米国の金融機関が安全なAI導入のための管理基準策定で独自の動き 欧州との違いはCIO Dive

CitiやMorgan Stanleyなどの大手銀行は、AWSおよびMicrosoft、Google Cloudと連携し、AI導入で独自路線を進む米国金融機関が主要クラウド各社と安全なAI導入のガイドラインの策定に動き出した。

» 2025年08月26日 10時00分 公開
[Matt AshareCIO Dive]

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CIO Dive

 金融業界における技術の標準化を推進するThe Fintech Open Source Foundation(FINOS)は2025年6月24日(現地時間)に、特定のベンダーに依存しないAI導入の標準を策定するため、銀行業界とテクノロジー企業の連携を促す取り組みを開始したと発表した(注1)。

AI技術をより安全に導入するために

 Bank of Montreal(BMO)およびCiti、Morgan Stanley、Royal Bank of Canada(RBC)をはじめとする世界的な大手銀行がAmazon Web Services(AWS)とMicrosoft、Google Cloudなどのハイパースケーラーと連携して「AIサービスの共通管理基準」の策定に取り組む。Goldman SachsやRed Hatもこのプロジェクトを支援している。

 金融業界においてAIの導入が進む中、FINOSのメンバーは2024年に「AI導入準備のためのワーキンググループ」を立ち上げ(注2)、リスク軽減のためのフレームワークのドラフトを作成した。こうした取り組みは現在も続いており、開発者向けのリアルタイムなコンプライアンス検証用ツールキットの作成を目指す「共通管理基準の取り組み」とは別に進められる予定だという。

 AIとその商業利用に関する明確かつ一貫した規制の枠組みが存在しない中で、各銀行は金融業界全体で適用可能なオープンソースの導入基準を策定しようとしている。

 AIを巡る今回の動きはCitiが主導して成功させた、パブリッククラウドの導入においてコンプライアンスやレジリエンス、セキュリティの基準を整理・統一する取り組みとよく似ている(注3)。

 2023年10月(注4)、FINOSは金融機関とテクノロジー企業の支援を受けて「共通クラウド管理基準」をオープンソース化した。このとき策定された共通クラウド管理基準は主要なクラウドプロバイダー間で管理基準を統一し、一般的なクラウドサービスや脅威に対する標準的な分類体系を確立するものだった。

 FINOSが取り組んできたクラウドに関する多くの懸念は、米国財務省も問題視していたものだ。財務省は2023年5月に「クラウドサービス運営委員会」を立ち上げ(注5)、金融機関と規制当局の間で共通の用語集を整備し、業界全体がクラウドへ安全に移行するためのロードマップを策定しようとしている。

 米国財務省は、銀行業界におけるAI導入についても意見を示しており、2024年3月に発表した報告書の中で(注6)、サイバーリスクへの警鐘を鳴らすとともに、金融機関に現行の法律や規制を順守するよう勧告している。

 取引報告やデータプライバシー、その他の銀行業務に関する法律は数多く存在する一方で、AIに関する規制の動きはドナルド・トランプ大統領の下で鈍化している。

 現在の政権は、原則としてAI技術を規制しない立場を取っており、各州によるAI規制の取り組みを10年間にわたって一時停止するという提案を打ち出した(注7)。2025年5月、この一時停止措置は下院で可決され、同年6月21日には上院で手続き上の関門を突破した。

 FINOSはより明確な基準を整えることで加盟企業がAI技術を本格的に拡大および活用できる道が開かれることを期待している。

 FINOSは次のように述べた。

 「この国際的な協力体制は、金融業界全体で次第に広まりつつある認識を反映したものだ。それは、規制のある市場でAIを導入していく上で直面する共通の課題に、各組織が独自の対応をしていたのでは限界が訪れるというものだ」

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