画面1■the Microsoft Conference 2005


写真1■デベロッパー&プラットフォーム統括本部
デベロッパービジネス本部
プロダクトマーケティンググループ
マネージャ
磯貝 直之氏



写真2■サーバー プラットフォーム ビジネス本部
アプリケーションプラットフォームグループ
SQL サーバーチーム
シニアプロダクトマネージャ
斎藤 泰行氏

新しいSQL ServerとVisual Studioのタッグ、実現するのはITライフサイクルの効率化

 「マイクロソフトが目指しているのはITライフサイクル全体の効率化です。そこでSQL Server 2005とVisual Studio 2005の連携が鍵になってきます。」

 開口一番、Visual Studio 2005のプロダクト マーケティング グループ マネージャを務める磯貝直之氏(マイクロソフト株式会社デベロッパー&プラットフォーム統括本部デベロッパービジネス本部)はそう切り出した(写真1)。

 ITライフサイクルには3つの循環するフェーズがある。まず、システムの構築が行われる「設計・開発・テスト・デバッグ」、次に構築されたシステムを実際に使えるものにする「配置・運用・管理」、そしてシステムがビジネスにおける真価を発揮する「活用」だ。

 これらは相互に独立したものでも、直線上に配置された一方通行なものではない。第1フェーズの構築では、十分なパフォーマンスだけでなく「運用者がいかに管理しやすいか」を念頭に入れなくてはならない。第2フェーズの運用では、管理者の負荷低減だけでなく「エンドユーザーがいかに使いやすいか」を考える。そして、第3フェーズのエンドユーザーは実際に利用した経験を基にフィードバックを行う。磯貝氏は「最初から完全なシステムを生み出すことはなかなか難しい」と語る。

 ITライフサイクルにおいて、それぞれのフェーズは密接な連携を持っている。では、フェーズごとにどのような課題を抱えているのかを浮き上がらせながら、SQL Server 2005とVisual Studio 2005がそれらをどのように解決していくのかをみていきたい。

構築フェーズに求められる課題、それは生産性の向上

 「構築に求められる課題は、生産性をいかに向上させるか。ブレークダウンすれば、コーディング量を減らすこと、スキルを含む既存の資産を有効活用すること、そしてチーム開発を円滑に行うこと」と磯貝氏は語る。

 コーディング量を減らすことは、コストを下げつつ品質を向上させることを意味する。コーディングにかかる時間を減らせれば、開発者にとって永遠の課題ともいえる「納期」を短くすることができる。そして何よりも、従来コーディングに使っていた時間をテストに回すことで、作り上げたシステムが期待どおりに動くのかという検証を十分に行う余裕ができるのだ。

 磯貝氏は「開発言語は手段に過ぎません。特定の開発言語に縛られる必要はまったくなく、目的のシステムやエンジニアの既存スキルに合わせて選択することができれば、生産性を向上させることができるはずです。Visual Studio 2005では、Visual Basic、C#、C++、Java 言語のほか、パートナー製品も加えれば COBOL など幅広い言語を使うことができます」と続ける。

 また、コーディングにミスはつきものだが、人力でどこが間違っているのか、どう直したらいいのかを見つけ出すのはたいへんな作業になる。磯貝氏によれば「Visual Studio 2005では、ミスを発見するだけでなく、具体的な解決策の提示と、その解決策に応じて自動的にコードを修正する機能が強化されました」とのことだ。

SQL Server 2005とVisual Studio 2005の連携

 では、SQL Server 2005とVisual Studio 2005の連携とは具体的にどのようなものだろうか。

 まず、データベースアプリケーションの開発においては、ストアドプロシージャやストアドファンクション、トリガなどをVisual Studio 2005で作りこむことができる。SQL Server 2005に.NET Framework実行環境が搭載されたため実現した。また、Transact-SQLを含むコーディングやデバッグがVisual Studio 2005上で可能になったということは、すでに紹介したような開発支援機能の恩恵を受けられるということだ。

 さらにスキーマの定義などデータベースの設計もVisual Studio 2005で可能となった。磯貝氏は「設計からアプリケーションの開発・配置までを一貫してVisual Studio 2005上で行えることは、構築フェーズ全体の生産性に大きく影響してくるはずです」と予想する。

開発プロセスはノウハウに過ぎない

 Visual Studio 2005 Team Systemにより、チームによるシステム構築の生産性が向上する。チーム開発において重要なことは、チームを構成する各エンジニアが、いつ、何をすべきなのかを明確にして、各エンジニアのタスクをスムーズに連携させることだ。

 磯貝氏は「開発プロセスや開発方法論はさまざまですが、果たしてそれらは確実に機能しているでしょうか。開発プロセスはノウハウ、もしくは作法に過ぎなくて、プロセスを覚えることよりも、むしろチーム全体に対していかに徹底するかがポイントになってきています」と語る。

 実際、どのような開発プロセスを採用するのかはプロジェクトマネージャに任されているが、現場で手を動かすエンジニア レベルで徹底するのは難しい。そこでVisual Studio 2005では、「プロセス テンプレート」によって開発プロセスを開発環境に統合することで、エンジニア レベルの徹底を支援する仕組みを持っている。

