競争が激化するx86市場――IBMとHP、そして富士通:伴大作の木漏れ日(3/3 ページ)
富士通の経営方針説明会が3月30日に開催された。富士通はx86強化を表明したが、日本および世界市場におけるIBMやHP、NEC、Dellといったライバル企業の壁は低くない。
富士通の収益構造
富士通の売上高の内、国内の占める割合はおよそ65%程度、海外は35%にすぎない。ただし、海外に関し、日本国内と比較してプラットフォームビジネスに代表されるハードの売上高が占める割合が高い。
一方、日本国内は歴代の社長が主にシステムインテグレーション(SI)部門の出身であったことから、SIなどのノンハードの売り上げが大きい。
以前、インタビューした折「まさかSEを大勢海外に送ることも出来ない」と話したことから、海外ではSIというよりは、強力なハードウェアを含めたプラットフォームを売りたいという期待が出てくるのは無理もない話だ。
英国での成功例(Fujitsu Service)をそれ以外の地域でも広げていこうとするのは理解できる。その場合、鍵になるのはデータセンターソリューションだ。良質で安価なサービスを提供する上で安価で高性能、使いやすいサーバを製品ラインアップに持つことは成功の鍵だ。だが、この成功は英国での成功にすぎない。この成功例を取りあえずEUに持ち込みたい、その役割を新生FTSに託したいというのが、野副社長の思惑なのだろうが、これは相当難しいと断じざるを得ない。
EUという共通通貨市場は、出来上がった諸国連合ではあるが、独立国家の集合である点は変わりなく、英国のビジネスモデル(英国政府のITアウトソーシング)を持ち込もうにも各国独自の制度や慣習は残ったままだ。成功が約束されているとは言えない。
ベスト4への道
x86サーバで成長の道程で「価格攻勢をかけるのか」という質問もあった。これに関してはキッパリと否定したが、わたしの意見は違う。現在のシェアを打開する道は価格と性能しか残されていない。それは、PCでNECが築いた「98王国」を圧倒的な価格性能比を持つ「FM/V」で瓦解に導いた時のような戦い方以外残されていないからだ。
確かに、この道は長く厳しい道には違いない。しかし、上位3社の内、いずこのシェアを奪うことができるかを考えると、最も容易な相手はDellだろう。同社の最大の強みは価格の優位性だが、チャネル支配力も、ユーザーのブランドロイヤリティもほかの2社と比べると弱い。ブランド力、技術力いずれをとっても富士通なら勝てる可能性がある。それ以外のIBMとHPに戦いを挑むのはかなり無理がある。
ただし、Dellのユーザー資産を狙うとしても簡単な話ではない。先ほども記したが、Intelの販売先2位はDellだ。つまり、Dellも部品の調達コストでは相当安い。富士通がその辺をどのように打開していくのかが、x86サーバで世界市場ベスト4を勝ち取る唯一の道だ。それは、同時に富士通が世界市場で生き残る道でもある。ただし、「労多くして得るもの無し」という可能性はわきまえなければならないが。
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