AIの普及に伴ってIBMはクラウドを中心としたソフトウェア部門にも力を入れている。2025年夏頃には新製品の発表も控えており、ソフトウェアとインフラの両輪で大企業のニーズを取り込む狙いだ。
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IBMのアルビンド・クリシュナ氏(会長 兼 CEO)は、「AIを企業のデータに近いところで実行できるようにするための次世代メインフレームを2025年半ばに発表する予定だ」と、2025年1月29日(現地時間)の2024年第4四半期決算説明会で述べた(注1)。
「IBM z17」は2022年に発売した「IBM z16」に続くものだ。同社のジェームズ・カバノー氏(シニアバイスプレジデント 兼 CFO《最高財務責任者》)は「IBM z16はこれまでで最も長期間にわたるプログラムであり、売上の成長も最も安定している」と述べた。
「ハイブリッドクラウドとAIの時代において、IBM z16は当社の永続的なプラットフォームの価値を体現したものだ」(カバノー氏)
IBM z16のビジネスサイクルが終盤を迎えたことでインフラ部門の売上高が前年同期比7.6%減の43億ドルとなった。一方でソフトウェア部門の売上高は10%以上増加して79億ドルとなり、2024年第4四半期の同社の事業のおよそ45%を占めた。IBM全体の第4四半期の売上高は1%増の176億ドルだった。
企業がハードウェアの更新サイクルに差し掛かり、生成AIの導入が加速する中、IBM z17の一部を顧客に披露した。
同社のティナ・タルクィニオ氏(「IBM Z」および「IBM LinuxONE」製品管理担当バイスプレジデント)は、「IBM z17の処理能力は高性能な『Telum II』チップとAI最適化された『Spyre Accelerator』によって強化されている」と語った(注2)。2024年10月には2つの汎用オープンソースモデル「IBM Granite」を追加し、「IBM watsonx」のコーディングアシスタントの機能を拡張することでAIプラットフォームを強化した(注3)。
ソフトウェアとハイブリッドクラウドのソリューションがIBMのメインフレーム事業を上回る一方で、AIのコストやデータプライバシーに関する懸念が高まったことで大企業向けメインフレームの需要が息を吹き返している(注4)。
経済調査会社Oxford EconomicsがIBMの調査機関であるIBM Institute for Business Valueの委託を受けて実施した2500人以上の技術責任者を対象とした調査によると、技術責任者はAI導入におけるメインフレームの役割を高く評価している(注5)。ITインフラを提供するKyndrylが毎年発行するメインフレーム・モダナイゼーション・レポートのために実施した500人のIT幹部を対象とした調査でも同様の意見が見られた(注6)。
「当社のインフラソリューションは、顧客がデータに近いところでAI処理を実行できるよう支援する上で重要な役割を果たすため、今後さらなる機会が見込まれる」と、クリシュナ氏は述べた。
AIの導入はIBMの他の事業にも追い風となっている。カバノー氏によると同社は2024年第4四半期に生成AI関連の予約受注が15億ドル増加し、データおよびAIソフトウェア部門の売上高も前年同期比で4%増加した。
(注1)IBM 4Q 2024 Earnings Announcement(IBM)
(注2)AI adoption rush puts mainframes back in the spotlight(CIO Dive)
(注3)IBM doubles down on open models to help businesses customize AI(CIO Dive)
(注4)As mainframes turn 60, skill gaps threaten the enterprise workhorse(CIO Dive)
(注5)AI adoption rush puts mainframes back in the spotlight(CIO Dive)
(注6)An unlikely hero is running generative AI workloads: the mainframe(CIO Dive)
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