「HPEによるJuniper買収」の“短期では見えない影響”とは? 専門家に聞く

短期的な影響は限定的だが、市場やネットワーク担当者の在り方には中長期的な変化を促す可能性がある――。HPEによるJuniperの買収を巡り、こうした見方が出ている。どういうことなのか。専門家の見解から整理する。

» 2026年03月31日 08時00分 公開
[鳥越武史ITmedia]

この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。

 「AI、ハイブリッドクラウド、ネットワークを網羅した、最も広範な製品ポートフォリオの確立を目指す」。Hewlett Packard Enterprise(HPE)のネットワーク事業トップを務めるラミ・ラヒム氏は、ネットワーク機器大手Juniper Networks(以下、Juniper)を買収した狙いをこう説明する。

 32人目の従業員として入社したJuniperでキャリアを積み、直近までCEOとして同社を率いてきたラヒム氏は、HPEのネットワーク事業を統括する立場で統合後の戦略を描く。その戦略の根底には「ネットワークはITインフラの中核だ」という一貫した認識がある。実際、AI時代においてネットワークの重要性は一層高まっている。

 AIの学習や推論では、処理が複数のデバイスやITインフラに分散する傾向があり、各所にあるコンピューティングリソースやデータ、アプリケーションを連携させて一体的に機能させる必要がある。ネットワークには、これらを低遅延かつ高速に接続し、AI関連のワークロード(アプリケーションやプロセス)を安定して動作させる重要な役割がある。

 ネットワークがこうした役割を果たすには、単体の機能や性能の充実だけではなく、サーバやストレージ、ソフトウェアを含めた連携が不可欠だ。HPEはJuniperの買収によってネットワークを強化すると同時に、ITインフラの各要素を幅広く自社で担うことで、複雑化するAI時代の接続要件に対処しやすくする。Cisco Systems(以下、Cisco)など他の大手ベンダーも、同様の方向性で包括的な製品提供を強化している。

 2025年7月にJuniperの買収を完了したHPEは、両社の技術と製品群を統合した新たなネットワーク事業を本格的に始動させた。統合の進め方について、HPEは比較的明確なメッセージを打ち出している。特に注目すべきなのが、Juniperの「Mist」とHPEの「HPE Aruba Networking Central」という2つのネットワーク管理ツールの扱いだ。

 HPEは両者を単純に一本化するのではなく、マイクロサービスベースのアーキテクチャを生かして、機能を相互に取り込みながら進化させる「クロスポリネーション」(相互融合)のアプローチを採用する。既存ユーザー企業の投資を保護しつつ、段階的に機能統合を進めることで「変化に伴う混乱が生じないようにする」とラヒム氏は強調する。

 国内市場に目を向けると、現時点でユーザー企業やパートナーからの反応は「おおむねポジティブだ」と、国内でHPEのネットワーク事業を統括する日本ヒューレット・パッカードの執行役員、本田昌和氏は語る。Juniper買収後、ユーザー企業やパートナーへの説明を積極的に進めており「大きな混乱の声は聞こえていない」(本田氏)。むしろAI時代を見据えたネットワーク製品の強化に期待を寄せる声もあるという。

 ITインフラ分野では近年、大型買収に伴う製品戦略の変更やライセンス体系の見直しが、ユーザー企業に影響を及ぼしてきた。BroadcomによるVMware買収など、コスト構造やサポート方針が大きく変わる例もある。今回のHPEによるJuniper買収に対しても、表向きは歓迎しつつも「自社環境への影響を慎重に見極めたい」といった慎重な反応が想定し得る。大企業への影響は限定的となる可能性があるものの、HPEは中小企業向けネットワーク事業「HPE Networking Instant On」の売却に言及しており、今後も変化が見込まれる。

 HPEによるJuniperの買収は、ネットワーク市場、ひいてはITインフラ全体にどのような変化をもたらすのか。こうした動きはユーザー企業にどのような影響を及ぼし、ネットワーク担当者はどう動くべきなのか。IT調査会社のガートナージャパンとIDCジャパン、ネットワークインテグレーターのネットワンシステムズ、ITコンサルティングのアクセンチュアの専門家の見解を基に読み解く。

