Microsoft Online Servicesの価格は高いか、安いか:e-Day
マイクロソフトが企業向けオンラインサービスの価格を発表した。スイートの価格はやけに刻んだ1567円。これは高いのか、安いのか。
マイクロソフトが企業向けオンラインサービスの価格を発表した。ExchangeやSharePoint、LiveMeetingなどが含まれた「Business Productivity Online Suite」(BPOS)は、1ユーザー当たり月額1567円(税別)と決まった。
やけに細かく刻んだ価格となっているのは、米国価格に中長期的な変動を織り込んだ為替レートを適用したからだという。LotusLiveの価格をまだ発表していないIBMは、これを十分に考慮して値決めすることになるだろう。
革新的なものは何でも前向きに評価したいところだが、この種のサービスが即座に、企業のITコストの削減に効くかどうかは分からない。より正確に言えば、効く企業もあれば、効かない企業もある、ということだろう。
そもそも米国では当初、ユーザー数が5000人以上の企業が対象だ、とMicrosoft Online Servicesは売り込まれてきた。単なるメール機能ではなく、より高度なサーバ機能を必要とするのは、既にExchangeやSharePointを使いこなしている規模の大きな企業だと考えたからだろう。
この考え方は、同社が掲げる「ソフトウェア+サービス」戦略の考え方とも合致している。オンラインで提供されるサービスと社内に構築されたサーバ製品は連携し、運用管理を一本化することもできるという。新たな拠点を急ぎ開設しなければならない場合や、パートナー企業も巻き込んで情報共有できるインフラをつくりたい場合などにはいい。
ただし、運用において最も面倒な作業のひとつに、アカウント管理があることを企業は忘れてはならない。アイティメディアも社員のメールやスケジューラーはオンラインサービスを活用しているが、4月1日の組織改編時にはさぞかしたいへんだったのではないかと思う。SaaS(サービスとしてのソフトウェア)やASPの利用に切り替えたからといって、こうした管理業務がなくなるわけではない。幾つかある「幻想」のひとつだ。
IBMが、LotusLiveの対象を「1000人から1万人」としていることも少し取り上げておこう。
5000人と1万人では少し数字が異なるので若干説明が必要だが、IBMは「ユーザー数が1万人以上の企業にはLotusLiveを薦めない」と話している。正確に言えば「大規模であれば、サーバを自社で構築するオンプレミス型の方が安くつく。既に大規模にNotes/Dominoを配備している企業は、最新版にバージョンアップして最適化を図ることでコストは削減できる」ということで薦めないのだ。マイクロソフトが当初「5000人以上の企業」としたことと対照的で面白い。
同じSaaSと言っても、個々の企業とベンダーによって異なる、ということがこの一事でもよく分かるだろう。わたしが指摘するまでもないが、単に1ユーザー当たりの月額で比較できるものではない。
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