 開発環境と開発プロセスを統合するメリットは大きい。たとえば、一定のテストを行ってからソースコードをチェックインするというプロセスがあった場合、開発環境と開発プロセスが独立している状態では、本当にテストを行わなくても物理的にはチェックインできてしまうということも考えられたが、開発環境と開発プロセスが統合されていれば、十分なテストの行われていないソースコードがチェックインされようとしても、自動的に開発環境の側でブロックすることができる。

管理者の課題はアプリケーションの確実な配布

 構築されたシステムは、次に実際の稼働環境へと展開される。ここ数年は業務アプリケーションがWebアプリケーションへ置き換えられる傾向が強かったが、背景にはクライアント側にWebブラウザだけがあれば機能するため、アプリケーションの配布が楽になるという意図があった。しかし、磯貝氏は反論する。「Webブラウザは、あくまでもWebを閲覧するためのソフト。アプリケーションを操作するための道具としては万能ではない」と。

 アプリケーションの配布の課題は、大きく3つある。確実にエンドユーザーに配布するための効率化、手間や労力をどれだけ減らせるのかというのが1つ目。2つ目はDLLの競合。3つ目はアップデートやメンテナンスの効率化だ。

 今回、新たに「クリックワンス」という仕組みが提供される。サーバにWindowsアプリケーションを置き、そのURLをエンドユーザーに配布する。エンドユーザーはWebブラウザでアクセスしてリンクをクリックすると、アプリケーションのダウンロードとインストールが完了するというものだ。

 このように書くとただのダウンロード配布に見えてしまうが、アプリケーションの更新をバックグラウンドでチェックしている点がクリックワンスのキモだ。アップデートがあれば通知されるし、アップデートした結果、不具合が発生すればロールバック機能により問題を回避することもできる。

 もちろん .NET Framework 2.0 ベースであるため、DLL 競合の心配も不要だ。

 ただし、マイクロソフトはWebアプリケーションを否定しているのではない。事実、Webアプリケーションの配置もVisual Studio 2005では強化されている。磯貝氏は「Webアプリケーションでうまくいっているのであれば、Webアプリケーションでいい。狙っているのは、Webアプリケーションにうまく置き換えられていない業務アプリケーション」と語る。

さらに可用性を向上させたSQL Server 2005

 サーバの可用性を阻害する要因として、ハードウェア障害、人為的ミス、そして計画的なメンテナンスなどが挙げられる。つまり可用性を向上させるためには、これらの障害要因をすべてクリアする必要があるといえる。

 「要因は多種多様ですが、それら1つ1つに確実に対応できてこそ、高可用性を実現したといえます」と語るのはSQL Server 2005のシニアプロダクトマネージャである斉藤泰行氏(マイクロソフト株式会社サーバープラットフォームビジネス本部)だ。

 SQL Server 2005では、従来のフェール オーバー クラスタリング機能に加え、プリンシパル、ミラー、ミラーリング監視という三位一体型のデータベースミラーリングを新たに搭載することによるハードウェア障害に対応する。また、テーブル単位でスナップショットを作成して人為的ミスによる損害を防ぐ。定期的なメンテナンスに対してもオンラインのままチューニングを実施したり、メモリの追加を再起動させることなく動的に実施することが可能だ。斉藤氏は「1秒でも早く復旧できるかということに重点を置いたデータベースサーバになりました」という。

すぐに、みんなで使えるBIを標準で提供

 ITライフサイクルの3つ目のフェーズ「活用」を実現するのが、SQL Server 2005で強化されたビジネスインテリジェンス(BI)機能だろう。「SQL Server 2005の目指したBIは、すぐに使える、みんなで使えるBIです」と斉藤氏。

 同じBIでもエンドユーザーの役職によって参照する視点が異なるはずだ。既存のBI製品は主に企画担当者をターゲットとした機能を提供している。だが、一般の営業職ユーザーが利用したいのはもっと簡易な定型レポートだろうし、社長などの経営層ユーザーならば全体をモニタリングして、どこが弱点なのか、どうしたら改善できるのかをブレークダウンを望むだろう。

 「みんなで使う」ために必要なのはデータ統合(ETL)だ。そして、会社の上位レイヤーに属するユーザーが必要とするのはOLAPやスライスダイスなどの分析ツールだ。現場のユーザーにはWebブラウザやエクセルをユーザーインターフェイスとしたBIが使いやすいだろう。SQL Server 2005の特長は、このような多機能なBIをすべて標準で提供することに尽きるかもしれない。

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 こうしてみると、マイクロソフトの狙いは「適所適材」「柔軟な選択」を実現することのように見える。
 11月17日から全国7カ所で開催される「the Microsoft Conference 2005(MSC2005)」では、記念すべき第10回目にふさわしく、SQL Server 2005、Visual Studio 2005、そしてBizTalk Server 2006の正式発表イベントとなり、より具体的な手法などさらに詳しい情報がセッションで展開される。

 キーノートや技術セッションの他にも、Q&Aコーナーやインフォメーションラウンジ、抽選会など、多彩なプログラムが用意されているので、これらの製品、マイクロソフトの最新新製品、テクノロジー、ソリューションについてもっと詳しく知りたいと思うユーザーはぜひ会場に足を運んでほしい。

提供:マイクロソフト株式会社
企画:アイティメディア 営業局/制作:ITmediaエンタープライズ 編集部/掲載内容有効期限:2005年12月31日