IDCジャパン:AIOps時代に“ロックイン”の是非を見極めるべし

 今回の買収では、特にMistが大きな存在感を示すとIDCジャパンは指摘する。ネットワーク製品の評価軸がハードウェアスペックから、AIによる運用自動化(AIOps)へとシフトしていることが背景にあるという。今後はITインフラ製品の垂直統合化の進展を前提に、ベンダーロックインの是非を戦略的に判断する重要性が高まると同社はみる。

回答者

写真

草野賢一氏(IDCジャパン/Senior Research Director, Network & Security)


買収が市場とITインフラにもたらす影響

 エンタープライズネットワーク市場、特に大企業や大規模ネットワークを保有する企業にとって、今回の買収は大きな転換点となります。これまで無線LANを含むキャンパスネットワークの分野では、Ciscoを筆頭にHPE、Juniperの3社が主要ベンダーとして競合してきました。今回の買収によって、実質的な選択肢が2つの大きな陣営に絞られることになります。これはユーザー企業にとっては選択肢が絞られることになりますが、製品力の強化というポジティブな側面も期待できます。

 特に注目すべきなのはJuniperのMistです。近年のネットワーク製品の選定基準は、ハードウェアの性能や価格だけではなく、AIやクラウドなどの技術を使って運用管理をいかに自動化し、AIOpsを実現できるかといった点にシフトしています。運用管理の自動化を支えるMistなどのAIは、今後のベンダー選びにおける重要な視点になるでしょう。

 AIのビジネス利用が進む中、AIの学習や推論のためのコンピューティングリソースを、ネットワークの遅延やボトルネックに阻害されることなく最大限に活用したいというニーズが、ユーザー企業の間でさらに高まると考えられます。HPEはこうしたニーズに応えるために、既存製品とJuniper製品を組み合わせて、AI用途向けに検証を済ませた垂直統合インフラの提供を強化する可能性があります。

 ITインフラの垂直統合化という方向性は、HPEに限らず、総合ITインフラベンダー各社がより鮮明に打ち出すと考えられます。ネットワーク製品についても、今後は単体だけではなく、AIによる運用管理の自動化やセキュリティといった機能を含めた、より包括的な視点での比較検討が重要になるでしょう。

ネットワーク担当者が取るべき短期的・中長期的アクション

 HPEは製品ラインアップや保守サポートを急激に変更しない姿勢を示していることから、Juniper製品の既存ユーザー企業は、短期的には過度に身構える必要はありません。ただし直近でのリプレースや新規導入を計画しているユーザー企業は、統合後の両社の製品ロードマップをベンダーに直接確認して、製品の将来的な変化の可能性を把握することをお勧めします。

 中長期的にはITインフラの垂直統合化と、AIによる運用管理の自動化を見据えた体制構築が避けられないでしょう。これまではサーバやネットワークで担当が分かれていましたが、垂直統合化によって職能を超えた運用管理が必要になる可能性があります。ネットワーク単体ではなく、GPUサーバやセキュリティを含めたITインフラ全体を最適化できる知見を、組織横断で蓄積することが重要です。

 垂直統合化はベンダーロックインと隣り合わせですが、ロックインは常に悪というわけではありません。シングルベンダーによる効率向上とコスト低減を優先するか、マルチベンダー構成で自由度を確保するか。自社のニーズを見定め、腹をくくって戦略的に判断することが、自社の求めるITインフラを実現できるかどうかに直結します。

ガートナージャパン:Cisco中心の構図は不変 AIOps評価は可視化が鍵

 ネットワーク市場におけるCisco中心の構図は、今回の買収後も直ちには変わらないとガートナージャパンはみる。製品選定ではAIOpsが焦点になる一方、国内では運用の慣習により、AIの価値が見えにくい可能性があると同社は指摘。ネットワーク担当者はまず自社の運用負荷を可視化した上で、負荷軽減に向けてMistなどのAIの価値を積極的に評価することが重要になるとの見方を示す。

回答者

写真

池田武史氏(ガートナージャパン/バイス プレジデント アナリスト)


