何か、そしてどのようなユースケース(もしくはその組み合わせ)が事業の成長を促進する規模で課題を解決できるのかを意識的に考えることだ」(ライアン氏)
リーダーがAIを最大限に活用できる分野を考えるに当たり、確固たるチェンジマネジメント戦略を立てることは重要だ。ファイル転送サービス「ShareFile」のデビッド・ル・ストラット氏(CPO《最高製品責任者》 兼 CTO《最高技術責任者》)は以前「CFO Dive」に対し、「財務責任者は、企業のAI戦略を策定する際の技術投資やそれをどのように全社に展開するのが理想なのかに関して役割を担う存在だ」と語っている(注1)。
新技術への投資先の決定において、CFO(最高財務責任者)はより大きな責任を負うようになっている。多くのCFOはAIの可能性を楽観視しており、この技術に前向きだ。
「CFOはコストを注視しながら、AIがどの程度コスト削減に役立つかを見極めるだけでなく、AIが組織全体の成長を促進する重要なエンジンだと捉えているからだ。特に上場企業の財務責任者は、技術投資や支出の正当性を主張することを求められるようになってきている。技術スタックを合理化し、スタック内の全ての技術から最大限のROI(投資収益率)を引き出すことに焦点が当てられている」(ライアン氏)
技術投資で求められるROIを実現するためには、従業員に「AIリテラシー」すなわち技術を使いこなすために必要なスキルを身に付けるための時間とリソースを提供することが、CFOにとって極めて重要だ。
Seismicが金融サービス分野の専門家300人以上を対象に行った最近の調査では、93%が「新入社員向けのAI研修プログラム」を開始したと回答している(注2)。また、91%が自身のAIリテラシーのスキル向上に注力していると回答したという。
戦略的投資について考える際には、「職務に関係なくAI活用を成功させるためのスキルアップの機会をチームに提供すること」が重要な要素になるとライアン氏は話す。
しかし、多くの財務責任者がAIへの投資や導入によるメリット・デメリットの検討と、従業員のスキルアップのための戦略策定を同時に進めなければならない。
ライアン氏は、新しい技術ソリューションを財務責任者に提案するポイントについて次のように語った。
「われわれにとって重要なのは、CFOが取締役会や投資家、その他の利害関係者に報告する際に重視する指標に基づいて、提供するサービスやソリューションを的確に位置付けることだ」(ライアン氏)
今日のCFOは、AIの導入が財務部門の将来や自らの役割にどのような影響を及ぼすのかについて向き合い続けている。以前、CFO Diveがソフトウェア開発企業Datarailsのデータを引用して報じたところによると、財務責任者の半数以上がAIの導入により2026年までに財務チームが縮小すると予想しているという(注3)。人員削減を予定していない財務責任者もいるが、彼らも自動化によって財務プロセスの進め方が変化すると推測している。
ライアン氏は「AIは日々の業務の進め方にますます組み込まれていくだろう」と述べる。ただし、同氏は将来的にはこの技術のユースケースはより専門化していくとも見ている。
© Industry Dive. All rights reserved.