AIエージェントが経営にもたらす影響や、企業の生成AI戦略の行方とは。調査会社やコンサルティング企業、ITベンダーが予測するITトレンドから特に注目したい6点をピックアップした。
この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。
2024年、企業向けITは急激な変化を遂げた。多くの企業が生成AIツールの導入を進める中で、データやクラウドインフラにかかる負荷が増加した。
2025年は生成AIの活用がさらに進み、AIエージェントの導入を計画する企業も現れると見られる。IT部門はこれらの先進技術がもたらす混乱や、経営幹部からの絶え間なく追加される要求にいかに応えるべきか。
PricewaterhouseCoopers(PwC)やForresterといった有名企業による予測の中から、IT部門が特に注目すべき6点を紹介する。
2025年、自律的に業務をこなすAIエージェントの台頭や、AIの成熟度の高まりに対処するため、企業のソフトウェアベンダーへの依存度は高まるだろう。クラウド大手ベンダーは需要増加に対応できるようにインフラの構築を継続する。企業のCIO(最高情報責任者)は問題解決のために生成AIをどのように活用するかに関してこれまで以上に慎重になるだろう。
2025年、Forrester Researchは企業におけるデータやAIサービスの利用拡大によって、利用量をベースとした価格設定が急増すると予測する。利用量をベースとした価格設定は企業のソフトウェアコスト全体の10%まで拡大するとアナリストは予測している。
Forrester Researchのリズ・ハーバート氏(元副社長 兼 元主席アナリスト)は「利用量ベースの価格設定と、サブスクリプションベースの価格設定は別物だ」と話す。
利用量ベースの価格設定では、特定のユーザー数やライセンス数(シート数)を基に費用を支払うという、従来一般的だった価格モデルとは異なり、顧客はソフトウェアの使用量に応じて支払うことになる。
「一定数のクレジットを前払いして購入額に応じた割引を受ける方法や、クラウド利用料と同様に使用量に応じて課金される方法がある」(ハーバート氏)
2024年は数多くの生成AIのユースケースが発表され、ユーザー企業に複数の生成AIアプリケーションが提案された。2025年にCIOはROI(投資収益率)の高いユースケースを重視し、どのような業務に生成AIを適用するかをより慎重に選ぶようになる。
インシデント管理プラットフォームを提供するPagerDutyのエリック・ジョンソン氏(CIO)は次のように述べた。
「CIOは生成AIを何に使うべきかをより選別するようになるだろう。1ドルを投資して50セントしか得られないのか、それとも1ドルを投資して5ドルの価値を得られるのか、その選択が問われる」
調査会社Information Services Group(ISG)のアレックス・バッカー氏(ディスティングイッシュドアナリスト)によると、技術投資を最適化してアプリケーションの乱立を抑えるため、多くの企業が2025年にITサービス調達を最大手ベンダーに一本化しようと考えているという。
「ここで言う最大手ベンダーに統合される企業とは、ソフトウェアソリューションやハードウェアの販売事業者ではなく、技術運用を管理する企業、すなわちデータセンターの運営やメンテナンス、ソフトウェアのアップデート処理や古いアプリケーションの稼働を維持するプロバイダーのことだ」(バッカー氏)
ISGは、企業のIT予算のうち約5分の1がサービスプロバイダーに費やされていると推定する。IT予算の大部分はクラウドやデータモダナイゼーションサービスを幅広く提供する数社の大手ベンダー、および業界に特化したソリューションや生成AIのような新技術の導入戦略を提供するベンダーに充てられている。
「多くの企業の既存のIT環境は複雑になっている。このことにより、追加投資では付加価値が生まれない段階に達している。こうした企業が新しいサービスプロバイダーと契約する場合、自社のITシステム構成を示すだけでも1年はかかるだろう」(バッカー氏)
AWS(Amazon Web Services)やMicrosoft、Google Cloudは2025年もAIワークロードを支えるため、データセンターインフラに数十億ドルを投入し続けるだろう(注1)。Forrester Researchによると、これらのクラウド大手は2024年に米国における展開を拡大してきた。Microsoftはカリフォルニア州とジョージア州に新たな拠点を設立する計画を進め、AWSは17の地域を追加した。
Forrester Researchのリー・サスター氏(主席アナリスト)は次のように述べる。
「追加投資を必要とするプレミアムAIワークロードを巡る競争が激化する中、米国におけるハイパースケーラーの拡大は続くと予想される。Microsoftと資産運用会社BlackRockが提携し、NVIDIAとMGX Fund Managementをパートナーに迎えてAI向けデータセンターに300億ドルを調達したことからも分かるように巨額を投資せざるを得ない。同時に、市場シェアを維持するためにコモディティクラウドサービスへの投資も継続しなければならない」(サスター氏)
コンサルティング会社のPwCは、企業が利用するAIが単純なプロンプトに対応するシステムからより自律的なプラットフォームに進化するにつれて、経営幹部は人間の労働者に加えてAIエージェントを含めて拡大する労働力を管理するようになると予想する(注2)。
PwCのマット・ウッド氏(グローバルおよび米国商業技術・イノベーション責任者)は、「これはAIの成熟において非常に興味深い段階にある。なぜなら知能の累積的な効果をもたらすからだ。AIエージェントが増えれば増えるほど、AIエージェントは互いにコミュニケーションを取りやすくなる。そうなれば現在よりもはるかに強力な乗数効果がもたらされるだろう」と述べる。
多くの企業は生成AI活用の初期段階において、簡単に実現できる「低い価値」に焦点を当ててきた。専門家は2025年にそれが変わると予想している。
ITリーダーが何が必要か、どのように生成AIのリスクを軽減するか、他で得られた教訓をどう適用するかをより良く理解するにつれて、特定の役割や機能、ユースケースに合わせた技術の応用が進むと予測されている。
「企業のために生成AIを採用する成熟度はさらに進展する」とCrowdStrikeのCTO(最高技術責任者)であるエリア・ザイツェフ氏は「私たちは進化と反復を続けている」と述べる。
© Industry Dive. All rights reserved.