Microsoftは、ボリュームライセンス契約を通じて提供してきたオンラインサービスの価格を標準化すると発表した。Microsoftの狙いは何か。ユーザー企業による脱Microsoftの流れが生まれるのか。
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Microsoftは2025年8月12日(米国時間)、オンラインサービスの価格体系を刷新する方針を発表した。新たな価格体系は同年11月1日から適用され、「Enterprise Agreement」(EA)や「Microsoft Products and Services Agreement」(MPSA:マイクロソフト製品/サービス契約)をはじめとするボリュームライセンス契約において、全てのオンラインサービスを単一の価格体系に統一する。これにより価格レベルの区分がなくなり、Microsoft.comで公開されている価格に準拠する形となる。
価格体系の刷新は、Microsoftのクラウドサービス「Microsoft Azure」など一部のサービスで既に導入されている「一貫した価格体系」を拡大するものだ。オンプレミスソフトウェアの価格に変更はない。
アイ・ティ・アールの三浦竜樹氏(プリンシパル・アナリスト)は今回の変更について次のように話す。
「(今回の大口割引廃止は)2018年にライセンス数が2400未満の『レベルA』とされる企業のボリュームディスカウントの廃止が、『レベルD』(1万5000ユーザー以上の企業)、つまり全ての企業に適用されることになったものだ」
価格体系の刷新は、中国企業向けのオンラインサービス契約「Online Services Premium Agreement」(OSPA)も対象とする一方で、米政府系機関や教育機関と提携している全世界の組織向けの価格リストは対象外とする。新しい価格体系は、ユーザーの次回更新時、または顧客が新規にオンラインサービスを購入する際に自動的に適用される。
Microsoftは今回の改定について、「顧客があらゆる購買経路で同じ基準に基づいた価格を把握できるようにする取り組みの一環であり、将来的なライセンス戦略においても重要な意味を持つ」としている。
ユーザー企業のIT予算への影響はどうか。三浦氏は「大企業ほど廃止されるボリュームディスカウントが大きいことから、IT予算への影響は避けられないだろう。各サービスの利用状況を可視化し、ライセンス数やSKU(E5/E3、Copilotのアドオンなど)を見直し、最適化を図る企業が増えると予想している。その中で、『Dynamics 365』など脱Microsoft製品、サービスを検討する動きも出てくると予想される。ただし、『Microsoft 365』からの離脱は少ないのではないかと見ている」と指摘する。
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