買収が市場とITインフラにもたらす影響

 国内ITインフラ市場に今回の買収が与える影響は、現状では限定的だと考えられます。国内のユーザー企業は総じて、いまだCisco製品を中心としたエコシステムに深く依存しているからです。HPEやJuniperは一定の存在感はあるものの、両社の統合はCiscoの牙城を即座に揺るがす動きではなく、ユーザー企業は直接的な影響を実感しにくいでしょう。

 製品選定においては、AIの重要性がより高まると考えられます。これは単なるトレンドへの追随ではなく、AIOpsによって、いかに運用管理の負荷を軽減するかが焦点となります。買収の影響として技術面で注目すべきなのは、Juniperが特に強みを持つ、無線LANを中心とするキャンパスネットワークの分野です。特にMistは、AIを活用した運用管理の自動化や障害の自己修復といった機能に特色があります。

 国内ユーザー企業においては、ネットワークの構築や運用管理を外部委託する傾向があり、こうしたAIのメリットを実感しにくい課題があります。特にデータセンターネットワーク分野についてはクラウドシフトが進む中、ユーザー企業が自ら機器を選定・投資する負担は軽減傾向にあります。一方で昨今のAIブームの影響もあり、国内ユーザー企業の間でも、ここ1年ほどで運用管理におけるAI活用への関心が高まり始めており、風向きが変わる可能性はあります。

 Juniper製品の既存ユーザー企業が考慮すべきリスクは、一時的な提案力の低下です。現状は表面化していないものの、巨大組織であるHPE内の調整によって、製品展開が停滞しないかどうかを注視すべきです。対抗するCiscoもAI機能を強化すると考えられることから、今後の勢力図の変化には注視すべきでしょう。

ネットワーク担当者が取るべき短期的・中長期的アクション

 まずは現在の運用管理に費やしている手間を客観的に把握し、見直すことが欠かせません。苦労を一人で背負い込むのではなく、MistなどAIを使った運用管理ツールを積極的に評価し、障害対処や監視といった業務を効率化するための投資を検討すべきです。試験導入を通じて、工数削減の可能性を早期に見極めるとよいでしょう。

 クラウドシフトと共に、中長期的には「ネットワーク機器の物理的な管理に特化した専門担当者」という役割は減少すると考えられます。ネットワーク担当者は、密接な関係のあるセキュリティ分野にも目配りをして「セキュアなコネクティビティを具現化するプロフェッショナル」を目指すべきです。

 市場環境の変化やAIの普及を踏まえると、ネットワーク担当者は自身の役割を再定義する必要が生じる可能性があります。キャリアパスの一環として、AIで運用管理を省力化し、そこで生み出した時間をビジネス貢献へと転換することに挑むのもよいでしょう。例えばトラフィックの挙動を分析することで、従業員のアプリケーション利用状況を可視化し、経営や事業部門に対して業務改善の糸口となるインサイトを提供するといった役割を担う道もあります。

ネットワンシステムズ:統合メリットの裏に依存リスク 出口戦略を前提に設計を

 ネットワークの現場に近い立場にあるネットワンシステムズは、今回の買収によって垂直統合インフラが大手ベンダー間での競争の舞台になるとの見方を示す。こうした統合の進展はベンダー依存のリスクを伴うことから、中長期的には移行性や代替性の確保を前提としたITインフラの設計・検証が重要になると指摘する。

回答者

写真

平河内竜樹氏(ネットワンシステムズ/東日本第2事業本部 サービスプロバイダー事業戦略部 第2チーム エキスパート)


写真

笠井貴之氏(ネットワンシステムズ/東日本第2事業本部 サービスプロバイダー事業戦略部 第1チーム マネージャー)


買収が市場とITインフラにもたらす影響

 今回の買収は、ネットワーク市場における強力なプレイヤーを生んだことは事実です。ただし短期的な視点では、Juniper製品やHPE製品の既存ユーザー企業への影響は、極めて小さいと考えられます。一般的に統合直後は製品の保守サポート終了や統廃合が懸念点となりますが、現時点では主要な製品ポートフォリオは継続する見通しです。例外としてHPEのInstant On事業が切り離しの対象になることが明らかになっていますが、全体としては混乱の少ない統合となるでしょう。

