サポート詐欺2.5倍増、標的は法人従業員にも 詐欺の「新たな入口」とはセキュリティニュースアラート

トレンドマイクロが2026年上半期の個人向け脅威動向レポートを公開した。サポート詐欺の報告件数は前年同期比2.5倍に増え、標的は法人の従業員にも広がっている。同社が警告する、詐欺の「新たな入口」とは何か。

» 2026年09月05日 07時00分 公開
[ITmedia]

この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。

 偽のセキュリティ警告を画面に表示して電話をかけさせるテクニカルサポート詐欺(以下、サポート詐欺)が、企業にとっても見過ごせない脅威になりつつある。個人を狙う手口だったはずの詐欺が、法人の従業員にも矛先を向け始めているためだ。

 トレンドマイクロは2026年8月20日、「個人セキュリティ脅威動向レポート 2026上半期」を公開した。2026年1〜6月の国内の脅威動向を「詐欺」と「AIのリスク」の2つの観点でまとめている。同社のサポートセンターに寄せられたサポート詐欺の報告は5499件と前年同期比2.5倍に増え、全ての月で前年実績を上回った。2026年4月中旬からは大手ECサイトや国税庁を、5月からは「人事評価」といった社内連絡を装う文面を確認しており、標的は法人の従業員へ広がっている。

サポート詐欺の報告件数推移(出典:トレンドマイクロのWebサイト)

 一方で上半期の変化は、詐欺の量の増加にとどまらない。同社は、利用者が日常的に頼る「ある場所」が詐欺の入口になり始めていると警告する。

詐欺の「新たな入口」はどこか

 同社が新たな入口として挙げるのは、生成AIチャットbotの回答だ。

 トレンドマイクロは、OpenAIの生成AIツール「ChatGPT」やGoogleの「Gemini」の回答を経由して、偽のショッピングサイトやフィッシングサイトへ誘導される事例を確認した。公式サイトのURLを尋ねる検証では、詐欺サイトが提示される場合があった。検索結果に表示される「AIによる概要」でも同様の問題を確認したという。

生成AIチャットbotが詐欺サイトを提示した事例(出典:トレンドマイクロのWebサイト)

 リスクはAIの回答にとどまらない。商品ページに埋め込んだ見えない指示によって、AIショッピングエージェントが利用者の予算を30ドルから85ドルへ引き上げ、別の販売者へ誘導する事例も確認した。正規の権限内で実行されるため、従来の防御では検知が難しい。

 攻撃を準備するスピードも速くなって。公開情報のみを用いた同社の検証では、従来はリサーチャー2人が約1週間かけていた標的分析からフィッシングサイト生成までの作業を、AIを組み込んだツールが30分以内に完了した。一方、AIによる詐欺やディープフェイクを「自信を持って見破れる」とした人は8.5%にとどまる。同社は、AIが案内したURLも別の経路で確認する習慣が重要だとしている。

偽サイト3.3万件に電話番号は11個

 サポート詐欺は、従来のWeb広告からメールを起点とする誘導へ広がった。同社は165日間で、偽警告サイトへ誘導するメールを約1338万通観測した。1日平均は約8万1000通に上り、宛先の約94%が「.jp」ドメイン、配信は日本時間9〜21時に集中していた。

誘導先の偽警告サイトは3万3000件を超え、約9割が1日限りで使い捨てられていた。構築には正規クラウドの静的Webホスティング機能が悪用されており、検知が難しい。ただし、4721件の偽サイトに記載された電話番号はわずか11個だった。1つの番号が数百のサイトで使い回されており、同社は対策の手がかりになるとみている。

 SNS型投資詐欺については、同社が潜入調査を実施した。誘導、2〜3週間かけた信頼構築、架空取引、金銭の要求という4段階で進行する構造を確認している。初期誘導やアシスタント、著名人を装う投資家、口座開設担当、カスタマーサポートといった役割ごとに「LINE」アカウントを使い分ける分業体制で運営されている。

銀行の送金モニタリングを避けるために暗号資産での支払いを指示する事例が増え、銀行に取引目的を尋ねられても「投資」と言わないよう被害者に口止めする事例も確認した。2026年6月には、LINEから「Zoom」や「Signal」へ会話の場を移す事例も見つかった。

 警察官を装う「ニセ警察詐欺」では、警視庁を装う偽サイトに「ビデオ通話機能」が追加されていた。攻撃者がディープフェイクで別人の顔を合成し、警察官や検事の役としてビデオ通話に登場する事例もあった。同社は、一度電話を切って正規の番号に自分からかけ直すことが最も確実な対策だとしている。

 同レポートは、個人ができる対策として次の5点を挙げている。

  • メールやSMSのリンクからは支払わず、公式アプリなどで請求を確認する
  • 詐欺電話対策アプリを活用する
  • パスワードの使い回しをやめ、パスキーや多要素認証を利用する
  • AIの回答や検索結果も別の経路で裏付けを取る
  • 家族で見守り、声を掛け合う

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。

アイティメディアからのお知らせ

注目のテーマ

あなたにおすすめの記事PR