AISecOpsへの期待は高まる一方 それでも導入できない企業の言い分Cybersecurity Dive

セキュリティ分野においてもAI技術の活用が期待されている。一方、セキュリティベンダーの調査によると、AI技術の導入に課題を持つ業界があることが分かった。その内容は。

» 2025年09月08日 07時30分 公開
[Eric GellerCybersecurity Dive]

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Cybersecurity Dive

 セキュリティベンダーArctic Wolfの調査レポートによると、73%の企業がAIをセキュリティ対策に導入している。一方、業界によって導入率に差があることも分かった。2025年8月27日(米国時間)に発表した(注1)。

 Arctic Wolfの調査レポート「Navigating the Human-AI Relationship for Security Operations Success」は、従業員200人以上の企業に勤務するITおよびセキュリティ担当者1950人を対象に2025年5月に実施した調査の結果に基づく。 調査は、Arctic Wolfからの委託で調査会社Sapio Researchが実施した。

セキュリティ運用のAI技術導入 遅れているのはどの業界?

 調査レポートによると、AI技術の導入が最も進んでいる業界は「金融サービス」で、回答者の82%が導入済みと答えた。続いて、「ハイテク/IT/通信/ソフトウェア」と「製造/建設」が77%、「ビジネス/専門サービス」は75%だった。

 一方、「エネルギー/電力」の導入率は59%だった。これは、「政府/国防/非営利組織」の60%、「運輸/物流」の64%よりもやや低い水準となった。

 AI技術を使ったサイバー防御が選択肢として広がる中(注2)、エネルギーや運輸といった物理的な安全性が問われる業界は、他の業界と比べて導入に前向きであるとは言いにくい。Arctic Wolfはこの傾向について、「障害が発生すれば、壊滅的な影響や人命リスクが生じる」と指摘する。続けて「こうした業界は、新技術を導入するよりも前に、他の業界が経験した内容から学ぶ傾向がある」と述べている。

 調査結果からは、地理的な条件に基づく差異も明らかになった。AI技術をサイバー防御に導入した割合を地域別に見た結果、米国の企業は82%と割合が最も高く、北欧諸国は59%で最も低かった。

 AI技術はSecOps(セキュリティ運用)の自動化に貢献する可能性を示している。その能力を検証したいと考えている企業の動向についても明らかになった。「SOC(Security Operation Center)でAI技術を使う計画がある」と答えた回答者は73%(注3)、「脅威予測と防御にAI技術を利用する考えがある」は72%、「AIモデルや技術を活用して脅威検出能力を向上させることを期待している」は70%だった。

 ただし企業は、AI技術だけでSecOpsの全業務を運用できるとは考えていない。人間ならではの判断や作業が必要な業務についても認識している。調査では、SecOpsのさまざまな業務について、より貢献できるのは人間とAI技術いずれか尋ねた。 その結果、セキュリティ規則への自社の準拠状況を追跡する業務において、人間の方がAIより優れていると考えていると答えた回答者は54%だった。脅威データに付随する文脈の理解でも同様の傾向が見られた。一方、脅威の特定では69%の回答者が、運用ミスの最小化では66%の回答者が、AI技術が人間よりも優れていると答えた。

 それでも、AI技術の導入後、SecOpsにおける人間の関与が「最小限」になると答えた回答者は全体の28%だった。

 AI技術への期待は高まりつつあるものの、導入のペースは緩やかなものになるとみられる。「AI技術を導入する際の最大の課題は何か」を聞いた結果、最も多かったのが「データのプライバシーやデータ漏えいのリスク」(33%)、次に「導入費用」(30%)、「業界における事例不足」 (28%)、「AI技術を監督する人材の不足」(27%)、「AIツールの管理方針の未整備」(24%)(注4)と続いた。

 一方、AI技術に対する経営層の関心の高さがうかがえる回答もあった。「AI技術の導入に経営層が反対している」と答えた回答者は全体の16%、「自社が利用しているITベンダーが、AI技術を搭載した製品やサービスを提供していない」と答えた回答者は14%だった。

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