パナソニックグループで、従業員や元従業員とその家族約33万人分の個人情報が、社内で利用を禁止している外部の生成AIサービスにアップロードされた。同グループは、データについて「今後二次利用されない」と説明する。その根拠は何か。
この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。
パナソニック オペレーショナルエクセレンスは2026年10月23日、子会社のパナソニック デジタルと進める人事情報システム導入プロジェクトで、プロジェクトメンバーが従業員や元従業員とその家族の個人情報を含むデータを、同社が利用を禁止している外部の生成AIサービスにアップロードしたと発表した。同社はパナソニック ホールディングスの100%出資子会社で、グループの経理や人事、法務などの間接機能を担う。
今回の件に関して同社は、外部からの不正な操作によるものではなく、プロジェクトメンバーのルール違反によるものだとしている。
アップロードされた情報は、2026年4月時点で人事情報システムに登録されていたデータの一部だ。従業員約7万5000人、元従業員約17万8000人、その家族約8万1000人の合計約33万4000人分で構成されている。
同社は同年9月29日、本事案を個人情報保護委員会に報告した。アップロードされたデータは削除し、「今後二次利用されないことを確認している」とする。同社が「二次利用されない」と判断した根拠はどこにあるのか。
パナソニック オペレーショナルエクセレンスによると、事案の判明直後に当該メンバーは、生成AIサービスのチャット履歴と、業務に使ったPC内の対象データを削除した。利用した生成AIサービスの名称や、データをアップロードした目的、事案が判明した経緯は、今回の発表では明らかにしていない。
同社はアップロードされたデータについて、当該生成AIサービスの運営事業者に照会した。事業者の回答は2点ある。一つは、当該メンバーがデータをアップロードした時点で、データをAIの学習に利用する機能が無効になっていたことだ。
このため、他の利用者が関連する質問をしても、当該データが回答に使われることはないという。
もう一つはデータの保持期間だ。利用者がデータを削除しても、事業者はセキュリティと法令順守のために、削除日から30日間データを保持する。ただし、この期間中のデータは事業者内で厳格にアクセス管理され、監査などの要請以外ではアクセスされないという。判明直後に削除したデータは、30日の保持期間を過ぎた2026年10月25日以降は事業者内にも残らないとしている。同社が今回の事案を公表した2026年10月23日の時点では、データはまだ事業者内に保持されていたことになる。
同社は、自社の調査と事業者への照会結果から、現時点で対象者の個人情報が一般に公開された事実や、不正利用による具体的な被害は確認されていないとする。今後二次利用されないことも確認できたという。
対象データの内訳は次の通りだ。日本地域のグループ共通人事情報システムを利用する会社に在籍する従業員約7万5000人と、元従業員約17万8000人(1978〜2026年度の退職者。事業譲渡先への転籍者を含む)については社員番号や住所、電話番号、メールアドレスが含まれる。氏名は含まれていない。従業員が緊急連絡先として自ら登録していた家族については氏名や住所、電話番号、メールアドレスが対象だ。人数は、従業員の家族が約5万5000人、元従業員の家族が約2万6000人(2016年以降に退職した元従業員の家族のみ)だ。
再発防止策として同社は、個人情報の取り扱いルールと生成AIサービスの利用管理を見直すとともに、関係者への教育と啓発を強化するとしている。退職者とその家族向けには、問い合わせフォームと電話の専用窓口を設けた。なお、今回の公表は、個人情報保護法で求められる本人への通知に代わる措置(本人通知の代替措置)として行ったものだ。対象者自身が対応する必要はないという。
従業員が業務データを生成AIサービスに入力することによる情報漏えいのリスクは、「ITmedia エンタープライズ」でも取り上げてきた。「生成AIはデータ流出の主要経路に 従業員がついやってしまう漏えいパターン」では、LayerX Securityの2025年の年次報告書を基に、従業員の生成AI利用の67%で、企業の統制が及ばない個人アカウントが使われていることを紹介した。
では、企業が把握していないところで従業員が生成AIを利用して起こる、こうした事案を防ぐためにどうすればいいのか。
生成AIツールの利用を禁止することは、もはや現実的でない可能性がある。一部のツールの利用を認めている場合も、会社が許可している生成AIツールによる出力精度への不満や、認められている以外の利用方法を試したいといったニーズが「シャドーAI」につながりかねない。
「『だめです禁止です』を捨てる Visional流“誘導型セキュリティ”改革とは?」では、ツール利用をルールで制限しないというVisionalグループの方針を紹介した。
この中で同グループの若井大佑氏(ITプラットフォーム本部長、最高情報セキュリティ責任者)は「ルールに基づいてツールの利用を制限するのではなく、自由に使わせつつ、モニタリングすることによって安全に使えているかどうかを確認し、危ない場合は注意するようにしています」と語る。この方針は、生成AIが幅広い業務に浸透する今、多くの企業の参考になりそうだ。
シャドーAIへの機密流出をブロック Microsoftがセキュリティ製品群をアップデート
中小企業の40%はルール未整備 調査で判明したAIセキュリティの死角
シャドーAIに「ログイン情報」を渡している割合は? Oktaの実態調査で判明
シャドーITのリスクは「こう変わった」 “悪意なき情報漏えい”にどう立ち向かう?Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。