 製品分野別に見ると、データセンターネットワークやWANの分野では、両社の得意とする顧客層が異なることから、相互補完的なメリットが生まれます。特にデータセンター向けには、サーバやストレージ、ネットワークの各製品を集約して、垂直統合インフラとして提供できる体制がより強固になりました。ITインフラの構築や運用管理の効率化を実現する手段として、さらには対Ciscoや対Dell Technologiesといった観点でも、こうした垂直統合インフラは有力な武器になります。

 買収に伴う影響が比較的大きいのは、キャンパスネットワークと運用管理の分野です。これらの分野では製品ラインアップや顧客層が重なるものの、両社それぞれに特徴があります。当面はコンポーネントの共通化や連携などを通じた、相互補完的な強化が進むでしょう。特に競争力の中核になるのがMistです。他分野の製品との連携などを経て適用範囲が拡大し、AIOpsの加速につながるとの期待があります。こうした動きが他ベンダーにも広がり、将来的にAIによるITインフラ全体の自律的な運用管理が当たり前になれば、ユーザー企業には大きな恩恵になると考えられます。

ネットワーク担当者が取るべき短期的・中長期的アクション

 HPE製品やJuniper製品の既存ユーザー企業は、まず製品ライフサイクルや保守体制の変化を精査して、両社の統合の影響を明確にする必要があります。現時点では目立った混乱は確認できませんが、将来的な製品の統廃合を見据えて、情報のアップデートを怠らないことが重要です。

 中長期的には、特定ベンダーに過度な依存をしない「出口戦略」を意識して、ITインフラを見直すべきです。ベンダーの将来的な方針転換の際、容易に他に移行できないことは大きなリスクとなります。垂直統合化による効率化のメリットを享受しつつも、並行して競合製品の調査や試験導入を進めるなど、代替可能性を維持する取り組みが重要です。

 ITインフラの運用管理の主役は、人からAIへとシフトします。まずは小規模でもAIOpsを導入し、その効果を検証すべきでしょう。AI活用でネットワーク担当者の業務は効率化されますが、垂直統合化が進む中では、サーバやセキュリティまで含めた広範なスキルが求められます。ベンダー任せはコスト増のリスクが高まるため、自社でノウハウを蓄積し、主導権を持って運用管理に取り組めるかどうかが、ユーザー企業の競争力を維持する鍵となります。

アクセンチュア:AI活用の前に可視化・シンプル化 主導権維持が鍵

 アクセンチュアには今回の買収に限らず、市場の動向がユーザー企業のネットワークに及ぼす影響を聞いた。同社はITインフラ製品の垂直統合化が進む中でもユーザー企業が主導権を維持し、まずは可視化・シンプル化を進める重要性を指摘する。AI活用を見据えて、ネットワーク担当者には運用効率化だけではなく、技術をビジネス価値創出につなげる役割への転換が求められるとの見方を示す。

回答者

写真

坂梨邦弘氏(アクセンチュア/テクノロジー コンサルティング本部 クラウド ファースト ネットワーク グループ日本統括 マネジング・ディレクター)


市場の動向が企業のネットワークにもたらす影響

 ネットワーク市場ではベンダー集約と垂直統合化が進み、単一ベンダーに幅広い要素をワンストップで任せられるようになっています。一方でユーザー企業には、過度なベンダー依存の回避が求められます。将来のITインフラ構想で主導権を維持するには、外部委託を活用しつつも企画設計部分の丸投げを避け、ユーザー企業自身が中身を熟知し、構築や運用管理の手綱を握り続ける姿勢が不可欠です。

 現在の企業ネットワークは、技術の継ぎ足しやクラウドシフトによる境界消失、外部委託によるブラックボックス化が重なり、極めて複雑化しています。AI活用で運用管理の効率化を図るにも、まず現状の可視化・シンプル化が急務です。複雑なままでは、新技術導入時の整合性確保や影響範囲の特定が難しく、迅速な活用が阻害されるからです。

