Sun、オープン技術の全面採用で群雄割拠のクラウドサービスに参入:CommunityOne East Report
沈黙を守ってきたSunがクラウドコンピューティング分野に参入すると正式に表明した。オンラインストレージとアプリケーション稼働環境の提供を軸にしたサービスを夏に発表する。
米国時間の3月18日、ニューヨーク州ニューヨークのMarriott Marquisで米Sun Microsystemsが開発者向けのカンファレンス「CommunityOne East」を開催した。トピックは米IBMによるSun買収の話ではなく、Sunがクラウドコンピューティング分野への参入を表明したことだった。
Sunが同日に打ち出したのは、オープンな技術を取り入れ、開発者や学生、企業の従業員向けにクラウドを展開する「Open Cloud Platform」と呼ぶプラットフォームだ。Java、MySQL、OpenSolarisなどで開発したアプリケーションを同社のデータセンターで稼働させ、ネットワーク経由でその機能をユーザーに割り当てる。
Open Cloud Platformの柱は、仮想マシンやネットワークの機能を提供する「Compute Service」、GUI(グラフィカルユーザーインタフェース)経由で仮想的なデータセンター環境を構築できる「Virtual DataCenter」、JavaやPythonに関連したAPIを公開する「Open API」、ストレージの容量やプロトコルなどをネットワーク経由で提供する「Storage Service」――の4つ。Sunが展開するクラウドサービスを総称するものという位置付けだ。
具体的には「Cloud Storage Service」および「Cloud Compute Service」と呼ぶサービスを2009年の夏に提供する。開発者や学生、ベンチャー企業の従業員などが個人ごとに仮想的なストレージやアプリケーション稼働環境を構築できる機能を提供するもので、「パブリッククラウド」と呼ばれるサービス群だ。
Cloud Storage Serviceは、インターネット経由でストレージの機能を活用できるサービス。仮想化によって1つの巨大なストレージリソースを作り、さまざまなユーザーに従量課金で提供する米Amazonの「Amazon S3」に対抗する。
Cloud Compute Serviceは、Sunのハードウェアを使って、拡張性のあるアプリケーションの稼働環境をインターネット経由で提供するもの。開発者はGUIでアプリケーションごとにOSやプロセッサ、ストレージをプロビジョニングし、独自のアプリケーション環境を自由に作れる。OSはOpenSolaris、Linux、Windowsから選択できる。1月に買収した米Q-layerのノウハウをクラウドサービスに転用した。
「開発者や学生などがクラウド上に仮想データセンターを作るためのあらゆる技術をそろえる。専任の運用管理者を必要とせず、個人ごとにアプリケーションの稼働環境をセットアップできる」。クラウド・コンピューティング担当上級副社長兼CSO(チーフサステナビリティオフィサー:最高環境責任者)のデイブ・ダグラス氏は、Sunのクラウドサービスが仮想データセンターを作る点を強調し、サーバやストレージなどの機能ごとにサービスを提供するAmazonやGoogleのクラウドサービスとは一線を画す立ち位置を取ることを説明した。
Sun Microsystemsは1984年に「The Network is The Computer」を表明し、ネットワークこそがコンピュータだと強調した。そこから約25年を経て、インターネット経由でインフラやソフトウェア、開発環境を柔軟に構築・利用するクラウドコンピューティングの時代が到来しつつある。
GoogleやAmazon、IBMなどが既に独自のサービスを打ち出すなど、クラウドサービスの分野は群雄割拠だ。副社長兼クラウド・コンピューティング担当のルー・タッカーCTO(最高技術責任者)は新サービスを「クラウド上で自分だけの仮想データセンターを構築でき、AmazonやGoogleのクラウドとは異なるもの」と述べる。今後は企業の情報システムをクラウド環境にする「プライベートクラウド」関連のサービスも提供する見通しだ。クラウドサービスでは沈黙を守ってきたSunだったが、オープン技術を取り入れたクラウドで巻き返しを図る。
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