「オンプレの企業向けAIが増える」 NVIDIAがそう言い切るワケCIO Dive

NVIDIAのジェンスン・フアン氏(CEO)は「企業向けのAIはオンプレミスで導入されるようになるだろう」と述べた。成長を続ける同社がそう分析する理由とは。

» 2025年07月14日 08時00分 公開
[Matt AshareCIO Dive]

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 NVIDIAのジェンスン・フアン氏(CEO)は2025年5月28日(現地時間)に行われた2026年第1四半期の決算説明会で次のように述べた(注1)。

 「AIエージェントの導入が急速に進む中で、当社は企業顧客にAI処理能力を提供する体制を整えている」

成長続けるNVIDIA 次のターゲットはオンプレミス

 AIの利用が急増する中で、大手GPUメーカーであるNVIDIAの四半期の売上高は前年同期比で69%増加し、441億ドルに達した。同社のコレット・クレス氏(エグゼクティブ・バイスプレジデント兼最高財務責任者)は決算説明会で「AIのワークロードは推論処理へと移行しており、AIファクトリーの構築が大きな収益を生み出している」と述べた。

 過去2年半でNVIDIAの業績は急上昇した。これは、大規模言語モデルの訓練と展開のために、AIに最適化されたデータセンターインフラに対してテクノロジー業界が莫大な投資をしたことが要因だ。ハイパースケーラーによるGPUの需要は依然として旺盛であるものの、同社は今後のマーケットがさらに活発になることを期待している。

 クレス氏によると、大手クラウドプロバイダーは四半期ごとに平均して約7万2000台の「NVIDIA Blackwell GPU」を導入しており、消費量はさらに増加する見込みだ。同氏は「例えば、Microsoftは既に数万台のBlackwell GPUを導入しており、今後はOpenAIを主要な顧客として、数十万台の『GB200 GPU』を導入する予定だ」と述べている。

 1年前に発表された「GB200 Grace Blackwell Superchip」は(注2)、大規模なラックに搭載される高性能プロセッサであり、モデルの訓練をはじめとする計算負荷の高いAIワークロードを処理するために設計されている。NVIDIAは2025年3月に後継機であり、より高性能なラックシステムである「GB300 NVL72」を発表した(注3)。

 クレス氏によると、クラウドプロバイダーは2025年5月初めにこの新しいプロセッサのサンプルを使用し始めており、NVIDIAは今四半期中に出荷が開始されると見込んでいるようだ。

 ハイパースケーラーへの展開を続ける中で、NVIDIAは企業向け製品ポートフォリオを拡充し、企業との提携を一層強化した。同社は2025年5月にGPUを搭載したノートPCとワークステーションのラインアップを発表し(注4)、企業顧客への提供に向けてPCメーカーとの連携を図る。

 「全ての企業のデータをクラウドに移行するのは難しい。そのため私たちはAIを企業の内部に導入するつもりだ。企業向けのAIはオンプレミスで導入されるようになるだろう。なぜならば、非常に多くのデータが依然としてオンプレミスの環境に存在するからだ」(フアン氏)

 フアン氏は2025年5月28日に「企業向けAIはまさにこれから本格的に始まろうとしている」と述べ、オンプレミス環境向けのAIハードウェアの新しいラインアップに言及した。クレス氏は、NVIDIAが同年3月にYum Brandsと締結したAI開発に関連するパートナーシップを強調している(注5)。

 クレス氏によると、KFCとPizza Hut、Taco Bellの親会社であるYum BrandsとNVIDIAが協力して、2025年のうちに500のレストランにAIを導入し、最終的には6万1000店への導入に拡大するという。同氏は「注文の受け取りを効率化し、運営を最適化し、サービスを向上させる」と語った。

 この取り組みはYum BrandsがAI分野で踏み出す大きな一歩となる。2024年、同社はAI関連のビジネスを営むスタートアップ企業と連携し、Taco Bellのドライブスルー向けチャットbotを開発した(注6)。また、この度の発表によると、今回の提携はNVIDIAにとっても外食産業への初進出となるようだ。

 Yum Brandsは自社独自のプラットフォームである「Byte by Yum」を支えるためにNvidiaの技術を活用し、AI音声エージェントおよびコンピュータビジョンツール、パフォーマンス分析機能を実現した。

 「企業向けAIはオンプレミス環境で展開可能であり、既存のITと統合されていなければならない。コンピューティングやストレージ、ネットワーキングの全ての面においてだ。私たちは、この3つをついに統合し、市場に展開するつもりだ」(フアン氏)

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