Geminiがメインフレームを近代化? キンドリルとGoogle Cloudが戦略的提携CIO Dive

企業のITインフラの中核を担うメインフレームの近代化は多くの企業にとって避けて通れない。キンドリルとGoogle Cloudの協業によって加速するメインフレームの近代化戦略とその背景に迫る。

» 2025年05月07日 07時00分 公開
[Matt AshareCIO Dive]

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 クラウド移行が進む現代においても、企業のITインフラの中核を担うメインフレーム。しかし、その近代化は多くの企業にとって避けて通れない。

 この状況に対し、Kyndrylは2025年3月27日(現地時間、以下同)、メインフレームのデータおよびアプリケーションの近代化を目的としたGoogle Cloudとの提携を拡大した。この提携の一環として、両社は「生成AIによるメインフレームの近代化を迅速化するプログラム」を立ち上げた。

 本稿では、両社の協業によって進展するメインフレームの近代化戦略とその背景に迫る。

AI時代に近代化するメインフレーム

 発表によると、このプログラムはGoogleの「Gemini」のモデルを活用し、同社の「BigQuery」の分析プラットフォームとのメインフレームの統合を容易にし、COBOLからJavaへのアプリケーションコード変換を支援するとともに、オンプレミスのデータを利用したAIトレーニングを可能にするという。

 Kyndrylのマーティン・シュレッター氏(CEO)は、2025年2月の決算説明会で次のように述べた(注1)。

 「Googleとの提携は、当社のメインフレームの近代化に関する包括的な戦略の一環だ。私たちは、メインフレームの近代化やアプリケーションサービスのスキルと、ハイパースケーラーとの提携を組み合わせることで、複数のクラウドプラットフォームにわたって顧客のIT環境の移行および管理、最適化、セキュリティ強化を実現する」

 クラウドへの移行が広がる中で、メインフレームは依然として企業のITエコシステムにおいて重要な役割を担っている。しかし、オンプレミスに取り残されたレガシーシステムの近代化は、技術のライフサイクルにおいて欠かせないステップだ。

 調査企業であるISGによると、サードパーティーのプロバイダーに加えて、生成AIによるプログラミングコパイロットやコーディングアシスタントが、複雑な近代化プロジェクトを円滑に進めるために必要なスキルや技術を提供しているという。

 ISGでメインフレームコンピューティングを担当するジョン・シック氏(コンサルティングリード)は、2025年3月25日の発表で次のように述べた(注2)。

 「サービスプロバイダーは生成AIを活用することで、クライアントに新たな可能性を提供している。メインフレームがこれまで担ってきた機能は、今なお多くの企業にとって不可欠であり、生成AIはその価値を最大化する新たな手段となる」

 ISGの調査によると、IBMが2025年の後半に次世代方のZシステムハードウェアを発表する準備を進める中(注3)、メインフレームを保有する企業の3分の1がプロセッサやストレージのアップグレードを予定しており、6社に1社は新たな装置の購入を計画している(注4)。

 ISGが2025年3月25日に発表した別のレポートによると、生成AIはメインフレームの近代化において有望な2つの道を切り開いたという。この技術は、クラウドへの移行を迅速化する一方で、メインフレームアプリケーションの寿命を延ばすためのツールもユーザーに提供している。

 同レポートにおいて、ISGは「生成AIによってアプリケーションを近代化する手法が大きく進化し、クラウドへのリプラットフォームではなく、メインフレームソフトウェアの再設計を選ぶ米国企業も出てきている」と述べた。さらに同社は、生成AIについて「より効率的なコードの検査やドキュメントの作成、テストを可能にし、再設計への需要を高めている」と指摘した。

 Kyndrylは、企業の移行と近代化を支援するために、3大クラウドプロバイダー全てと強固な提携関係を築いている。同社は2023年11月にMicrosoftとのAzureに関する提携を拡大し(注5)、Microsoftユーザー向けのERPの移行サービス「RISE with SAP」をポートフォリオに追加した(注6)。また、Kyndrylは2021年11月にIBMから分社化された直後の2022年2月にはAWS(Amazon Web Service)とも提携している(注7)(注8)。

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