金融業界が生成AIに注目すべき理由 8つの使用例を基に解説

生成AIのデータ分析能力や、報告書を改善する機能により、金融業界における業務の一部を簡素化できる。8つの活用事例とともに詳細を確認しよう。

[Donald Farmer，TechTarget]

　金融業界のCFO（最高財務責任者）は、生成AIを活用して業務を改善できる可能性がある。一般的に金融業界は新しい技術に対して保守的といわれるが、十分な予防措置を講じれば、生成AIに対する保守的な態度を改められるだろう。

　金融業界における生成AIの活用には、財務報告および要約、予算の編成および予測などさまざまな事例が挙げられる。本記事は8つの活用事例を紹介する。

金融業界における生成AIの8つの活用事例

　金融業界における生成AIの主な使用事例を確認しよう。

1．財務報告および要約

　財務諸表や業績の要約は複雑な文書になる場合が多い。生成AIの活用により、重要なポイントを要約し、見落とされがちな要素を強調できる。

　AIは報告書の作成にも役立つ。AIの活用によってメッセージやトーンを調整することで、経営者および投資家、従業員など、ステークホルダー伝えやすい形で報告書を作成できる。

　しかし、生成AIは事実誤認を犯す可能性があるため、レビュワーが報告書の正確性をダブルチェックすべきだ。

2．予算の編成および予測

　財務業界は長年にわたり予測分析などのツールを使用して予算のシナリオを作成してきた。ただし、これらのシナリオは一般的に明確に定義される必要がある。生成AIの活用により、過去のデータに基づいて複数のシナリオを作成し、具体的に定義されていないパラメータを基にさまざまなパターンを試せる。これにより、将来の財務計画を柔軟に策定できるようになる。

　AIを活用した予測により、CFOはこれまで以上にデータに基づいた決定を下せるようになる。

3．経費管理

　クレジットカード会社は、消費者の明細を特定のカテゴリーに分類している。財務業界に属する企業も過去のデータによって訓練された生成AIを活用することで、より高度な形で同様の分類ができるようになる。

　生成AIを使って膨大な経費をカテゴリー分けすることで、財務業界で働く従業員が異常や不必要なコストを特定しやすくなる。

4．税務準備とコンプライアンス

　生成AIは、規制や審査のために監査の明確な証跡を持つ正確で詳細な文書を作成するのに役立つ。さらに、AIツールは税法を常に確認し、税法が改正された場合には対応策を提案できる。

　一定の条件の下で、生成AIは現行の規制に準拠した税務申告書などの報告書を準備できる可能性がある。ただし、そのプロセスには専門家のレビュワーが不可欠だ。

5．戦略的意思決定

　シナリオプランニングにおける生成AIの応用は、予算の編成および予測における活用と似ているが、この場合、生成AIはサプライチェーンの混乱やマクロ経済の変動など、将来起こり得るさまざまな事象をシミュレーションする。つまり、多岐にわたる未来の可能性を探索し、それに基づいて準備を整えるためのツールとして機能する。

　生成AIは、CFOがより良い決定を下せるように、カスタマイズされた緩和戦略を提案できる。

6．詐欺の検出と防止

　生成AIは過去に関する膨大なデータを基に学習し、異常を検出する能力に長けている。

　生成AIの能力は、詐欺の検出と防止に役立つだけでなく、顧客の支出および経済状況の変化などの新しい活動パターンを明らかにするのにも役立つ。これにより、CFOは新しいトレンドに対応する計画を立てられる。

7．M＆A

　財務チームの業務における最も時間のかかるプロセスの一つは、潜在的なM＆Aのためのデューデリジェンスの実施だ。このプロセスでは、数年分のさまざまな文書が必要となる。

　M＆Aにおいて、報告書や財務データを要約し、重要なポイントを特定する生成AIの能力は大きな価値を持つ。生成AIは、潜在的なM＆Aのシナリオにおける機会やリスクを特定するためにも役立つ。

8．従業員研修と文書化

　全ての企業には独自の運用手順とガイドラインがあり、財務業界の企業における手順は特に複雑になりがちだ。

　生成AIは、従業員向けの研修モジュールを開発し、それらの進化に合わせて財務ポリシーを自動的に更新できるだけでなく、特定の職種に合わせて各研修モジュールをカスタマイズできる。

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