クラウド市場、年平均25.2%の急成長 企業の現状認識は「不要不急」:IDC Japan調べ
クラウドの市場規模は年平均25.2%の成長率を見せ、2013年には1521億円の規模になる。一方で企業のクラウドに対する認識は「急を要しないプロジェクト」のようだ。
2009年における国内のクラウドコンピューティング市場の規模が、前年比20.8%増の596億円となることが、調査会社IDC Japanの発表で明らかになった。経済環境の悪化でIT市場が低迷する中、同市場は拡大を続け、2013年には1521億円(2008年度比3.1倍)に上ると予測する。
ユーザー企業にとって、ネットワーク経由でソフトウェアやインフラの機能を利用できるSaaS(サービスとしてのソフトウェア)やXaaSは、システムの刷新や構築の手法の1つになりつつある。IT予算の削減に伴い延期されるシステム構築のプロジェクトが増える中、これらの活用を検討する企業が増え始めている。
こうした傾向から、景気回復が見込まれる2010年以降にSaaSやXaaSの存在感が増し、クラウドコンピューティングの市場規模が拡大する。IDC Japanは2008年から2013年に同市場が年平均25.2%の成長率を見せ、2013年には1521億円の規模になると見る。
同社は3月にもクラウドコンピューティングの市場規模の予測を発表している。同調査では2013年度の市場規模を1436億円と分析していたが、今回の調査で約85億円分、上方修正した。
2009年におけるユーザー企業の動向
同市場の拡大に寄与しているのは、ベンダーが積極的に展開するクラウドコンピューティング関連のサービスだ。だが、これらを含むクラウドコンピューティングの動きを具体的に理解しているユーザー企業は少なく、ベンダーの期待と需要の動向は一致していないとIDC Japanは指摘する。
ユーザー企業はクラウドコンピューティングの利点の理解を進めているが、2009年においてはIT投資が抑制され、導入費用や専用の人員の確保ができないため、クラウドコンピューティング関連のプロジェクトは急を要しないものとして判断される傾向が出ているという。
IDC JapanでITサービスリサーチマネジャーを務める松本聡氏は「ベンダーがクラウドコンピューティング関連の事業を成功させるには、可用性や性能、機能、効果的な活用方法を明らかにする必要がある」と話している。ユーザー企業がIT投資に消極的な中、ベンダーは、クラウドコンピューティング関連のサービスを企業に分かりやすく訴求する必要がある。
同調査では、国内におけるSaaS/XaaS市場を、SaaS、PaaS(サービスとしてのプラットフォーム)、IaaS(サービスとしてのインフラストラクチャ)に分類。セグメントごとに状況や動向を分析し、2009年から2013年までの市場動向をまとめた。
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