 今後のAI活用では、機密保護のための「ソブリンAI」や、ロボットと融合した「フィジカルAI」といった取り組みが広がると考えられます。これらを支えるには、広帯域・低遅延なネットワークが不可欠です。特にフィジカルAIでは、ロボット間をナノ秒単位で連携させる高度な時刻同期や、配線制約を超える高速な無線通信技術が極めて重要になると考えられます。

 セキュリティの観点からネットワークの在り方を考えると、通信を信用しない前提でアクセスごとに認証・認可する「ゼロトラスト」への転換が必須となります。中長期的には工場などの「OT」(産業における制御・運用技術)との密接な連携も不可避です。「1秒も止められない」というOTの厳しい可用性要求を理解し、IT側が専門性を広げて包括的かつ安全な運用管理を実現することが、今後のネットワークの質を左右します。

ネットワーク担当者が取るべき短期的・中長期的アクション

 短期的には、ネットワークの徹底した可視化とシンプル化に注力すべきです。その上でAIや、プログラムでITインフラを配備する「IaC」を活用して、運用管理を自動化するのが基本的な方針となります。

 ネットワーク領域だけで自動化を進めても、クラウドサービスやサーバといった他領域と足並みをそろえないと、ITインフラ全体での効率化につながりにくくなります。全体最適の視点で自動化を進めることが不可欠です。自動化で余力が生まれたら、それを隣接領域の知見習得に充てて、それぞれの領域の担当者を尊重しながら“二人三脚”で連携を図ることで、深い専門性を持ちながら自身のスキルを広げる「T型人材」としての成熟にもつながります。

 中長期的にネットワーク担当者は、ITインフラの維持管理にとどまる「コストセンター」としての立場から脱却し、ビジネス価値創出に貢献する姿勢が求められます。例えばフィジカルAIに求められるナノ秒単位の時刻同期など、高度な通信技術を経営層に説明、提案できるのは、専門家ならではの強みです。「自らの知見や技術をいかにビジネスに生かすか」を追求することが、将来的に自らの役割を広げることに役立つでしょう。

買収の先にある「AI」「垂直統合」の進展に注視 担当者の役割も変化か

 総じて見れば、HPEのJuniper買収がユーザー企業に与える影響は、現時点では限定的だと考えられる。製品ラインアップや競争環境が直ちに大きく変わるとは考えにくく、既存ユーザー企業が契約変更や追加投資といった短期的な対処を迫られる状況にはない。

 専門家が今回の買収の核だと口をそろえたのがMistであり、こうしたAI機能は今後のネットワーク市場における競争力の中核になり得る。ネットワーク機器ではハードウェアによる差異化が難しくなる中、AIを前提とした運用効率化を評価軸とする動きは、今後一層強まる可能性がある。

 HPEは、米司法省からJuniper買収の条件として、Instant Onの売却に加えて、Mistのソースコードの一部を他社にライセンス供与することを求められている。ただし対象範囲は限定的で、専門家の間では、これが直ちに競争力を大きく損なう措置にはならないとの見方が強い。

 ITインフラ全体における垂直統合化の進展も、専門家が注目する動きだ。AI活用を見据えて、ネットワークを含むITインフラ全体を一体で提供する動きが加速しており、今回の買収もその流れに沿っている。こうした中、ベンダーロックインは単純に回避すべきものだとは言い切れなくなりつつある。

 移行性や代替性を確保する重要性は変わらない。一方で効率化や運用負荷の低減に加えて、分散環境下でのAI処理の連続性を重視する動きも強まりつつある。こうした中で、あえて単一ベンダーへの依存を戦略的に受け入れるという選択肢も現実味を帯びる。

 AI活用の進展はネットワーク担当者の役割にも変化をもたらす。運用管理の自動化によって単純作業の負担は軽減される一方で、その余力を新たな運用や隣接領域に振り向ける必要が生じ、結果として業務の総量は大きく変わらない可能性もある。

 重要なのは、AIに業務を委ねる受け身の姿勢にとどまらず、AIを活用して自らの価値を高める視点だ。可視化や自動化で得た知見を基に、ITインフラ全体の運用改善やビジネス価値の創出に踏み込めるかどうかが、今後のネットワーク担当者の役割を左右すると考えられる。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アイティメディアからのお知らせ

注目のテーマ

あなたにおすすめの記事PR