Xeonボックスのパレードを締めくくった日本HP:e-Day
一連のNehalem搭載サーバの発表を締めくくる格好で日本HPが自慢のProLiantサーバを投入した。市場のリードするProLiantは、経済が厳しい中でもその強みを十分発揮するだろうが、優れた管理ソフトウェアスイートの紹介がなかったのは残念だ。
新年度に入ってからXeon 5500番台(コードネーム:Nehalem EP)を搭載したx86サーバの発表が続いたが、日本ヒューレット・パッカードは4月9日、それを締めくくるべく、自慢のProLiantサーバを一挙11製品投入した。
ProLiantサーバは、旧コンパックの流れを汲むx86サーバの雄であり、国内市場で30%のシェアを狙い、特に先行参入したブレードでは50%を占める目標を掲げている。同社の第1会計四半期(11〜1月)には、世界的な経済の冷え込みを受け、2割から3割の出荷台数減となったようだが、逆にシェアは数ポイント上げたという。
「厳しい中から革新的技術は生まれるし、ベンダー淘汰の過程でHPが改めて評価されて選ばれる。IT業界の正念場は、われわれにとっては好機だ」と日本HPでエンタープライズストレージ・サーバ事業を統括する松本芳武執行役員は話す。
既にライバルたちがXeon 5500番台を搭載したx86サーバを発表しているので、わたしの関心はハードウェアではないところにあったのだが、残念ながらこの日の発表はx86サーバに重きを置いたものになった。朝、外電で調べて期待してきたが、仮想化環境を管理・自動化する一連のソフトウェアの強化は紹介されなかった。
同じ日に米国で発表されたのは、「Business Service Automation」ソフトウェアだ。BSAと略すと、何か別のものと間違えてしまいそうだが、こちらの「HP BSA」は、仮想化されたデータセンターの管理業務を自動化することによって、コスト効率だけでなく、サービスの品質も高めてくれる一連のソフトウェアスイートだ。
仮想化技術は、IT資源を有効に活用したり、ビジネス環境の変化にも追従できる柔軟さを実現してくれるが、それらとは裏腹に運用面では複雑さが増し、ストレージやネットワークの知識も併せ持つ必要がある。HP BSAは、ある程度の自動化によってこうしたチャレンジを克服し、企業が仮想化の恩恵をフルに享受できるようにしてくれるという。
もしそうであればなおさらだが、新しいProLiantサーバと一緒にその強化も発表すべきだった。デルの第11世代サーバ発表に際しても、Egeneraの仮想化ソフトウェア「PAN Manager」のバンドルが触れられなかったが、どちらも残念だ。
参考までに、HP BSAの強化ポイントを紹介しておこう。
先ずは、Storage Essentialsと呼ばれるツールでは、プール化されたストレージ資源をVMwareの仮想環境に最適配置する機能が追加された。また、HP Operations Orchestrationと呼ばれるツールを通じては、仮想サーバを分単位で迅速に配備する機能や、VMware、Citrix XenServer、およびマイクロソフトのHyperVが混在する仮想環境を一元的に管理する機能などが新たに提供されるという。
日本HPの名誉のためにも、東京での発表が「箱」だけだったとは言わない。エントリーモデルでも運用管理機能が大きく改善されたほか、仮想サーバ環境への移行を支援する「リスク精査」と「構築支援」のサービスも発表されている。本来であれば後者は、日本HPとしても「サービス込み」で受注したいところだろうが、厳しい経済環境の下、企業の財布の紐(ひも)も固い。「箱だけでいいから、という顧客が増えている」と、ある日本HP社員は嘆く。
「EDSとの合併もあり、日本でもシステムインテグレーションの能力強化が求められているが、一朝一夕にはいかない」と松本氏は話すが、優れたツールがあるのだから、先ずはその紹介に力を注いだらどうだろうか。
e-Day
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